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ドラゴニックメイド  作者: ふーろう/風楼


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3人? での討論


 ベアトリクスの解説を一通り聞き終えた領主は、今耳にした話をしっかりと記憶し、頭の中で構築し直し……そうして分析しようとするが、記憶するので精一杯で中々上手く分析する事ができない。


 それでもどうにかこうにか組み立てて、分析して……自分の中の結論を出して、よし、早速その農法に挑戦してみようかと立ち上がろうとすると、そんな領主の肩をメイドがぐっと掴み、立たせまいと押し込み……領主の腰はソファに釘付けになる。


 そうして領主が抗議の声をあげようとするより早く、メイドがベアトリクスに向けて声を上げる。


「今のお話を聞いていていくつか疑問点があったのですが……そもそもクローバーに関わらず、休耕し放牧したなら土地が肥えるのは当たり前のことでは?

 クローバーである必要性が感じられないのですが……」


 するとベアトリクスは頷いて、真っ直ぐな視線をメイドに返しながら声を返す。


「はい、お言葉の通りなのですが……普通の牧草とクローバーとでは如実に違った結果が出るという実験結果がありまして―――」


「そもそもクローバーを食べた糞と、普通の牧草の糞にどれだけの違いがあるかもわかりませんし―――」


「それについては確かに。

 ……放牧と休耕とは別に、普通の牧草とクローバー、それぞれの糞を用意して肥料として使った場合どれだけ違った結果が出るかの実験もする必要が―――」


「いえ、そもそもとして糞にそこまでの力が本当にあるのかという議論も必要でしょう。

 クローバー自体はありふれた草で、そこら中に生えています、当然牛や馬はそれを食べているでしょう。

 クローバーをよく食べる牛を飼っている農家の畑が豊作になったなんて話は聞いたことがありませんし……もし仮にそうであるなら、もっと早く農家の方がその因果関係に気付いてもよさそうなもので―――」


「う……確かに。

 そうするとクローバーを植えること、それ自体に意味がある可能性が―――」


「それもまた一つの可能性でしょう。

 実際我が領の畑ではクローバーではありませんが、豆を植えたことで麦が大きく育つという結果を得ています。

 昨年、収穫した豆の茎や葉などは家畜達に与えていますが、その際に出た糞はまだ未使用で……もし糞が関わっているとするなら、未使用の段階で結果が出るのはおかしな話で―――」


 それらはまさに矢継ぎ早といった様子の、間を開けることのない言葉の応酬だった。


 ベアトリクスが発言する度にベアトリクスを見て、メイドが発言する度にメイドを見て、二人を交互に何度も何度も見やった領主の首が痛みを覚えてしまう程に激しい応酬は中々決着がつかず……痛みが気になって集中力を欠いた領主は、二人の会話を理解するのを諦めて、ぽかんとした表情を浮かべて……ベアトリクスの後方、壁にかけてある絵画をなんとなしに見やる。


 自分で描いた絵画のうちでも中々の傑作で、今描こうとしても同じものが描けるかは分からない傑作。

 ……の割には額縁が少し地味で、今度良いのを作り直すべきか……と、そんなどうでも良いことを領主が考えていると、領主の肩を掴むメイドの手の力が一段と強くなる。


「い、いだだだだだだ!?

 ど、ど、どうした、アイシリア!?」


 そんなことを言いながら領主が後方へと視線をやると、メイドがにっこりと微笑んで……「話は終わりましたよ」と、そう返す。


 話が終わった?

 一体どう終わったのか、どういう結論になったのか、自分は一体どうしたら良いのかと領主が困惑していると、露骨な態度で大きなため息を吐き出したメイドが、仕方ないかと領主の代わりに声を上げる。


「とりあえず豆やクローバーといった植物が何らかの影響を畑に与えていそうだということになり、糞に関しても追加の調査をする価値はあるだろうということになりました。

 クローバーにしても豆にしても結果自体は出ていますので、結論が出るまでそこまでの時間は必要ないでしょう。

 新しい実験畑を用意するよりは、このまま各地の畑を調査していただいた方が面倒が無さそうですので、フランクリンさんにはそうして頂いて……必要とあれば各地での滞在費を出しますし、この屋敷に滞在する許可も出したいと思います。

 女性ながら中々の博識家のようですし、屋敷に滞在していただければユピテリアにも良い影響があることでしょう」


 そんな言葉を受けて領主は「なるほど」と頷いて……「では、そのように」と締めの一言を口にする。


 まだまだどんな話だったのか把握しきれてはいないが、これ以上下手なことを言ったりやったりしてアイシリアの怒りを買うのは得策ではない。


 とりあえずこの場は流してしまって……後で改めて何があったのかを聞いて理解を深めて行けばいいだろう。


 そう考えての領主の笑顔はとても輝かしいもので、爽やか過ぎる程に爽やかなもので……ベアトリクスはなんとなしに領主とメイドの人となりと関係性を察して……柔らかに微笑み、言葉を返す。


「過分な待遇を約束していただきありがとうございます。

 とりあえずは数日、こちらに滞在させていただいて、周囲の畑を調査し、状態の記録をおこないたいと思います。

 その間、ご迷惑をおかけするとは思いますが、ご容赦いただければ幸いです」


 丁寧に冷静に、そうベアトリクスが声を上げると……その瞬間バタン! と、客間のドアが開かれ、先程屋敷の外で挨拶を交わした少女……領主の娘であるらしいユピテリアが顔を出す。


 ユピテリアは満面の笑みで、その足元にアヒルを従えていて、後方にクーシー達を従えていて……嬉しさからかパリパリと目に見える程の雷を体の周囲に放っていて……それを見たメイドがすぐさまに嗜める。


「ユピテリア、魔力を抑えなさい」


 するとユピテリアの周囲にあった雷がすっと消えて……ユピテリアは粗相をしてしまったというような、照れ笑いを浮かべてから……居住まいを正し改めてベアトリクスに挨拶をする。


 そんな光景を見てベアトリクスは……ユピテリアが有しているらしい魔力の多さに戦慄する。


 それはどう考えても人の魔力ではなく、少女がコントロール出来るようなものではなく……一体何がどうなったらあんなことになるのか、あんなことが出来るのか。


 その答えはユピテリアがドラゴンだから……なのだが、そのことを未だ知らないベアトリクスは、笑顔を浮かべながらも内心で戦慄し続けるのだった。


お読みいただきありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] 見るからに常識人枠なベアトリクスさん。彼女の胃痛が偲ばれる。
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