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小樂




「文太に、だまされたあああ!!!」


 鬼のクローンであり、祓い役である小樂こらくは吠えた。

 話が違う、これは慰労の旅ではない、結局、仕事で送り込まれたのだ。

 鬼が島に。






 呪いを祓うための戦力として、クローンが現場に投入されるようになった世界。

 鬼のクローンとしてこの世に生を受けた小樂こらくには、けれど、鬼特有の肉体の頑丈さ、攻撃力の強さ、闘争心の強さがなかった。

 さてどうしたものかクローンの処分は禁止されているし。

 祓い役として役立てそうになかった小樂こらくの処遇を悩んでいたところ、小樂こらくを祓い役が一人、文太ぶんたが引き取った。


 式神使いであった文太は祓い役としては有能であったが、私生活となると、とんと面倒くさがってほとんど丸投げ。世話係に何人も送り込まれたが、みな、深々と頭を下げて文太の元から立ち去って行ったという。

 汚部屋が好きではない、ただ家事をするのが面倒な文太は考えた。

 送り込まれた世話係だからいけない。

 自分の直感を信じて選んだ生物を世話係にすればいいのだ。

 そうして、小樂こらくを選んで引き取ったわけである。

 文太は自分を褒めた。

 小樂こらくは確かに自分の世話係に相応しかったのだ。

 自分は動かないくせに、あれやこれやと文太の細かい要求に応えてくれるのだ。


 式神と全然違う。

 呪いを祓う仕事以外に、誰がおまえの世話を焼くものかと背を向ける式神とはぜんっぜん違う。

 ほろりと涙を浮かべた文太は、小樂こらくに式神使いとしての修行もつけるようになった。

 小樂こらくは式神使いとしても、文太の要求に応えて、めきめきと上達。

 相棒の式神犬、かいとともに、祓い役として活躍できるようになり、小樂こらくの頑張りを見ていた文太もまた、重い腰を上げて家事をするようになったそんな頃。

 頑張っているからと、文太は小樂こらくに豪華客船の旅を贈ったのであった。




「ふふ。小樂こらく。楽しんでいるかな」


 文太は縁側に座って、熱い緑茶を飲んだのであった。











(2024.2.3)




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