居ても立ってもいられない
どうも、今度は主人公視点です
はぐれゴブリンを倒すことに成功し、銅級冒険者としてその日暮らしの生活を安定?させることに成功した俺は割といい毎日を過ごしていた。
勿論、いい生活と言っても、大きな椅子にどっしりと座って沢山の美男美女にうちわで扇がれながら高級ドリンクを飲みワハハな毎日という訳では無い。
そこそこな飯を食い、個室ではあるが日本だったら晒してしまえと言われてしまいそうな質の安宿で眠る生活だ。
それの何がいいのか分からない人もいるだろう。俺は労働することの良さを感じ取っているのだ。
……正直、地球にいた頃は働きたくなかったし、自分の将来がどうなるのかとかいう恐怖も少なからずあった。
でも今の俺は自分の赴くままに動けるし、何の因果か不老まで獲得したので自分の将来を考える必要があんまりない。
要は楽しいんだ。自分のやりたいことが自分の夢見た世界で行えているのが。
……柄にもないこと言っちゃったな。それじゃあさっきまでのことはキレイさっぱり忘れて今日も今日とて冒険者ギルドに行って労働するとしますか!
☆☆☆☆☆
「「「ざわざわ……ざわざわざわ……」」」
俺が冒険者ギルドに辿り着くと、何故かいつもと違い慌ただしい雰囲気を醸し出していた。
いつもは余裕そうな表情で労働に勤しんでいる先輩冒険者たちも何故か冷や汗をかいている。
……これは聞いてみないとな。確実に何かあったに違いない。
「あの、先輩!何があったんですか!この騒ぎは一体?」
「お、新人か。どうやら森でバケモノが現れたらしい」
近くに居た冒険者の先輩に話を聞いてみると、深刻そうな顔でそう言われた。
……正直言って地球からやってきた俺はこの世界に居るモンスターは全員バケモノだと思うのだが、この世界に最初から居る先輩方がみんなして深刻そうな顔をしているところを見るとかなりのモノのようだ。
これは覚悟して聞いた方がいいかもしれないな。
「ギルドから事前に森に異常が起きているかもしれないという通告はあったんだが、遂に今日銅級の奴が巨大なスライムに出くわしちまったらしい」
巨大なスライム!?スライムってアレだよな、俺が経験値稼ぎに使った……正確には今も使っているモンスターの事だよな。
「スライムは小さい奴は大したことないんだが、デカくなると物理攻撃が全然効かなくてな。それでいて何でも取り込んで溶かしちまうんだ。滅多に現れない筈なんだが、何かあったんだろうな」
そうだったのか。そんな恐ろしい奴が俺の稼ぎ場に……。そうだ!銅級冒険者がそいつに遭遇したって言ってたけど、一体どうなったんだ?
「それはよ、言い難いんだが偶然その場に銀級冒険者が居合わせたらしくてな、銅級を庇ってスライムを引き付けて森の奥に走っていったらしいんだ」
銀級冒険者が!?……何か嫌な予感がする。銀級冒険者で銅級を庇うほど人が出来ている。まさか。
「確かチャールとか言ったか」
姐さんじゃねぇか!!大変だ!!急いで助けに行かないと!!
俺は先輩との話を急いで切り上げて、ギルドを抜け、森に向かって走り始めた。
「馬鹿野郎!!今森は危険だって言っただろ!行くんじゃねぇ!!……クソ、なんでアイツこんなに足が速ぇんだ!!追いつけねぇ!!」
後ろから先輩の声が聞こえるが、関係無い。俺は助けたいと思った人を助ける。
それが傲慢と言われても関係無い!!力を隠すかどうかなんて後回しだ!!後の俺に任せる!!
俺は進むぞ!!待っててください!姐さん!!
力を隠すのは恐れられない様にするため。ですがそれを自分に優しくしてくれた人を助ける行為と比べた時、優先順位は下になるのです。