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プレシャス オブ メモリーズ ~シャヌア ズ~



鉱山の一件・・・あれから私は何故かダンズに腰を落ち着かす事になってしまっていた。


あの日に私は町を出ていくつもりだった。



なのに・・・。




ロエ

「シャヌアさん! これ見てください! これ先日取れた鉱石なんですよ!これが凄く希少で!!」




私は彼に物凄く懐かれてしまっていた。


あれから色々とあった。


あの盗賊事件があったのにも関わらずロエ様が私の宿泊先を探すのに迷子になり町中が大捜索するなんていう事もあり、今ではロエ様を変に外に出さないようにする為私が御屋敷へ赴くことになった。



子供にここまでされたのは恐らく初めてで私はどう反応するのがいいのかわからなかった。


社交性はあまり自慢できるほどには整っていないと自負しているのが自慢だ。



何を考えているのだ私は・・・。





ロエ母

「あら、シャヌアさん、今日もすみませんねロエの相手をしてもらって」


シャヌア

「いえ、特に何もしてませんので・・・」




ロエのお母様が来てもロエ様は見向きもせず私に鉱石の説明をしていた。


もちろん話しは聞いているつもりではいるが、ロエ様の口からは専門用語のような物があまりにも多い。


そしてそれを上手く扱えていないのが余計に何を言っているのかわからないのだ。




ロエ母

「あらあらべったりね、シャヌアさんよかったらお昼ご飯一緒にいかがですか?」


シャヌア

「あ・・・それは流石に・・・」


ロエ母

「今日は水の国の業者さんからお魚をたくさん仕入れてきたのよ?」


シャヌア

「・・・お魚」




目が・・・点になった。


私の、大好物。



ロエ

「あっ! シャヌアさんヨダレ垂れてる!!」


シャヌア

「えっ!いや・・・これは!!」




急いで拭った・・・拭う物はなかった。




ロエ

「あはははははー!!!」


シャヌア

「あっ、なっこの・・・!!」


ロエ母

「ふふふふふ・・・」




二人にただ笑われて私は顔を赤くして黙りこんでしまった。



微笑ましい日常だった。



不思議とこんな日々を過ごしていると今まで自分が一人孤独に旅をしていたのが嘘のようだ。



お父様は常にお仕事で御屋敷を空けることが多いが、屋敷にいる時はほとんどロエにくっ付いている程に・・・言葉を悪く言えば親馬鹿だ。



最初の頃はこの家族を見ているのが辛かった。



もし・・・もし、私の両親が生きていたらこのように楽しんでいたのだろうかと・・・。



それだったら、なんて考えていた。



だが、不思議とそんな悩みを打ち消してくれたのは。




ロエ

「シャヌアさーーん! ご飯行こーーう!!」




この子であるのは間違いなかった。






-------------------------------------------------------------------------




日が暮れ始めった。


ロエ様と色々と遊んでいたらもうこんな時間になっていた。




シャヌア

「・・・・・・」


ロエ

「どうしたの?」


シャヌア

「えっ!? あっ・・・夕暮れが綺麗だなって・・・」




どうしたのだろうか、急に呆けてしまっていた。


ついついこの夕暮れを見ると思いだしてしまっていたのかはわからないが・・・両親が死んだことを・・・。




「大変だ!!!」




屋敷の玄関から扉を開ける大きな音と共に男が一人入ってきた。



何故だろう・・・。



私は・・・頭が真っ白になってしまった。



まさか・・・。




「ご、ご当主が!!」



シャヌア

「っ・・・!!!」




吐き気を催す。


意識が、飛びそうになる。




まさか・・・。




頭痛がする。


手の感覚が徐々に無くなっていく。



まさか・・・。



匂いも感じない。


耳も聞こえない。



まさか・・・。





バタンッ!!!





ロエ

「シャヌアさーーん!!!!」







-------------------------------------------------------------------------





シャヌア

「ここは・・・」



布団の中・・・。


あれ・・・たしか・・・。



記憶が飛んでる。





ガサッ・・・。





シャヌア

「あっ・・・」




ロエ様が寝ている。


私の面倒でも見ていたのか・・・。


窓の外を見るともう遅い時間だということがわかる。



そう、私は気絶してしまっていた。


少し頭が重いと感じる。




ロエ

「シャ・・・ヌア・・・さぁ・・ん」




寝言。


それを聞き、重いと感じた頭痛も取れた。


吹き飛んだと言った方がいいだろう。



そこに部屋に入ってくる人影を感じ目線を向けるとそこには忍び足で近付くロエのお母様が。




ロエ母

「しーーー・・・」


シャヌア

(コクンッ・・・)




