5.石器を作ろう
俺は起きた瞬間から強烈な腹痛に襲われた。飲んでからまだあんまり時間が経っていないようにも感じるけど他に理由も思い至らないし十中八九昨日の川の水が当たったのだろう。
しかしここを今後も生活拠点として利用する以上洞窟内でぶちまけるのだけは避けなければならない。
俺は尻に力を入れて振動で波のように襲ってくる腹痛に耐えながら何とか這い出るように洞窟の外に出た。ちょっとした段差が今では命取りだ。少しの振動が腹の中で響き便意が増していくのを感じる。
できれば洞窟から離れたところでリリースしたかったがもう移動できる余裕はなさそうだ。ならこうするしかない。
俺は川に入ると腹に力を込めてリリースした。天然の水洗式トイレだ。下流の生物たちには申し訳ないが我慢して俺の便の混じった水を飲んでもらおう。
だが冷静に考えると俺も上流の生物の便を含んだ水を飲んだ可能性は十二分にあるわけだ。そう考えると川の水に途端に嫌悪感がわいてきた。
何も食ってないせいか便は、ほとんど水のようだった。尻を拭きたいが当然紙なんて持っていない。なら川の水で洗い流すしかないと思うのだが正直腹を壊す原因になった水を尻につけられるほど俺の神経は図太くない。
絶対細菌とかがウヨウヨいる。だがこのまま糞をつけておくのは精神的にも大変よろしくない。
俺は川原に上がると少し大きさのある葉っぱを2、3枚摘むとそれで尻を拭いた。
強烈な便意から解放された俺は拠点近くの倒木の上に腰を下ろした。シロアリとかが付いてたらたまらないから速く衣服が欲しい。
嫌な1日のスタートになったがダラダラしてたら時間が過ぎてく一方だし行動するしかない。
今日の目標は食料の確保と石器作りだ。
というか他にやれそうなことがない。食料や飲料水の確保ができていない状態では周辺の探索よりも必要物資の調達に力を入れざるを得ない。
飲料水に関しては火を手に入れなければ煮沸できず安全な飲水は手に入らないが生憎火を森の中で自然に手に入れることは不可能だろう。どうにかして起こすしかない。
水は最悪木の実などの水分で代用できるし火の起こし方なんて錐揉み式しかわからないしとてもじゃないがつけられないから後回しだ。
とりあえず衣食住を揃えることを目標に頑張ろう。
思考もまとまったところで行動を始めよう。
石器があったほうが食料の確保に役立つかもしれないから先に石器を作る。
もちろん作ったことはないが作り方はなんとなく想像できる。今日作るのは原始的なハンドアックスだ。
斧の先を手で握って使うような感じで切る掘る削るなど凡庸性が高いことが特徴だ。
まず川に入って手頃な石をいくつか持ってくる。今回作るのは研磨して刃を作ったりしてたら一生終わる気がしないので叩いて刃をつくる打製石器だ。
それから暫くして作業を始めてからかれこれ1時間が経ったが全く上手くいかない。
斧の刃を作るイメージで石を叩いているのだが力加減をミスるとすぐに変なふうに割れてしまう。
俺は最終手段に出ることにした。
俺は川に入り少し大きめの石を持ち上げた。
足に落とさないように注意しながら洞窟の前まで運んだ。
そして手頃な石を4.5個ほど拾ってきて昨日磨いた投石術で大きめの石に投げつけた。
本来は高いところから石を落として行うのだがこの周辺に適してそうな場所がなかった。
俺は跳ね返ってくる石に注意して持ってきた石を全て投げると大き目の石に当たって砕けた石の破片を回収した。
その中からいい感じに刃のようになっている石を探した。
そして側面が削り取られ片刃だけ尖った感じの石があったのでハンドアックスの完成である。少し形が歪で握りにくいが使えないことはないだろう。
簡単だね。
変に凝ったりせずに最初からこうやればよかったな……。
※本編の内容に関係ないので飛ばしてもらって構いません。
男の子なら皆一度は石器を作ってみたいと思ったことがあるんじゃないですか?私も小学生の頃近くの山から拾ってきた石等で石器を作ろうとしてみたことが何度もあります。簡単そうに見えてとても難しいんですよね。この石に投げつけて破片からいい感じのを探すなんてきっと誰しもがやったことがあると思います。もう一度幼い頃に戻れるのならもっと凝った石器をつくってみたいですね。やろうと思えば今でも挑戦できると思いますが休日に石をカンカンやるのはちょっとといった感じですね。長々と失礼しました。