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都市伝説「異世界召喚ダイエット」

作者: 中々凡°

初投稿です。

ネタ被りあったらごめんなさい。

朝陽 佐奈(あさひ さな)は、その日もいつもと変わり映えのない一日を終え帰宅した。


もうすぐ日付の変わる時刻。終電一本前の便で帰って来れただけまだマシかもしれない。


「マジでうちの会社クソブラック。労基仕事しろ」


入社三年目。年々多くなる責任と仕事量、なかなか上がらぬ給与額。口汚く毒づきたくもなるだろう。


「はーっ、またこの時間帯から夜ご飯とか・・・絶対太るヤツじゃん」


「・・・しかも作る気力なくてコンビニ飯」ずしりと重いエコバッグに、深々と溜息。

いつも思ってはいるのだ。自炊した方がいいと。なにかと不摂生になりがちな独り暮らしの生活。経済的にも健康的にも自炊するべきであるとは。

しかし、残業終わりでクタクタな身体での駅から自宅まで徒歩10分の帰り道。少し遠回りしないと行けない24時間スーパーと、住んでるマンションの2軒手前にあるコンビニでは、どちらを選ぶかなんて火を見るより明らかというものだ。


コンビニ飯が悪いというわけではない。昨今の企業努力の賜物、美味しいうえにヘルシーな食材は多くなってきたし、低糖質や高たんぱくを謳った商品もあるので、そういったものを選べいいのだが。


テーブルにエコバッグから取り出されていく物というと、レンチンするだけの明太子パスタにハムとチーズのブリトー、カップアイス、缶ビールと甘ったるい缶酎ハイが一本ずつ。そして棒に刺さったからあげが3つ。


「ホットスナックレジにあんの、ほんっとトラップだよね・・・」


最後に取り出したミニサラダが佐奈にとってなけなしの理性であった。

デスクワークで酷使しすぎた頭では夜遅くに食べても太りにくい食材はなにか、などという高等な思考が思い浮かばず、結果欲望に忠実なものばかりで溢れるコンビニ飯となってしまいがちだ。


「これだから深夜のコンビニ飯ダメなのよ」


骨身に染みているというのに止められない。

疲れているのだから何も食べずに寝て翌朝早めに起きて朝食を多く摂ればいい。理屈としては分かっているが、そんな高尚なことが出来る人間であるならば、端からこんな嘆きを抱えていない。


「明日体重計乗るの怖いなぁ」


一番痩せていた大学時代から増加した体重は約10キロ。小学校から大学卒業まで続けたバレーボールを社会人生活の始まりと共に辞めたのも大きな原因だろう。


「痩せたい・・・でもこんな生活してたら無理だよー」


グビリと缶ビールを煽りつつ、からあげを一口。

朝から晩までキツキツな労働を強いる会社が憎い。心身ともに余裕なく、休日にジムで運動でもなんて・・・気力も湧かない。家事はおざなり。掃除すら億劫な自分が情けない。


「変わりたい・・・あの頃の一番細いスキニージーンズもう一回履きたい・・・」


「でも」なんてうじうじしつつも食事を進め、気づけば食後のデザートまでペロリ。


「はいギルティ。てか、この飽食の世界が悪いんだよね。なんの苦労もなく安くて美味しいものがいっぱいあるから痩せらんないのよ」


遂には社会に責任転嫁する始末。そんな佐奈が悪かったとでもいうように、立ち上がったリビングの床が突如真っ白に光りだした。


「へっ!?なになになに??」


混乱する佐奈が思わずギュウッと目を強く閉じて、次に開けたのは地面を震わせるほどの歓声に包まれた驚きからだった。


「えっ」


視界に映る沢山の人。見た目は誰もがキラキラとまぶしい外国人のようで、身にまとう衣服は某テーマパークのパレードでも見かけそうなモノばかりだった。


「ええっ」


だだっ広い空間に、細かな装飾が施された太い円柱が四方を囲み、ストッキング越しの足元にはなんだかアニメとかに出てきそうな巨大で複雑な魔方陣が描かれている。


「えええっ」



「―成功いたしました!聖女様御降臨!!召喚の儀は見事成功いたしましたわ!!」

「我らが女神様に誓願が聞き届けられたのだ!」

「やりましたね殿下!これでこの国は救われる!」


真っ白なローブ姿に顔ぐらい大きな宝石の付いた杖を持つ、いかにも魔法使いな金髪美女が高らかに宣言したのを皮切りに、重そうな甲冑にマントを靡かせたロマンスグレーの渋オジが続き、分厚い辞書みたいな本を片手に抱えたモノクルつけた黒髪イケメンが中央のひと際キラキラしいプラチナブロンドの青年に言い募っている。