静かにロエ様を抱える。


一切物音も立てずにしっかりと抱きかかえる。

ロエ様は起きる気配がない。




ロエ母

「お茶ご馳走しますので、よろしかったらどうか」




小声で私にしか聞こえないように喋った。


私は同じようにコクリと頷いた。



ロエ様を運ぶのをお手伝いしようと考えたが・・・やめておいた。



あれもまた一つの愛情なのだろう。




『子供はかわいい寝顔を見せ母親を安心させる』




私の母がよく口にしていた言葉だ。


私が静かに安心して眠れるようにと・・・。





シャヌア

「・・・・・・」





話そう・・・私の全てを・・・。










私は居間へと向かった。


驚いた事にもうロエのお母様は紅茶を入れて待っていた。




ロエ母

「本当に困った子ね、父親よりもあなたの事が心配でずっと付いているなんて、ふふふ」


シャヌア

「そうだ・・・あのご当主様は!」


ロエ母

「大丈夫よ、いつものことなのよ。岩の瓦礫が落ちてきて生き埋めになりかけただけなのよ、本当にいつも大袈裟なんだから」





笑って・・・済ませてしまっていた・・・。


私はなんて言っていいのかわからないでいた・・・。



確かにご当主様の経歴はあの事件の後すぐに聞いた。

予想通り軍隊に所属していて常に最前線で戦いを続けていたらしい。


そんな中今の奥様、今私の目の前にいるロエのお母様と一緒になる為に軍を除隊し一からここまで築き上げたというお方だ。





ロエ母

「それよりも・・・大丈夫なの?シャヌアさん」


シャヌア

「・・・、心配・・・おかけしてすみませんでした」


ロエ母

「とりあえず、これをどうぞ」


シャヌア

「はい・・・頂きます」





奥様が入れるお茶はいつも落ち着く。


不安な気持ちを落ち着かせてくれる、今もこうして私の心を救ってくれる。



ふと、奥様の顔を見る。


真剣な眼差しで私を見る。



きっと、話してほしい。

その顔だ。




私もここへ来る前から決めてはいた。


改めてこのお茶に感謝した。





シャヌア

「聞いてほしい事があります・・・」




私は意を決した。


全てを話した。


私が生まれた時からの体質を。



それで両親を失ってしまったことを。



それから・・・軍に入り・・・孤独に旅をし・・・。




この街に・・・来たことを。




全て、黙って・・・奥様は話しを聞いてくれた。







ロエ母

「そう・・・、ごめんなさい軽い気持ちで聞いてしまって」


シャヌア

「いえ、いつか話そうって・・・ずっと思っていたので」




両親を失ってからここまで良くしてくれたのはこの家族だけだった。




私が無意識にここまで心を開いたのは・・・ここだけだった。




だから・・・私は、ここを離れないといけないんだ。





ロエ母

「あの・・・少しだけ、少しだけ待ってもらえませんか?」


シャヌア

「え?」




奥様が私の手を握って訴えてきた。


思わぬ事に、驚きを隠せないでいた。



握られた手から、何か・・・不安のような物を感じる。



一体、どうしたのだろうか。




ロエ母

「あの・・・私に雇われませんか!?」


シャヌア

「・・・は?」


ロエ母

「いえ! これを!!!前金! いえ今までの料金だと思ってください!!」




硬貨袋が置かれた。


一体・・・これは・・・。


チラッと見えただけでも金貨だった。




シャヌア

「ど・・・どうゆう・・・?」


ロエ母

「あの子を・・・ロエを守ってくれないかしら」




その時の奥様の目は真剣だった・・・。



いや、少し涙ぐんでもいた。





一体何があったのか、その時の私にはわからなかった。






それが本当の始まりだったのかもしれない。





-----------------------------------------------------------------------




それからというもの、ロエ様も通常通り外出するようにもなった。


私も今まで通りロエ様の御屋敷へと遊びにも行く。



私はそれ以外の時間全てをロエ様警護としてバレナイように遠くから見守っていた。


奥様の圧に負けて私は雇われた。



というよりもわからなかった。


私の体質のことは理解しているはず・・・信じてもらえてるかわからないが、それでも私が回りにしたら最悪ロエ様自身が・・・。



それなのに、まるでそれが承知で・・・奥様、あなたの考えがわからない。



この仕事を請け負って数日、私は細心の注意を払って臨んでいた。



外敵よりも、私が振りまく厄介に。



