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鬼が島
鬼が島。
肉体を持つ生物に憑依をしては肉体を得る他の呪いに対し、自ら肉体を創成しては全呪い、全生物に絶望を叩きつける鬼が一体棲む島であり、呪いの王とも、史上最強にして史上最悪とも称される、その一体のみの鬼に信奉する生物が多数住む島、でもある。
「早速本丸が登場ってか」
式神犬、櫂は小樂に背を向けては舌なめずりをして、鬼と対峙をした。
櫂は野心家であった。
豪華客船から降りて鬼が島に足を踏み入れたと同時に、出現した鬼に強く焦がれていた。
誰も祓えずに長い月日を放置するしかできなかった鬼を祓って、式神としての最強の称号を得たかったのだ。
「小樂。邪魔をすんなよ」
言い終えた途端、櫂は身体の向きを後方へと素早く変えて、跳ね上がった。
瞬時にして後方にいた小樂の傍らへと移動しては肩を抱く、鬼の頭に噛みつこうとしたのだ。
が。
違和感を察知した櫂は、空を蹴って、鬼への攻撃を中断。地へと降り立つと、険しい顔で睨んだのであった。
邪悪さとは無縁の微笑を浮かべる鬼を。
(2024.2.5)