4P 戦いの果てに
楽しく書けました~。
戦いはクライマックスを迎えようとしていた。
「店長、山本さんは・・・」
舞は気になる事の成り行きを尋ねる。
「ヤツの名は言うな」
岸は首を振る。
「それじゃあ・・・」
「明日から、従業員皆のシフトを増やす」
「あっちょんぶりけっ!」
舞と島は件のポーズをとる。
島は溜息をつき、
「第4戦はスロットの金字塔っ。東斗の剣バトルボーナス連チャン対決っ!東斗BARが揃った高継続状態からのスタートなります。では、はじめっ!」
「こい」
岸はクイックイッと右手を動かし、モロを煽る。
「ぶははははっ。俺様は無敵だ」
モロは完全に世界に浸っている。
岸は慣れた手つきで、バトルボーナスを消化していった。
「よっしゃ、7連確定「金を取り戻せ!」が流れたぞ」
順調に継続させる岸を見て、モロは焦燥する。
そして・・・。
ふっ!
必殺の吹き矢を放つ。
「ふん」
岸はその矢を右の人差し指と中指で止めた。
「なにぃ!」
モロは驚愕する。
「二指真空ハッ!」
岸は、返す刀で矢を放り返し、モロの額に的中させる。
「ぐぎゃああああっ!」
のたうち回るモロに、
「勝負あったな」
と、岸の勝利宣言。
ジグマ加藤はぼそりと言う。
「こういう時ってフラグが立つんだよな」
舞も大いに頷いた。
「そうそう」
「馬鹿めっ!」
モロは叫ぶ。
「なん・・・だと」
岸が気づけば、右腕に3本の矢が刺さっていた。
「い・・・つの・・・まに」
店長は筐体に頭をぶつけ気を失った。
モロは意識朦朧ながら、ゲームを消化し続ける。
「へ・・・へっ・・・へ」
そして偶然にも連チャンが互いに8回のところで、エルフの副官もついにダウンしてしまった。
「両者引き分けっ!」
そしてついに店の存続をかけバトルは大将戦へと突入した。
島は最後の戦いを告げる。
「パチ屋の女神、風霧舞選手。そしてエルフ族の姫エメロード選手・・・対決は・・・」
エメロードは岸の言葉も終わらぬうちに、すらりと腰のレイピアを抜いた。
「まどろっこしい」
舞は素っ頓狂な声をあげる。
「へ?」
エルフの姫は不敵に笑う。
「真剣勝負といこうじゃないか」
舞は、両手をぶるぶるさせて言った。
「無理無理無理」
「伝説の黒髪の女神ならば、いくつでも奇跡を起せようぞ」
じりじりっとエメロードは舞へにじり寄る。
「だから、私は女神じゃありませんって」
舞は後退りをして、カウンター裏へと隠れる。
「逃げるのか」
姫は詰め寄る。
「だから・・・戦えません」
舞はカウンターから頭をのぞかし、憤って伝える。
「ならば・・・ここで奇跡を見せてみよ」
エメロードは一旦、レイピアを収め、腕を組み難題を突きつける。
「・・・奇跡って」
そう呟く舞に、
「・・・いつもの・・・いつもの通りに・・・やるんだ」
岸は目も虚ろにふらふらで立ち上がりながら言った。
(いつもの通りに・・・はっ!)
その言葉に、舞は立ち上がり、機械を動かし景品をだす。
「はい」
それをエメロードへ手渡す。
「これは・・・黄金」
驚く姫。
「景品はうっすい金のプレートです」
舞は言った。
「なんと、女神は錬金術師じゃったのか・・・おそるべし・・・ふう」
エルフィンの目が泳ぎ、嘆息した。
「それから、これっ」
舞は薬箱から絆創膏を取り出し、エメロードに渡した。
「なんだ?」
姫は訝しがる。
「エメロードさん、さっき剣を抜いた時、右手怪我しているでしょ。それ貼って」
舞は微笑んだ。
「な・・・んという・・・労り」
モロは朦朧たる意識の中で呟く。
「なんとっ!医療の心得・・・白き魔法までっ!」
エルフィンは涙を流す。
「それとぉ、双子ちゃんにお菓子をあげようか」
舞は景品棚からカントリィダディのクッキーをニカとニーナに渡す。
「わーい」
喜ぶ双子。
「な・・・なんという・・・慈悲の心っ!まさに女神っ!」
エルフィンはその場に崩れ落ち呆然とした。
エメロードはふっと肩の力を抜いて笑った。
「私の負けだ。黒き髪の女神、舞よ」
舞も微笑み返す。
「エメロードさん」
2人はがっちりと握手を交わした。
その刹那。
パチ屋のガラス戸が何者かによって割られる。
「キキキキキキーッ!!」
パチ屋の周りから雄叫びが聞こえる。
「なんだ。なんだ。一件落着じゃないのかよ」
驚く岸。
「この匂い。嫌な奇声・・・」
モロは呟く。
「ああ、ゴブリンだ」
ニカとニーナは同時に言った。
「ふむ。では、伝説の英雄たちと共に」
エルフィンは高らかに言う。
「いこう!新たな戦いへ!」
エメロードはレイピアを再び抜いた。
「はいっ!」
舞は頷く。
異世界パチ屋の戦いはここからだっ!
一旦の完結まで読んでいただき、ありがとうございました(笑)。
ゴブリン編・・・あるかも~(笑)。