そんな中一度だけ、ご当主である旦那様へと伺った。

それは私の事を聞いたと教えてくれ、同じようにロエ様をお願いするというその時に・・・。




『私達が・・・不甲斐ないばからに、申し訳ない』




それだけ私に告げたのだ。



私はありとあらゆる事を考えていた。

本当にこの数日はこの家族の事ばかりを考えてしまっていた。



最悪のケースは免れていた。



それは、何かあのご両親に不穏な物がないかなんて物だ。



軍隊の図書館で暇つぶしに見た小説が私をそう思わせたのだ。



タイトル

『夫が浮気したから私も浮気をしたら家族が壊れて異次元に飛ばされたが浮気を続けて世界を救う!』



当時の私は一体何を見ていたのやらと頭を悩まされた。


と、そんなことはどうでもいい。



ただそれだけが気になっていたが私が調べてる中でそれは一切なかった。



町の者達にもそれとなく聞いてみたがこんな小さな町でそんな事があったらすぐにわかると逆に怒鳴られたこともあった。



つまりその線は無い。




なら何故・・・。



あの二人の目。



まるで憂えいてるような・・・。



一体何に・・・。





それはいつものように誰にも見つからないようにロエ様を見守っている時だった。




「本当に素敵な子ね」


「えぇ・・・本当にしっかりとしたお子様ですね」




子供達が遊んでいる施設の管理人。


なんの他愛ない会話。



その通りだと、私も思う。

だけど、そんなロエ様にも子供のような一面を私は知っている。


私を騙したりや変におねだりするような一面もある。




ふとロエ様の方へ目線をやる。



ロエ

「・・・・・・」



不自然に止まってた。


何かを見ている。


そこには何もない・・・強いて言えばそこはさっきまでロエ様を褒め称えていた管理人がいた所だ。




「ロエくーーん、あそぼーー」


ロエ

「う、うーーん!!!」





お友達の声でまるで我に返ったかのように笑顔に戻った。


そしていつもの日常が続いた。





私は・・・余計にわからないでいた。



ロエ様のご両親の言葉が・・・一体何を心配されてるのか。








そして・・・また・・・私にとって最悪な事態が・・・起きた。




シャヌア

「・・・っ!」




私はまた・・・呆けていた。


また少しの間意識を飛ばしていたのか。


最近多くて困る。



睡眠を十分に取れていないのか。

確かにあの家族の事がいつもいつも頭から離れないでいたのは間違いないが、こんなところで・・・。




シャヌア

「え・・・?」




辺りを見渡して唖然とした。


さっきまで目を離さないでいたロエ様が・・・いない!



そんな!



シャヌア

「くっ!!!」



すぐさま辺りを見渡す。


そこまで大きな町じゃないんだ、建物上から見上げれば!




シャヌア

「っ! ロエ様!!!!」



最悪だ・・・。


本当に最悪だ。



一体ご両親にどう顔向けすればいいんだ。


こんな・・・こんなことって・・・。




ロエ

「んっ!!んーーー!!!ん!!!」


「暴れんなこのくそガキがよ!!!!」




誘拐だ。


ロエ様が誘拐された。


私が一瞬気を許した隙にこんな事になるなんて・・・。




シャヌア

「・・・っっ! いたぁ・・・!!」



裏路地を走る人影、その両手には子供を抱えていた。



間違いない。



私は全力で術技を使い一気に駆け上がり男の進行する手前で着地し対峙する。




シャヌア

「そこまでだ! 大人しくロエ様を離せ!!」




体格から見て男・・・深く帽子を被っているようで顔までは見えない。


だがそんな事はどうでもいい。



剣を抜き更に警告する。





「へへ・・・へへへへ・・・」




薄気味悪い笑い声だ。


何を喜んでいるのかわらかない。



すると、片手で帽子を剥ぎ取った。




「まさかよぉ・・・またてめぇに会えるとはよぉ・・・!!!」


シャヌア

「お前は・・・あの時の盗賊か!」




あの鉱山でロエ様を人質に取っていた男か。


まさか・・・またこんな形、似たような形で対峙するはめになるなんてな。



「てめぇええが!!! 俺から全てを奪ったてめぇええが!!!」


シャヌア

「奪っただと? 何を奪ったというんだ」


「ふざけんなよぉおこのアマがあぁ・・・あの後盗賊団は上の連中に殺されかけて、俺は命からがら逃げて来て・・・もう俺には何もねぇんだよ、てめぇえがあの時邪魔さえしなきゃ・・・しなきゃよぉおぉぉ!!!!!」




錯乱しているのか。


もう目も血眼になっているのもわかる。


ヤバい・・・。




カランッ!




