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最終話 浮気のツケ

「……俺が悪いってのか?」


「ああそうだ。お前が悪い」


「……もう一度聞くぞ。俺が悪いってのか?」


「何度でも言ってやる。今回の事件はテメェに全ての責任がある。100%混じり気無しにお前が悪い」


「……」


 しばらくの沈黙の後、勇者様は剣に手をかける。それを見て俺も腰に差した護身用の短剣に手をかける。


「ほぉ、剣を抜くか。良いだろう、それで気が済むのならやれ。ただし問題は一切解決しないうえに「元仲間殺し」という汚名が付くというのは当然織り込み済みだよな?」




 怒りが爆発したのか、狂人のような叫び声をあげながら剣を抜き襲い掛かってくる! 普通の時ならともかく、頭の芯まで怒りに満ちた人間の動き、太刀筋というのは素人でも簡単に読める。

 ましてや戦場で何度も修羅場をくぐり抜けてきた俺には見切るのはたやすい。切っ先をかわし、あるいは護身用の短剣で弾きながら呪文を詠唱する。


「アギダ・アンブリダ・アギダ・アガ・メガ・ヴェロム・ラマスキタ・メル・カヴォルム……≪パラライズ!≫」


「アゴアッ!」


 勇者様の全身がしびれてマヒし、その場で剣を落としばたりと倒れ動けなくなる。




「いたいた! ナーシェン! 今日こそ真相を聞かせてもらわよ!」


 それから間もなく騒ぎを聞きつけたイーリスとライムが酒場になだれ込んでくる。


「お願いします、助けてください、お願いします、助けてください、お願いします、お願いします、助けて、助けて、助けてくださいお願いします……」


 イーリスの手で『パラライズ』が解かれると同時に、彼は涙と鼻水で顔面をぐちゃぐちゃにしながら俺の足元にすがりつくように頼み込む。




「ナーシェン! フランシスに泣きつく暇があったら私たちに説明してほしいんだけど?」


 ベタな表現かもしれないが、イーリスは鬼のような形相でナーシェンをにらみつけている。普段の顔からは想像もできない気迫が漂ってくる。


「ああそうそう。コイツが言うのは俺を追い出したのもライムに浮気したのも全部ライムの方から誘ったせいらしいぜ」


「フランシスーーーー! テメェ余計なことを吹き込むんじゃねえ!」


「へぇー、私のせいにしちゃうんだ。ナーシェンさんって裏切り者な上に責任を背負わないんですね?」


 ライムもイーリスに負けず劣らずの顔でナーシェンをにらみつける。2人は勇者様の髪をわしづかみにして引きずるように酒場を後にしていった。




 結局その後パーティは解散。

 勇者ナーシェンはスキャンダルによる冒険者全体のイメージ低下に大きな悪影響を与えたとして、4段階のランクダウン措置を食らったという。

 俺としてはこの程度の罰で済むなんて泣いて感謝すべき、と思ってはいるのだが。現代日本じゃ芸能界に居られないスキャンダルになるんだぞ? 甘いよなぁ。

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