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ドラゴニックメイド  作者: ふーろう/風楼


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森の中での対決 その2


「ぐわ!」

「ぐわわ!!」


 枝の上で翼を構える二羽のアヒル達がそう声を上げる。


「誰が痴れ者か! アヒルごときがよくも言ったものだな!」


 するとどうやってその言葉を理解したのか、ドラゴン殺しがそう声を返す。


「ぐわっ!」


 更にそう返したアヒルは……パラモンは、枝を蹴ってドラゴン殺し目掛けて飛び立ち……凄まじい速さでもってドラゴン殺しへと肉薄し、すれ違いざまに翼を振るい、ドラゴン殺しに一閃の斬撃を食らわせる。


「甘いわ!」


 だがそれを読んでいたのかドラゴン殺しは、手にしていた大剣でもって見事にその斬撃を防いでみせる。


「ぐわわっ!」


 するともう一羽のアヒル、アーサイトがパラモンと同じようにドラゴン殺し目掛けて飛び立ち……すれ違いざまの斬撃をその背中へと放つ。


 瞬間響き渡ったのは金属と金属がぶつかりあったような、耳をつんざくような高音だった。

 その発生源の片方はアーサイトの翼で、もう片方はドラゴン殺しが背負っていた鞘で……鉄製の鞘がドラゴン殺しの身代わりとなって両断され……下半分がずさりと地面に落ちて突き刺さる。


「お、おのれ!? 背中を狙うとは貴様、騎士道を知らんのか!!」


 流石に鉄の鞘が……大剣をしっかりと納め、支える程の鞘が両断されたとなっては焦らずにはいられないのだろう、震える声でドラゴン殺しがそう声を上げるが……パラモンとアーサイトは半目での冷たい視線を返すのみ。


 貴様の騎士道など知ったことか、自分達には自分達の……アヒル流の騎士道がある。

 

 そう言わんばかりの表情を見せるアヒル達に対し、ドラゴン殺しはただ下唇を噛むことしか出来ない。


「女子供の命を狙うのが貴様の騎士道か!!」


 そんな中で声を上げたのはヘリワードだった。

 パラモンとアーサイトに助けられ……死に瀕したという恐怖からようやく今立ち直ったらしいヘリワードは、声を上げながら鉈剣をドラゴン殺しに向かって振り下ろす。


 するとドラゴン殺しはそれを大剣でもって受け止めて……正面のヘリワードと、左方のパラモン、背後のアーサイトを同時に相手にしなければならないのかと、血が流れ出る程に強く下唇を噛み……ゆっくりと口を開く。


「……男ならば、騎士を志すものであるならば、上を目指すのは道理だろう!

 このオレは剣を振るう才能と魔法を扱う才能と、人の上に立ち人を導く才能に恵まれた、天に愛された男だ!!

 であるならば、それほどの才を授かったのならば……それに見合うだけの大事を成さないでなんとする!!

 女子供に擬態していようが、所詮連中はドラゴンだろうが!

 そんな化け物を殺したとなれば名誉こそが相応しく、非難されるいわれなどない!!」


 そんな言葉を吐き出したドラゴン殺しは、神経を尖らせながら三方の動きを伺う。


 自分の言葉は全く正しく、男ならば共感するしかない、道理に則ったものであるはずだ。

 であるならばこの猛者達も必ずや共感し、その凶刃を収めてくれるはず……!


 いや、それどころか自らの野望に、輝かしい夢に協力さえしてくれるかもしれない!


 そんな想いを抱いていたドラゴン殺しだったが、結果はその想いに反したものとなり……ヘリワードもパラモンもアーサイトも、静かな怒りを懐き、その怒りを燃料として心と体を燃やし、それぞれの刃を凄まじい力で、速度で振るってくる。


「この分からず屋共め!!」


 それに対しドラゴン殺しはそう声を上げて、先程放った光弾の魔法でもって三方からの攻撃に対応しようとする。


 光弾の数を増やし、それに込める魔力を増やし……より強く威力の高いものとすればそう簡単には切り払われないはず……と、考えていたのだが、まずパラモンに、次にアーサイトに……そしてそんな二羽に倣ったヘリワードにさえ、光弾を切り払われてしまう。


「ああ……魔力とはこういうものなのか!

