4.木の実
俺は食い物を求めて彷徨っていた。
かれこれ1時間くらい……。
いやマジで見つからん!
幸いな事に俺が目覚めた洞窟の近くに川があったから水には困らずに済みそうだ。とりあえず水は手に入ったので今は食料優先だ。
衣食住のなかの住ももう確保してある。
俺が目覚めた洞窟だ。俺はあの洞窟の最奥で目覚めた。つまり野生動物が住み着いているという心配もないのだ。安全とは言えないかもしれないが屋根があるところで寝られるのはありがたい。
裸足に小石が食い込んで痛い!草負けした足が痒い!虫に刺されてかけない背中がうざい!
裸一貫で森の中は結構なハードモードだ。
俺はため息をつきながら近くの倒木に腰を下ろし空を見上げた。
『グーギュルルゴゴゴゴ』
俺の腹の虫が鳴き出した。
目が覚めてから何も食べてない。
腹減ったな〜。
ん?視界の端に水色のリンゴのようなものが映った気がする。あれは木の実じゃないか?
ヒャッホイ!
俺はその木に一目散に駆け出しその樹の実を取ろうと……高い……。というか俺が小さい。
近くに落ちてた木の枝を拾って木の実に手を伸ばすが届きそうもない。
ならばと木に登ろうとするが爪がめくれた指が痛すぎてとてもじゃないが登れない。
クッ!目の前にあるのに手が届かない。
コレが焦らしプレイか。
俺は足元の石を拾って大きく振りかぶり投げた。
石は全く見当外れな方向に飛んで行った。
それから何度も石を投げてみるが本当にで当たらない。小一時間程投げ続けてみたがほとんど当たらなかった。
よしんば当たったとしても少し枝を揺らすだけで木の実が落ちて来ることはなかった。
木の枝が風を受けて揺らいでいる。
だんだんイライラしてきた。
今の俺には木が俺を煽ってるように思えてしまう。
石がだめならばと木を揺らそうと蹴ったり掴んで前後に揺らそうとしてみるが俺の力ではびくともしない。
クソッ!!
俺は何百回と繰り返し投げ続けたことで手に馴染んできた小さな石を握ると腕を大きく振りかぶり木の実に向かって投げた。
『ピロン!』
スマホの通知のような音が脳内で鳴り響いた。
"条件を達成しました!"
"スキル「投擲1」が与えられます! "
『スキル!?そんなものが存在するのか?
まるでゲームのような世界だ。』
俺は試しに石を拾うと木の実に向って投げつけてみた。
心なしかさっきより投げやすくなった気がする。
小一時間程石を投げて俺の投石技術も結構上達したからスキルの効果があまり実感できない。
まぁ恐らく何かしらの効果は得られてるだろう。
それよりこの木に挑み続けてもう1時間経過したことが問題だ。
もういい加減木の実は諦めよう……。もっと早く諦めがつかなかったものなのか過去の自分に問いかけたくなる。
俺が目覚めたばかりの頃はまだ高かった太陽?のような恒星がかなり傾いてきている。
このままだとあと数時間も経たないうちに日が暮くれてしまう。
この木の実を見つけるまでひたすらまっすぐ進んできたから帰り道に迷うこともなさそうだ。
足元がまだ明るいうちにそろそろ洞窟に戻るか。
今日が暮れたら光源も何も無い状態で森を彷徨うことになる。明日の夜明けまで俺が生きている自信は、ない。
俺はなんとか洞窟の入り口の前まで戻ってくると川原にあった倒木に腰を下ろした。
喉がカラカラだ。
この川の水って飲めるのだろうか?
煮沸とか濾過とかしたいが生憎そんなことができそうな物を持ち合わせていない。
もうこれを飲むしかない状況なのだが生水を飲んで腹でも壊したらそれこそゲームオーバーだ。
だが俺はここから3日で日を起こせる自信がない結局今飲もうが結果は変わらないだろう。
むしろまだ探索に出れる体力がある内に飲んでおいたほうが良さそうだ。
賭けに出るか?
ええい!男なら覚悟を決めろ!
俺は爪が剥がれた指を川に付けたくなかったため膝を河原に付き水面に直接口をつけて勢いよく水を飲んだ。
少し泥臭いが問題なく飲めた。喉越しもそこまで悪くはない。
「ゴクゴクゴクブハァ。」
デリカシーのない嚥下音が当たりに響いた。
とりあえず飲水の確保できた。
次に必要なのは食料だが、今日は、もう日が暮れそうだし明日また考えるとしよう。
俺はそう切り替えると洞窟の中に入っていった。
光る謎の植物が洞窟内を少し照らしてくれているから完全な暗闇というわけでもなく案外居心地は悪くない。
洞窟内で眠れそうな場所を探してみるが岩肌の地面がゴツゴツしていてとてもじゃないけど直で眠れそうにない。
俺はまだ明るいうちに洞窟の外に出て土を持って洞窟内に戻りそれを何往復か繰り返して簡易的なベッドを作った。
ベッドといっても土を薄く広げただけの物だが、岩肌に直接寝るよりはまだマシだろうと納得し、俺は土のベッドのうえに仰向けに寝転がった。
こうしてやっと俺のゴブリンとしての1日目は終わった。
文章力が死んでるのでおそらく何度も修正が入ります。