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1P 異世界に来ちゃいました

 パチ×異世界

 

 20XX年、或るパチ屋がISEKAIへ。

 しなびた古き良き時代の昭和を彷彿とさせる、パチンコ屋から物語ははじまる。

 働く人々には生気が無く、活気もない。

 入り浸るパチンカス・・・もといパチンカー達は毎日毎日、怠惰に、訪れてなけなしのお金を飲まれて、たまに勝つの繰り返している。

もとより還元という言葉を知らない、この店にお金と精気を吸いとられているだ。

 ジャンジャンバリバリと繰り返すいつもの日常。

 皆も今日もそんな一日が続くと思っていた。


 ISEKAIの声が聴こえるか・・・。

 カウンター業務を適度にこなす風霧舞は、その声が聴こえた・・・ような気がした。

(なんだろう?空耳・・・あわー)

 刹那。

 ドーンという爆音が響き、ぐらぐらとパチ屋が揺れる。

 かと思うと、舞の目の前が真っ暗になった。


 ISEKAIが・・・。

 現実世界では、ひとつの摩訶不思議なニュースが伝えられた。

 ある地方小さなパチンコ屋が店舗ごと消えた・・・と。

 もともと、あったその場所には大きなクレーターができていた。

 まことしやかに囁かれる隕石落下はたまた神隠しなどの都市伝説。


 舞の父、鱗蔵は再び娘に会えることを信じ、有志をつどい巨大な穴への調査をはじめる。

 これはまた別の話である。


 ISEKAI ISEKAI ISEKAI。

 君はISEKAIの声が聴こえるか。


 一方・・・パチ屋は、まさかのISEKAIへと転移していた。

 ここからはじまる異世界パチンコ冒険浪漫。


 Coming soon・・・ナウ・ローディング・・・。


・・・・・・。

・・・・・・。

・・・・・・。


 風霧舞が働くパチ屋が、ある日突如、天変地異により異世界転移されたよ。


 そこは深遠たる森の中にパチ屋が立っていた。

 信じられない現実を目の当りにし、従業員も客も信じられないことに戸惑いと驚きを覚えた。

 が、そこは、パチンカスと呼ばれる彼等、何故か電気も通っていて遊技台も動いていることもあって、知らんぷりをしながら、パチンコ、スロットに興じていた。

 どんなに負けていても翌日にはパチ屋へと向かう、パチンコ勇者たちは、見てみないフリは得意中の得意なのだ。


「たくましかね~」

 どうしたものかと戸惑い、カウンターで頬杖をつく舞は思わず呟いた。

 

 爆音轟くホールの中、普段は駐車場の監視などをしている警備員のヤマさんが駆け込んでくる。

「周りがっ!辺りが燃えているっ!」

「なんだって!」

 副店長の島が飛びたすと、バイトの面々も続く。

 扉を開け、外に出ると、一面の森が炎に包まれていた。

「あれっ!」

 舞が夜空を指さす。火矢が弧を描きパチ屋のガラス戸玄関を突き刺す。

「誰がこんこんなことを!警察呼ぶぞ」

「副店、警察はいません」

 舞は冷静に言った。

「あ、そうか・・・とにかく責任者でてこーいっ!」

 島はマイクアナウンスで培った大音量で叫んだ。


 夜なのに炎で煌々と明るい森の中から出できたのは、スラリとした長身に、やたらと耳が長い、北欧の人を思い浮かべるような、白い肌で青い瞳をした女性だった。

「異人よ。ここは、我々エルフの土地だ。即刻でていってもらおう!」

 エルフの女性は堂々と言った。

「私達は突然、ここに来たのです。どうしていいかも分からないです」

 舞は切実な思いを伝えた。

「姫、おかしな連中ですぜ。早く焼いちまいましょう」

 男性が茂みの中から出て来て女性に言った。

「待て。みなの者、打ち方やめぃ!」

「はっ!」

 森の中から大勢の声がする。

「そなた、突然降臨したといったな」

 エルフの姫は舞に近づく。

「は、はい」

「・・・もしや、伝説の」

「なんですか?それ」

「エルフの古い伝承にある。その者達、七色に光輝く宮殿を天より従え、忽然と現れる。銀色の銃弾に魂を捧げた戦士、銀貨を巧みに操る錬金術師、声を自在操り心惑わす魔導士、からくり機工を従える白き魔術師、そして黒き髪の女神、この者達いでし時、戦は終焉となり、エルフの民は、この世を謳歌する時代の幕開けとなるであろう・・・」

「あわわわ・・・まさかっ!」エルフ男性。

「ああ、GODたまっ!」エルフ姫。

 姫をはじめエルフの人々は、現代のパチンカスたちに平伏した。

 

「しかし・・・だ」

 エルフの男は言う

「どうした?英雄たちの御前であるぞ。平伏せよ」

 姫は男を諫める。

「エメロード姫っ。信用しちゃいけませんぜ!突然、けたたましい叫び声をあげる家を持って来た連中だ。きっと魔物に違いない」

「・・・魔物」

 姫はその言葉に眉をひそめた。


「違います」

 舞は否定する。

「黒き女神よ」

 姫は振り返る。

「・・・女神ではありませんけど」

 おずおずと彼女は答えた。

「ほらな」

 と、男。

「では、貴公らは一体何者なのだ。返答次第では只ではすまんぞ」

 エメロードは腰の懐剣を抜いて睨んだ。

「まあまあ」

 柔和な笑みで割って入ったのが、

「岸店長。いられたのですか」

「ああ。久しぶりにお店に来たら、大変なことになっていた」

「いつもは、別店舗調査という名でパチ三昧ですもんね」

「舞ちゃん言うようになったね」

 2人は笑いあった。

「やっちまいましょう」

 と、エルフの男が苛立つ。

「まて」

 エメロードは逸る男を制する。

「どうでしょう」

 十分な貫禄を見せ岸は振り返った。

「パチンコ勝負では」

 と。

「ぱちんこ・・・だとう」

 エルフの男は呟く。

「この店舗は娯楽場・・・中には心躍る機種があります。どうですか、やってみませんか」

 岸は言葉巧みに誘う。

「訳が分からん。何故、貴公らの土俵にあがり不利な戦いを投じなければならぬ」

「戦い?ノンノン、これはゲーム・・・ギャンブル、勿論、知識や技術を要する所はありますが、概ね運によるところが大半を占めます」

「・・・運だと」

「はい。運です。もし我々が英雄だと言うならば、その運すら兼ね備えているはず、如何です?試してみては」

「ふむ」

 女王は思案する。

「ひめ」

「どうした?モロ」

「なんか、すげぇ、中から心たぎる音がするんだ。こいつら見た所たいしたことねぇ。もし、奴等が本物だったら、それで良し。違ったら、このぱちやとかいう城を乗っ取りましょう。こちら側にはなんのリスクもねぇ。やりましょうぜ!」

「ふむ」

「やりますか」

 岸は促す。

「その決闘受けた」

 エメロードは頷いた。

「ありがとうございます」

「だが、決闘ルールはこちらで決めさせてもらう。5対5の戦いで残った者が、勝利チームだ」

「かしこまりました。バジリスクタ〇ム式ですな。いざっ!」

「ああ、いざっ!勝負」


 こうして、前代未聞の仁義なき異世界パチ対決がはじまったのだった。



 まさかの・・・。

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