 なんとなくだが理解できた……出来ました!」


 ヘリワードが上げたその声は、ドラゴン殺しの周囲を舞い飛ぶ二羽のアヒルに向けたものだった。


 貴方達のおかげで命が救われた、そして今新たな境地に至れた。


 そんな敬意を込められたその言葉に、パラモンとアーサイトは微笑んでいるかのように目を細め……細めながらもドラゴン殺しへとより苛烈な斬撃を放っていく。


 するとドラゴン殺しは先程とは違う魔法を……小さな光の盾を作り出す魔法を展開し、辛くもそれらの斬撃を防ぐことに成功する。


「ぐっ……!」


 防ぎはしたものの、劣勢なのだろう、ドラゴン殺しがそう呻きながら雑に大剣を振るい……ヘリワード達はそれを余裕を持って回避する。


 三対一。


 いくら剣技に優れていても、稀有な魔法の才を持っていても、不利な環境の中でのその数の差は辛いのだろう、ドラゴン殺しの息が完全に上がろうとしている中……その戦場に更に三つの影が駆けて向かってくる。


 それはマントを翻しながら、小さな短剣を構えて駆ける……ミクーラ、ヴォルフ、スヴトゴールの三勇士だった。


 小さな背を更に低くし、革長靴で軽快に地面を蹴り……ミクーラを先頭に、ヴォルフとスヴトゴールがそれに付き従う形で……ドラゴン殺しへと向かって一直線に。


「犬ごときがぁぁぁぁ!!」


 その姿を見てドラゴン殺しはそう声を荒らげ……地面を思いっきりに蹴って、ミクーラ達の方へと向かう。


 ミクーラ達の姿を見て、労せず勝てる相手だと判断して……さっさと倒してしまって数を減らしてしまおうと考えたようで……駆けながら光弾の魔法を発動させ、そうしながら大剣を振るおうと大きく振り上げる。


 そうして光弾から光の槍が放たれ……同時に大剣が振るわれ、それらがミクーラ達に襲いかかるが……ミクーラ達は至って冷静に左右に飛び退き、そうしながら手にした短剣を振るい、飛び退いたことで大剣を回避し、振るった短剣でもって光の槍をいとも簡単に砕いてしまう。


 今までの戦いの中で一度として、誰を相手にしようとも破られなかった光弾の魔法。


 それをこんなにも簡単に次々と、あっさりと破られてしまって……大汗をかき、息を荒げ……唯一の武器を地面に突き立てながら、片膝をついてしまったドラゴン殺しはその心が折れる寸前まで追い詰められてしまう。


「……ドラゴンを殺そうなどと大言を吐く人間とはどの程度のものかと思って様子を見に来ましたが……この程度の存在でしたか」


 と、その時。

 冷たく凛と響く声がその場にいる全員の耳へと届く。


 冷たく、木々のざわめきの中でもしっかりと聞き取れる……透き通った声。


 それを受けてパラモンやミクーラ達が何故ここに来てしまったのかと動揺する中……ドラゴン殺しは、目の前に明らかに人外の……人や獣といった存在をゆうに超越しているだろう存在が現れたのを見て……折れかけた心をどうにか持ち直し、何処にそんな力が残っていたのか、凄まじい勢いで持って立ち上がり、手にしていた大剣を今日一番の勢いで、人生の中で二度と再現出来ないだろう極限の鋭さで『それ』に向かって振るう。


 するとそれは静かに、身につけたスカートを揺らすことすらなく静かに、二本の指だけでもってその斬撃を受け止め……見るもの全てが凍えるような、ドラゴン殺しの心の奥底までに染み入る冷笑を浮かべるのだった。


お読み頂きありがとうございました。

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