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地獄




「呪いの王が、鬼が、こんな腑抜けた野郎だなんて。この遣る瀬無さを。俺の野望をどこにぶつければいい。いや。問う必要はない。小樂こらく。おまえがいる。おまえが必死になって呪いの王たる鬼になれば、俺がおまえを祓って、野望を成し遂げればいい。簡単な話だ」

「いやそんないい顔で言われても俺は嫌だよ!俺は細く長く生きるんだ!誰が呪いの王になってかいに祓われるもんか!」

「おまえは鬼のクローンだろうが!」

「鬼のクローンだから何だってんだい!俺は俺だ!鬼なんか!呪いの王なんか知るか!ほら!もう帰るよ!どうやら俺たちをここに連れてきたのはこの鬼みたいだし!はい。俺はあんたが望む鬼にはなりません!俺は俺の望む鬼、っていうか、祓い役になります!はいさようなら!ごきげんよう!あっ。ただ、鬼が島に集う生物の操り人形になりたくない、祓ってほしいって言うんなら、俺はあんたを祓うよ」


 しれっと言い放った小樂こらくの、その陽気な表情に潜んだ、身の毛もよだつ殺気を感じ取った鬼は、けれど満足げに微笑むだけに留めた。


「いや。存外、これはこれで悪くはない。とは、思っている。望まざる対象から、望まれる対象になった事を、暫し楽しんでのち、そうだな。そなたに祓われるか。もしくは」


 鬼は目を眇めた。


「また、望まざる対象へと戻るか。決めるとしようか」

「そっか。じゃあ。そういう事で」


 あっけらかんと返して櫂を宥めつつ豪華客船に戻ろうとした小樂こらくを、けれど、鬼はやんわりと引き留めた。


「え?なに?気が変わって祓われたくなったの?」

「いいや。誤解があるようなので言っておこう。その豪華客船は元々この鬼が島に到着予定だったものだ。ここはリゾート施設でもあるからな。三日は滞留する。当然、その間、豪華客船は動かぬぞ」

「へ?」

「っふ。それまで、まあ。双子水入らず?いや?親子水入らず?語り合おうではないか。小樂こらく

「へ?」

「おういいじゃねえか。その間に、呪いの王になってもいいぞ。俺がしかと祓ってやるから安心しろ」


 種類は違えど、キラキラと爛漫に輝く表情を櫂からも鬼からも向けられた小樂こらくは、口元を引き攣らせてのち、文太ぶんたに助けを求めたのであった。






「ふふ。小樂こらく。楽しんでいるかな」


 文太は縁側に座って、熱い緑茶を飲んだのち、鬼をかたどった練り物を竹楊枝で真っ二つに割って、半分を食すのであった。


「うん。美味しい」

「文太!!!助けに来てくれーーー!!!」

「まあまあまあ。のちのために親睦を深めようではないか」

「そうそうそう。俺のために親睦を深めておけ」

「ぎゃあああああーーーーー!!!」











(2024.2.5)




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