すぐさま私は剣を地面に落とした。


両手も上げ抵抗の意思がないことを証明した。



シャヌア

「私に恨みがあるなら私を好きにすればいいだろう」



「あぁあん?? あぁあ!!そうだな!!!」




ガァアアアン!!!




盗賊はロエ様片手で投げ捨てた。


幸いにも近くに捨ててあったゴミがクッションになってくれた。


だが・・・あんな幼い体じゃあ・・・。




「何処見てやがんだよぉ!!!!!」


シャヌア

「・・・っ!?」




男の拳が顔面に直撃する。


予想よりも重い、ふらつき視界が悪くなる。


ロエ様に気を取られてしまったばっかりに。




「まだまだこんなんじゃあぁ・・・よぉぉ!!! 俺の!!! 気が・・・!! 収まると・・・!! 思ってるの・・・かよ!! おらぁああ!!」


シャヌア

「ぐぅぅ・・・うぅう・・・ぁあ・・・」




何度も何度も顔面を殴り付けてくる。


最初の一撃が致命傷過ぎた。


男との距離もわからない、視界もタイミングもわからない。



このまま続けられると・・・本当に・・・。




「おらぁおらぁおらぁおらぁおらぁおらぁ!!! 威勢はどうしたんだよぉぉ!! てめぇええのよぉおお!!」





駄目だ・・・身体に力が入らない。


左右に殴られて立っているのがやっとなのに。


本当にこのまま続けられたら・・・。




ロエ

「やめろぉぉぉお!!!!」


シャヌア

「っ!!?」




ロエ・・・様!?


男の足に飛び付いてしがみ付く。


そんなことをしたら・・・。




「邪魔だガキィィイィ!!!!!!」


ロエ

「うぅぅ・・・!!!」




男の長い足が大きく振り払われ掴み続けることの出来なかったロエ様が振り解かされ宙を飛び壁へ激突してしまった。



それでも・・・。




ロエ

「はぁ・・・はぁはぁ、うおぉぉおぉお!!!!」


「邪魔なんだよぉぉお!!!!」


シャヌア

「ロエ・・・様!!」




掴みかかる前に蹴飛ばされる。


今度は地面へ叩きつけられる。




シャヌア

「っ・・・!」




それでも、どうして立ち上がろうと・・・!


なんで・・・!?




「ふふふ・・・おめぇえ! あの時と同じだなぁ!!?!?」




あの時・・・?


なんのこと・・・を・・・。






まさか・・・。







私は、こんな状況でやっとわかった・・・。



ご両親の・・・苦悩。


それは・・・ロエ様本人。





ロエ

「僕は・・・僕は、立派でな・・いと・・・いけな・・いから!」





なんてことだ・・・。


ロエ様に語る町の人間の言葉が脳裏に過る。




「流石はあのご当主のお子様だ」



「礼儀正しくてなんて素敵な子だ」



「ご立派なお子さんだ」



「正義感のある良い子ですな」



「とても、子供とは思えませんわ」





それは全て・・・呪いの言葉だ。




まだ小さいこの子には・・・呪いと同じ言葉なんだ。




立派・・・確かにそうだ・・・。



ロエ様は・・・。




限度を理解していない・・・!






「あぁー立派だぜ本当に、楽しませてくれるなぁあ、本当に・・・」




男が私に背を向けロエ様の方へ向う。


まずい・・・!




「先にてめぇえを殺してやるよ・・・そうすればあのアマもいい顔するかもしれねぇえしなぁああー!!!!!」



腰からナイフ・・・!




駄目・・・!


駄目!駄目・・・!!






「死ねぇぇええええ!!!!」


シャヌア

「だめぇええええー!!!」







背中に激痛が走る。


ナイフで斬られたんだ。



だけど・・・。




ロエ

「・・・ぁ・・・シャヌ・・・」


シャヌア

「・・・っ」




駄目だ。


ここで・・・ここで踏ん張らないと、ここで頑張らないで・・・。



どこで頑張るんだ!!!





「一緒にぶっ殺しtぶぅぅぅあぁあああ!!!!」




最後の力を振り絞って、私は仕込ませていた見えない蛇腹剣を起動させた。



上手く直撃して・・・よかった。


何処に入ったかはわからない・・・けど。




目が・・・霞む・・・まさかこのまま・・・。




ここにきてまさか・・・自分が・・・死




ロエ

「ヤダよぉぉ!!! 行かないで!!! お願い!!! シャヌアあぁあああああ!!!」





耳から・・・泣き声。


よかった、ロエ様は無事だ。


なら・・・。




ロエ

「お願いだよ・・・お願い!お願い!お願い!お願いやだやだやだやだぁあああ!!! 死なないでよ・・・行かないでよ!!! もっと!!!立派になるから・・・!!! もっともっとお利口になるから!!! お願いだよぉおぉ!!!」



シャヌア

「・・・・・・それは・・・」




駄目・・・。


駄目・・・みたいだ。



なんだろうか・・・ロエ様が・・・これ以上立派になられては、いけない。


私が・・・見守らないと・・・。



そんな身勝手な思いが私の身体を動かした。




これ以上・・・ロエ様に弱い自分を見せるわけには・・・。




強く・・・強く・・・見せなくては・・・!!!!