「えええっ!?」

(こ、この状況は・・・もしやっ)


幼少期から人並みに映画やアニメ、漫画やラノベを嗜んできた佐奈にとってみれば、なんというか、まったくもって既視感を得ずにはいられない信じ難い現状に。


「ーふむ。伝承にある通り、いささかふくよかな・・・」

「あ?」


「し、失礼を」


神妙な顔した殿下と呼ばれた青年からのセリフに、若干イラっとせずにはいられなかったが。







「聖女様・・・否、サナ・アサヒ嬢。突然の事に驚かれるのも無理はありません。まずは何の許しもなく、身勝手にもサナ嬢をこの世界に招いてしまった事、王家を代表して心から深くお詫び申し上げます。しかし、我らの国は勿論のこと、この大陸全土が、今恐ろしい危機に瀕しているのです。生きとし生けるもの全ての生命を脅かす黒い瘴気が各地を覆い、獰猛な魔物が人里にまで頻繁に出没するようになりました。魔物の討伐は我らこの世界の人間でも命懸けで行えば何とかなりますが、黒い瘴気は異なる世界より来たる者にしか消し去る事が叶いません。それがサナ嬢、そう貴女なのです」

「はあ・・・」


(なんてテンプレな異世界召喚・・・)


そうは思いつつも、これが現実として自分の身に起こっている事に、未だに頭が追いつかない心境のサナである。

初対面時の発言に引っかかったとはいえ、殿下曰くいささかふくよかな見た目であっても粗雑な扱いなど1つとしてされず、イーグルと名乗ったこの国の第二王子らしい眩しい美貌の青年にも、驚くほど丁寧に接してもらっている。


しかしいつまでも思考停止していては始まらない。サナは何よりも気になることを恐る恐る尋ねた。


「あの・・・私、元の世界に帰れるんですか?」


こういった場合、よくありがちなのが喚ぶだけ喚んで元の世界には帰れません、な理不尽パターン。もしそれならどうしよう・・・と不安でいると、


「はい。無事黒い瘴気を浄化していただいた暁には、我が国が責任を持ってサナ嬢を元の世界にお返しいたします。時間軸の調整も可能ですので、サナ嬢がお望みであれば、こちらにお越しいただいた日時にお帰りいただくことも出来ます」

「え、え。そんなことまで出来るんですか?」

「ええ。我らが召喚した時と同じく女神様に誓願し、必ずや」


強く言い切ったイーグル王子のキリリとした眼差しに、そんな場合でもなかろうにドキっと胸が高鳴る。


(だって仕方ないよね、こんなワールドクラスのイケメン間近で見たことないし。声もイケボだし。今のところめちゃくちゃ丁寧で優しいし・・・これに胸キュンしない女いないでしょ)


内心誰にともなく言い訳を連ねながらも、まだまだ聞いておかなければならないことは山積みだ。


「そ、その黒い瘴気?を消し去るっていうのは、具体的に何するんですか?」

「はい。サナ嬢には少し落ち着かれましたら、浄化の術を学んでいただきたいと思います。先の召喚の儀を執り行ったシエラ・・・我が妹であり、王宮魔道士長によれば、サナ嬢の聖女としての御力は充分備わっているとのこと。祈りの文言と心得を学ばれればすぐにでも浄化を行えるようになるとのことです」

「浄化・・・って痛かったりします?」

「決して痛みを伴う行為ではございません。・・・ただ、過去の伝承によれば、日を空けずに何度も浄化を行うと、眩暈や強い疲労を感じてしまわれる聖女様もかつてはいた、とか。ですので、あまり頻発して浄化をしていただくことのないよう取り計います。それにより、サナ嬢に元の世界にお戻りいただくのにしばし時をいただく事になりますが・・・」

「あ、それならまあ・・・。あとはあのー衣食住、って言いますか、滞在中のそういうのって」

「勿論。我らが心を込めてご用意いたしますとも。この世界にいる間は、サナ嬢に決して不自由な思いはさせません」

「あ、ありがとうございます。そういう事なら、はい。聖女?として頑張りたいと思います・・・」

「ああ!誠にありがとうございます!」


こうしてサナの異世界聖女生活は幕を開けた。


とは言いえ、突然連れて来られた見知らぬ異世界。色々落ち着いて冷静になってみると、サナは言い知れぬ不安と恐怖を抱え、与えられた客室の豪華なベッドの上、シーツを頭まで被って泣きそうになりながら震えて過ごした。

