(別視点)冒険者ギルドに雇われた男
タイトルにもある通りササキではない別視点です。しかも書き方がいつもと異なります
それはササキがゴブリン退治に夢中になっていた時のこと。まさにその同時刻に、冒険者ギルドによって雇われた男がササキと同じ森に滞在していた。
その男とササキは偶然同じ森に居た……という訳では勿論ない。男はある使命を受けて森に向かっていたのだ。
男は銀級冒険者である。それも銀級冒険者としてはかなり上位の。レベルが百近い彼は近々金級冒険者に上がれるであろうことを疑っていなかったし、周りもそう思っている。
そんな彼が冒険者ギルドに呼ばれたとき、自分は昇格試験で呼ばれたのだろうと考えた。いささか早いように思えたが、早い分にはなにも困らない。彼は意気揚々と向かった。
しかし、待っていたのは華々しい昇格試験では無かった。なんと銀級冒険者としても上位の彼に任されたのは銅級冒険者の見守りと森の様子を探る偵察任務だったのだ。
男は耳を疑った。そんなモノは他の凡百の銀級冒険者に任せておけば良いのではと考えた。
しかし、ギルドに頼まれた事を断っては昇進に響くやもしれぬ。男は渋々承諾し、銅貨冒険者、つまりササキの後を追った。
男が森に辿り着き、銅級冒険者を発見した時には既に戦闘は始まっていた。……いや、正確には戦闘ではないのだが。
男はギルドに出来るだけバレぬように動いてほしいと頼まれていたため、気配を殺しながらその姿を見守っていたが、そこで見た光景は目を疑うものだった。
銅級冒険者がゴブリンと会話を試みているような様子が見られたと思ったら、突然戦闘が始まり、直後にゴブリンの身体が弾けたのだ。
勿論、金級冒険者にも届きそうな実力を持つ男にもそのぐらいのことは出来る。だが、普通の銅級冒険者にはそんなことなど出来るわけがないし、そしてその後に銅級冒険者はこう呟いたのだ。
「うーん、ちょっと強すぎたか」
それは異常だった。銅級冒険者__しかも周りもそう認識している__がゴブリンを粉砕した後に、力加減を間違えたと言っているのだ。
どうやら気配を探るのはあまり上手くないようで、こちらには気づいていないようだが、力だけなら自分を超えているかもしれない。男はそう認識した。
しかしその後もゴブリンを狩り続ける銅級冒険者を見て男はあることに気が付いた。
何故か群れからはぐれているゴブリンが多いのだ。これもまた、あの謎の銅級冒険者と同じくらい異常である。
ゴブリンの様な群れで活動するモンスターがバラバラになるための条件は様々だが、考えられることの中でもっともあり得るのは……。
「天敵、もしくは圧倒的捕食者の出現か」
ゴブリンに天敵らしい天敵はいない。ならば考えられるのは圧倒的捕食者の出現に絞られる。
幸いにして銅級冒険者も街に変える準備を始めたようだ。男も銅級冒険者の力や正体は気になる。しかしそれ以前に男はギルドに所属する冒険者なのだ。任された仕事はしっかりと果たさねばならない。
その後男はギルドに戻り、観察対象の銅級冒険者がゴブリンを粉砕するほどの力を持っていたこと、そしてはぐれゴブリンの大量発生から何らかの異常が森で起きているであろうことをギルドに報告した。
その報告がどのような結果をもたらし、どのような未来を導くのか。それはまだ、分からない。
いつもと違う書き方をしたのでちょっと不安です。
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