3P 激戦、熱戦
白熱する戦い・・・。
続く3戦目はエルフィンVSマイク山本の接客対決となる。
「さあ、続きまして第三戦は勝者エルフィン選手対我が店の遅咲きのホープマイク山本との30分接客勝負いざ、開始っ!」
島は開戦を告げる。
山本は早速、進み出ると、島からマイクを受け取り、ホールのシマ全体を見渡し、大当たりしている台を見つける。
「ラッキースタート、ラッキースタート、真におめでとうございます。ギャロ72番台のお客様、魔界ラッシュ突入真におめでとうございます。ジャンジャンバリバリ~ジャンジャンバリバリ~おとりくでせえめせ」
「ちょっと、店長、うちの常連さん、こんな時でもお店で遊んでいるんですか?この一大事なのに止めないの」
舞は眉をひそめ呟いた。
「天災があろうが、なんであろうが、打ってしまう、そんなの関係ねぇなのが、真のパチンカー・・・いや、パチンカスなのだ。まさにカモ、ありがとうごぜいます」
岸は最後をアナウンス口調にして答えた。
「もう」
舞は呆れる。
「さあ、72番台のお客様、連チャン開始だ!」
山本はワイヤレスのマイクを持ったまま、駆けだすと72番台の常連の台へ行き、満杯に玉が詰まった箱をおろし、足元へ置くと、空の箱を置く。
「さぁ、ジャンバリ、ジャンバリおとりくでせぇめせ!」
彼はマイク持つ小指をたて、鼻にかけてマイクパフォーマンスをする。
「やっぱ山本さんのマイク癖あるわ~」
「癖がすごい」
舞の言葉に、岸と島は同時に頷いた。
「あっ!店長、今って煽りマイクって禁止じゃ」
気がついた舞が尋ねる。
「ああ」と、島。
「いいんだよ」と、岸。
「なんで?」と、舞。
「ここは・・・?」島と岸が尋ねる。
「・・・異世界だ」
舞ははっと驚く。
「じゃあ、あれも」
舞の言葉に副店と店長は頷く。
「GyOGyOランプが光れば心もオドル~333番台のお客様、ペカっお見事でごぜえます」
山本は言うやいなや、333番台の常連に近づき目押しが出来ない、おばさんに変わり、7を揃える。
「今じゃ、目押しは禁止事項だがな」と岸。
「ラッキースタート、ラッキースタート真におめでとうごぜぇます。333番台のお客様、ビッグボーナスげぇとぉっ!」
その後も山本は、ラッシュ終了した72番台の客の出玉を台車にのせて、計数を行ったり、玉詰まりやホッパーエラーを解消したりと、八面六臂の動きで接客に勤めた。
一方、エルフィンは全く動こうとはしなかった。
「そこまで!」
岸は戦いの終了を宣言する。
「勝者!山本っ」
勝ち名乗りをあげられて、山本の表情は憮然としている。
「ご老人」
彼は言った。
「ん?」
エルフィンはちらりと、憤る男を見て視線を下げた。
「何故、戦いを放棄した」
その言葉にエルフィンは破顔する。
「ふおっ、ふおっ、ふおっ、ワシがいかにその接客とやらを、お主の土俵であっては決して勝てぬ。それだけの匠の技を持ち、極めしお主なら、いかにこの戦いが年寄によって無謀か分かるであろう」
「・・・・・・」
「ふおっ、ふおっ、所詮は玉遊びの一種じゃ。勝負は時の運ってな。山本殿、ワシの負けじゃよ。同意したとはいえ、何も知らぬ年寄を戦いに巻き込み、挙句の果てにこの所業・・・なんともいえぬが、負けじゃ、負け・・・いやはや、年をとるとな、口うるさくなるでな、許せ。彼の見事な勝利じゃ・・・降参じゃ」
エルフィンは静かに頭を垂れた。
「ご老人、それをご承知のうえで戦いに挑まれたと思いますが」
「うむ」
岸の言葉にエルフィンは頷いた。
「店長!」
山本は静かに手をあげる。
「どうした」
「この戦いは、引き分けにしましょう」
「なんだと・・・」
「実にスッキリしません・・・こんな」
「こんな・・・玉虫色だといいたいのか」
「・・・・・・」
「お前はどこに勤めている」
「パチ屋です」
「パチ屋の店員がキングオブ玉虫色の職場で働いといて、青臭いことを言うな」
「ならば」
「・・・なんだ」
「これまでです」
山本は上着のベスト裏のポケットから辞表を取りだす。
「私はこれにて試合を棄権します。しょーもないブラックなとこでやってられっか」
岸の足元に辞表を叩きつけた。
「やまも~と~!」
店長の絶叫がホールの喧騒にかき消される。
岸と山本が一旦、事務所へと引きあげていったが、戦いはなお続く。
3戦目はスロプロガリけんVS鬼の風見鶏モロのジャギラー対決である。
「えーこちら側の多少のハプニングがありましたが、勝負を続行します。スロット定番機種、ジャギラー早当て勝負、ビッグもレグも関係なしのGyOGyOランプを先に光らせた者が勝ち!はじめっ!」
ガリけんは、データランプを眺め吟味し、レグが多くかつ当たりが一番ついている台へと座った。
それから無心にレバーを叩きボタン押しはじめた。
一方、モロはスロプロの隣に座り、機をうかがった。
それは刹那、モロが筒を取り出したかと思うと、吹き矢を放った。
首筋に矢が刺さったガリけんは気絶し、モロは見よう見まねで、レバーとボタンを叩き、1時間後になんとかランプを光らせた。
「審議だ」
岸は両手をあげて、それは無い無いとばかりに腕を振った。
「エルフの勝利だ。エイエイオーっ!」
エメロードはフライング勝鬨をあげる。
「凶器を使ったでしょ」
舞はモロが後ろ手に持った、吹き矢の筒を指さす。
「安心しろ。死にはしない」
モロは平然と言う。
「そういう問題じゃなくて」
「勝負は勝てばいいんだよ。勝てばっ!俺より優れた人間なぞ、存在せんのだーっ!」
「まさにジ〇ギ」
呆れる島と舞の肩を叩き、岸店長が戻ってきた。
「いいだろう。エルフの副長よ天に帰る時が来たのだ」
彼は指を天に向ける。
「シャッハー!」
モロは舌なめずりをした。
戦いは何処へいこうとしている?(笑)