しかし身の回りのお世話をしてくれる侍女の女性達はもちろん、同性の方が安心だろうと度々様子伺いに訪れてくれる王妃様やシエラの優しい心遣いに、何とか平静を取り戻せたのが3日後。


「ご心配おかけしました。浄化の術?覚えるの、今日からよろしくお願いします」

「頭をお上げくださいサナ嬢。貴女がお元気になられたことが何より嬉しい。こちらこそ、これからよろしくお願いいたします」


3日ぶりに見たイーグル殿下は相変わらず輝かんばかりにイケメンだった。サナは改めて頑張ろう、と気合を入れた。


この国の第一王女であり、王宮魔道士長なる魔法のエキスパートであるシエラ直々に浄化の術を学ぶ事になった。

この王女様、兄のイーグル殿下に負けず劣らずのど迫力美女である。


(スーパーモデルも裸足で逃げ出しそうな美人・・・王妃様も超絶綺麗だったし、切実に爪の垢が欲しい)


しかも性格も頗る良い。シエラがもしSNSしていたら即フォローしただろうに・・・とサナは詮無い事を思いながら、粛々と聖女修行に勤しむ日々を送った。


朝、日の出とともに起床し、侍女の女性達によって支度が整いー最初は遠慮したが、自分達の仕事が無くなると請われてからは恐縮しつつ身を任せているー、何度か休憩時間を挟みつつ、聖女としての心得やこの国の現状、浄化の際に詠まなければならない祈りの言葉、その意味合いや言い回しを学ぶ。


「素晴らしいですわ、サナ様。この短期間でよくぞここまで覚えましたね」


絶世の美女に手ずから指導を受け、都度褒められるのは同じ女であろうとご褒美でしかない。


「聖女様。貴女様がいらっしゃる場所、どこであろうと我らが身命を賭してお守りいたします」


召喚の時にいたロマンスグレーの渋オジこと、騎士団長のマルク氏に騎士の礼なるものをされて言われる度、こちらこそありがとうございます!と土下座で返したいのを必死で抑え込むサナは、いつ何時も心を騒がす事勿れ、という最近覚えたばかりの聖女の教えを胸に今日もぎこちない愛想笑いを讃え「いえ」と応えるのが精一杯であった。


「かつての伝承通り、遠い世界を渡っていらっしゃる方は本当に勤勉で見識も高い。聖女様、今回の講義内容まで把握できていれば、今後の黒い瘴気を浄化なさるため、各地に赴かれても案ずることはないでしょう」


「よく頑張りましたね」乏しい表情ながら穏やかに労ってくれたのは、モノクルつけた黒髪イケメンこと、書記官長のクラーク氏。彼の中で随分出来の良い聖女と評価されているようだが、サナは否と声を大にしたい。

別に勉強は好きではない。政治経済なんて元の世界ではネットニュースで知る程度にしか興味はないし、歴史モノのドラマは観れど、史実かフィクションかの違いを見抜けるほど深く知らない。それでも頭がパンクしそうになろうとも、時には寝る間も惜しんで暗記まで頑張ったりしたのは、偏にこの目の前のクールな黒髪イケメンに呆れられたくない一心であっただけのこと。


別にイケメンでなくても頑張る努力はするだろうが、イケメンであればさらに力が入ろうというもの。サナはどこにでもいるごくごく一般的なミーハー二十代女子なのだ。そこに惚れた腫れたがなかろうとも知り合ったイケメンの心象は出来ることなら良くしたい。そう思ったって誰が悪いというのか。


そんなこんなで聖女修行を行い、日の入り頃に自室に戻り、銭湯みたいに大きな浴室で入浴してー流石に入浴時の侍女達のお世話は固辞したー1日の疲れを洗い流し、濡れた髪を風魔法が使える侍女の人に優しく乾かし梳かしてもらいながら、オイルを使って手足のマッサージが施されるーこれは辞めてもらえなかったー。

元の世界の感覚的にはあまりにも贅沢なそれに恐縮しつつも、実は異世界にきて一番幸せな時間であったりする。


そうしてその日教わった事柄の復習などを一通りして、さっさと眠りに着く。

どう考えても元の世界にいた時よりとんでもなく健康的な生活を送らせてもらっている。


(肌とか髪のハリツヤめっちゃ良くなったし。パソコンとかスマホのブルーライト浴びてないせいかな?ドライアイ治ってきた気がする)