ロエ

「シャ・・・ヌア・・・」


シャヌア

「ふふ・・・これくらい、ちょこっと休んでただけですよ」




もう体中が痛みからかもう神経がぶっとんでるのかわからない。


それならそれでいい。



ロエ様の頭に手を当て安心させた。



そして立ち上がった。




強い私を見せなきゃいけない・・・。







「あぁ・・・もう・・・おしまいだ・・・もう・・・」




この場から立ち去ろうとした。

だが男は、気絶しているわけではなかった。


ただ・・・大の字で大空を見上げていた。




「もう・・・一思いに・・・」


シャヌア

「生言ってんじゃないよ!!!!」




私は怒鳴った。


何故か力が入ったドスの効いた声と汚い言葉を使っていた。


完全に理性がぶっとんでるのよくわかるくらいに。




シャヌア

「玉付いてんなら、何度も何度も挑んできなさいよぉぉお!!!」


「・・・は?」


シャヌア

「こんな汚ねぇえ真似しねぇえで、正々堂々かかってこいっていってんだよぉお!!!」




本当に・・・私はどうしちゃったんだろう。


頭がぐらんぐらんして歯止めが効かない。


実話これが私の本性とでも言うのかしら。



それとも・・・。



今までの欝憤が爆発でもしたのだろうか、溜まりに溜まった物が血液と共に飛び出しているんじゃないのか。




「お・・・お前・・・何を・・・」



シャヌア

「わたしは・・・いや、"あたいはシャヌア"!!! 逃げも隠れもしねぇえ!! この街にいる限りいつでもかかってこい!!!!」





そして、ロエ様の手を引いて・・・私は男を背にその場を去った・・・。







私は・・・どうしたんだろう。



重症だからか・・・もう何も考えられない。


今どこを歩いているのかもわからない、視界も本当にぼやけている。




ロエ

「シャヌアさん・・・ううん、シャヌア!!」


シャヌア

「はい・・・なんですか・・・若様!」


ロエ

「僕・・・シャヌアみたいに・・・ううんシャヌアよりもっとカッコよくなるよ、もっともっと頑張って・・・頑張って・・・!!!」





あぁ・・・若様の声が遠のいていく。



うっすらだけど・・・聞こえる。




ロエ

「だから・・・! シャヌアより強くなったら結婚して下さい!!!」





ロエ若様が一体何を言ったのかわからない。


けど私は・・・あたいはなんと返答したのだろう。



もう立っているかどうかもわからない・・・。




けど、なんだろうか・・・。




その時はもうどうでもよくなっていたようにも思う。



それもこれも彼のせいだ。



彼がこんなにも頑張るから。



あらゆる事から逃げてきた私と違って彼は・・・違った。


真似は出来ない。


少なくとも・・・この歳の時の私には出来ない。




いや、誰にでも真似出来ることじゃない。




そんな彼を本当に尊敬した。




私にはない全てを、こんな小さな体に宿していたのだから。





だけど・・・。




彼はあまりに危なっかしい。



誰かがそばについてあげなくちゃ・・・。




特等席は空いている・・・そこは、まだ空いている。




なら・・・少しだけ・・・少しだけ・・・。




ロエ様が心に決めた人が現れるまでの間・・・その間だけ。





座ってもいいですよね。










私は・・・あなたを好きになったのだから・・・。



ご愛読ありがとうございました。


本編で使わなかった理由としてはこれをただの昔話というだけで済ますにはもったいないと思いこの手法を取らせて頂きました。


これにて彼女の話は終了予定です。


ですが、まだ本編では彼女と彼の物語は続いております。

この二人が気になる方がいれば本編「二章 十二話」より登場し、現在進行形でお話しは続いておりますのでそちらから。


まだまだ慣れない若輩者ですがコメント、感想などあれば頂ければ今後の課題や勉強・・・それよりも励みになります。


そして朝7時には本編次話、二人も登場する話が投稿予定ですのそちらも是非とも宜しくお願い致します。

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