何よりも、食事環境である。

元の世界にいた時とは違い、しっかり三食いただいて、野菜に果物、穀物類に肉や魚と栄養バランスの良い食事の数々。調理方法に揚げるというのは無いようで、味付けは良く言えば素材の風味を生かしたシンプルなもの。ぶっちゃけていうと物足りない時もあるが、流石は王宮で出される食事。素材は全て超一流なものばかりなのだろう。サナは大分舌が肥えてきた気がしてきた。


そんな健康的な毎日を送り、ついに始まった黒い瘴気を浄化する旅。

瘴気の濃い場所から順に行うこととなり、王都からほど近い場所の時もあれば、行くまでに1週間ほど馬車に揺られなければならない土地もある。

召喚された当初イーグル殿下が言っていた通り、浄化の回数は1日で多くても2回まで。次の場所に赴く場合は最低でも休息日を1日与えられたので、目眩が起きる事はなかった。


しかし浄化の術を使うとやはりというか、多少の疲れは感じる。


(これはアレね。例えるならバレーの試合1セット出た時と同じくらいの疲れ・・・でもまだ残りのセット戦う為の体力は残ってるっていうか)


フルセット出場すれば当然相当疲れるだろうが、それでも強化合宿中の練習試合で日に何度もコートに出た時に比べればなんとも無いように、サナには思えた。


(なんか懐かしいな・・・この疲労感)


連日朝から晩まで続くデスクワークでは味わえない爽快感がある気がする。

何より現実として目の当たりにした黒い瘴気で生活どころか命までも脅かされているこの国の人たちを、サナが黒い瘴気を浄化することで助け、喜んでもらえるのは純粋に嬉しかった。


「聖女様万歳!」

「聖女様、我らに生きる希望をくださり、本当にありがとうございます!」


感謝はともかく、拝まれたり跪かれるのはどうにか勘弁していただきたいところであるが、聖女たるもの救いあげたものの感謝の意は微笑んで受け取るべし、なる心得を胸に今日も若干引き攣った笑顔でサナはぎこちなく手を振るのが精一杯であった。



「サナ嬢、貴女がこの世界に来てくださり本当に感謝している」


浄化の旅の指揮を執るイーグル殿下は、召喚当初の丁寧な言動を崩さず今日も今日とてサナに向かって頭を下げてくれる。

王族といういとやんごとなき高貴なお方だろうに、偉ぶることなんて一度もなく、本当に物腰が柔らかく腰が低い。


(内面まで眩しいくらいイケメンだなんて・・・うちの会社のオラついてイキリ切ったどら息子の肩書だけ専務にも見習ってほしい)


トップの息子という立場は同じなのだから、親の教育の賜物だろうか。浄化の旅初出発の際に挨拶したこの国の王様をサナは思い浮かべる。

騎士団長マルク氏に負けず劣らずの素晴らしき渋イケオジ具合であった。全女子の憧れ第二夫人になるならこの石油王ランキングがもしこの異世界にあったならば、マルク氏と並んで文句なしの1、2トップ争いになること間違い無いだろうと、また詮無いことを考えながら、サナは懸命に各地の黒い瘴気を浄化していった。


はてさて、そんな旅を始めて1ヶ月が経ち、半年が経ち、1年が経つ頃には、イーグル殿下言うところ、いささかふくよかであったサナの身体は、すっかり痩せ体型になっていた。

一番痩せていた大学時代より更に細く、浄化の旅から王宮に戻った際の入念な侍女の方々のお世話の甲斐もあってか、髪はツヤツヤ。肌はツルスベもちもち。血色良くどこもかしこもピカピカに磨き上げられ、先日訪れた辺境の地にある村の子供達から「聖女様かわいいね!」と口々に褒められてしまったばかりだーしかし旅に同行していたシエラが登場すると「うっわやっぱ姫様の方がスッゲー美女だ!」とすぐさま訂正されていたが。いつの世も子供は正直者であるとウンウン深く頷いたものだ。「そこへ直れ無礼者!」と今にも抜刀しそうな怒れるマルク氏を余裕の表情で宥めすかしたサナであったー。


「これが、私・・・?」


そんなテンプレに塗れたセリフを全身鏡に映った自分相手に吐いたとしてもご容赦いただきたい。それくらいサナにとっては劇的なことであったのだ。


浄化の旅は佳境に差し掛かり、残るはあと2回を予定しているのみ。各地で目撃されていた魔物も徐々に弱体化しその数は激減しているようで、着々とこの国の脅威は収束しつつある。


「サナ嬢とこうして語らうのも、あとほんの僅かな時間なのでしょうね」

「イーグル殿下・・・」


どこか寂しげに哀愁漂わせるイーグル殿下はやはり今日も頗るイケメンだ。

なんだかこの頃日を追うごとにイーグル殿下との心の距離が近づいている気がしないでもないサナは、必死にそれ以上想いが肥大しないよう己を律した。

何より勘違いに決まっている。痩せて多少小綺麗になったとはいえ、サナは所詮ごくごく一般的な平民女子。似てるねと言われたことのある芸能人など、大人数アイドルのお笑い担当ポジの子が最高記録である。

イケメン王子とドキに胸キュン恋模様なぞ今時の小学生でも“漫画の読みすぎ”と鼻で笑うことだろう。



「殿下は、この浄化の旅が終わったら、どうするんですか?」


気分を変えるように、努めて明るく尋ねたサナに、しかしイーグル殿下は、


「・・・そうですね。叶うことない想いに胸を焦がしながらも、この得難い日々を(よすが)に、これまでと変わらず、この国と民の為この生涯を捧げて生きていくのだろうと・・・そう思います」


フッとこちらへの色気たっぷりな流し目を今すぐ中断して欲しい。


(辞めて!これ以上勘違いしそうになる思わせぶりな態度は!!これ以上そんな真似されたら・・・少女漫画のお花畑ヒロインムーブかましたくなりそうだから!!!)


血が出るほど口の裏側を噛み締めその場は事なきを得たが、それからも元の世界に戻るまで幾度もイーグル殿下の思わせぶりな態度に口の裏側を噛み締めることとなったサナであった。







「“ーそんな異世界召喚ダイエット。無事に帰ってきた私に残ったのは、体調が整って痩せてスリムになった体と、あの国を黒い瘴気から救うことが出来たのだ、という揺らぐことない大きな自信、それとおまけででっかい口内炎の痛みなのでした“・・・ってなんだそのオチ。おもんな腹たつ」


1人寂しい晩酌のお供に、とある都市伝説ばかりを集めたネットのまとめ記事を読み込んでいた佐原 海斗(さわら かいと)は、大きく舌打ちをした。

ヘンテコなタイトルに釣られて読んでみたものの、あまりにも荒唐無稽な与太話。馬鹿馬鹿しいと一蹴するのも無理はなかった。


「いかにも女が好きそうな話だな。イケメン共にチヤホヤされて異世界を救う聖女様って・・・しかもついでに痩せて綺麗になって帰ってくるとか、どんだけ都合良いんだよ。てかこれのどこが都市伝説?んな簡単に痩せられたら世話ねーわ」


最近目立ってきた下っ腹の贅肉がいつにも増して憎らしい。登場する主人公と似たり寄ったりな社畜生活を送る海斗にとっては、内心羨ましくもある為、反動で苛立ちが募るのだろう。


「ったく」そう毒づいて、もう一本缶ビールを取りに行こうと立ち上がった海斗の足元が、突如光り輝いた。



「へ!?なになになに!!」


思わずギュウっと強く目を瞑り、身を強ばらせることしばし。次に恐々目を開けると、



「ああっ、よくぞ来てくださいました!!我らの救世主様!!!」


ピンクブロンドの超絶美女な、出で立ち見るからにお姫様が涙ながらにそう海斗に駆け寄ってきた。




「へっ?え??ま、まさか・・・」




こんな都市伝説を読んでいると、ほら、あなたの足元も光がー。














************





召喚先の世界の女神「ーいや確かに。こちらの世界の安寧のために救世主をお貸しいただきたく、とは申しましたけど・・・ウチの世界強制ダイエット合宿場所かなんかと勘違いされてません?」

現実世界の女神「あらなにかご不満?召喚されたウチの子たちも大喜びでwin-winじゃない?」

どこぞの世界の女神「いやあ此度の男性も劇的に大成功でしたわね!まさかあのまま彼の国の姫と懇ろになるとは・・・わたくし最近神々の泉から召喚者の異世界生活みるのにハマっちゃって」

召喚先の世界の女神「ダイエット企画見る視聴者みたいなことおっしゃるの止めてくださる?」


全知全能、万物須く知る女神様なので、全世界のありとあらゆるバラエティ番組も閲覧済みですわ。


お粗末様でした。

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