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4.悪役令嬢との下校

 隣を歩いている三千院黒薔薇さんぜんいんくろばらと言う少女は悪役令嬢と呼ばれている。彼女をそう言わしめるエピソードを知らない人間はこの学校にはいないだろう。

 例えば最も彼女の有名にしたのは入学初日に告白してきた男子生徒に「え、何であなたと私が付き合うと思ったの? 私とあなたが釣り合うと本気で思っているの? 病院を紹介してあげましょうか?」と言って振ったらしい。しかも、振られたその男子生徒があまりのショックに不登校になったというエピソードだろう。いや、入学初日で告白すんなよって思うし、振られたくらいで不登校になるなよ、メンヘラか? って思うが……その後も、鋼の意志で告白した男子生徒がいたようだが、そのことごとくがこっぴどく振られている。


 その他には、「三千院さん、勉強教えてよ」って話しかけてきた女子生徒に「勉強とは日々の積み重ねでしょう、あなたはよくそんなレベルでこの学校を合格したわね」と言い放ったり、「今月お金が無くてパンもたべれない」と言った生徒に「パンが無ければケーキを食べればいいじゃない」と言ったり、「金欠だー」って騒いでいる生徒の目の前で一万円札で作った扇を仰ぎながら「あー、すずしいわね、やっぱり一万円札はちがうわね」って言ったりさまざな噂がある。これらの噂が噂を呼んで「悪役令嬢」などと呼ばれるようになったのだ。いや、後半とか絶対嘘だと思うんだよね。だって性格悪いとかじゃなくて頭おかしいやつだもん。

 それに、実際黒薔薇と接しているとわかるが確かに口は悪いが性格はそこまで悪い奴ではないと思うのだが……



「何よ、人の顔をみて……どうせ、さっきのコスプレ似合わなかったとかいうつもりなんでしょう?」

「俺の性根はお前と違ってそんなに歪んでないよ!! それに色々惜しいが似合ってたと思うぞ」

「人間関係は鏡なのよ、私の性根が歪んでいるんじゃなくてあなたが歪んでいるからそうみえるんじゃない? コスプレをしているところを他の人にみられたのは初めてだから自信がないのよ」

「黒薔薇も弱気なところあるんだな。他人の目なんて気にしないと思ってたよ。」



 いや、こいつの場合は鏡自体が歪んでいるんだと思うんだよね、そんなこと言ったら罵倒されそうだから言わないけど。俺が思うにこいつのメンタルはかなり強い、そうでもなければ悪役令嬢などと呼ばれて気にしないで学校に来れるはずが無いのだ。

 悪役令嬢などと呼ばれている彼女は良くも悪くも注目されている。下校中の今ですらこっちをチラチラみて何やら言っているグループがいる。ひそひそと好奇心と悪意に満ちた言葉が聞こえる。

 待って、俺も同類扱いされてない? 「今、悪役令嬢とその下僕」っていったやつでてこいよ。喧嘩なら買うぞ!! せめて悪役令嬢とその主とかにしろよ。

 視線に気づくとジト目で黒薔薇が俺の方を睨んでいた。何やらご機嫌斜めなようだ。



「あんたね、私をなんだと思っているのよ……」

「悪役令嬢……」

「ああ!?」

「か弱くて、性格の良い、美しいお嬢様ですかね」



 俺は自分の身の危険を感じて即座に意見を変える。これが生きるための処世術だ。それにしてもこいつと一緒に帰るのは結構珍しい。同じ部活とは言え男女だしね。あいつも俺と噂をされるのはあんまりよくはないだろうと思う。俺? ぶっちゃけ三次元の女子には恋愛的な興味がないからどうでもいいんだよなぁ……



「私がどう思われているかなんて私が一番よく知っているわよ、でもね。だからと言って他人に媚びるのは違うと思うのよね……」

「それで友達ができなくてもか?」

「ええ、覚悟の上よ。だって本当の私を偽ってできた友達は、本当の友達と言えるのかしら。偽物何て私はいらないもの」



 彼女はそう言ってさっき俺たちを見て、ひそひそとこちらをみてしゃべっていたグループを睨みつけながら、唇をゆがめて笑った。すっげえ、悪役顔なんだけど……

 でも、そう言い切る彼女の目に迷いはなく、俺はカッコいいと思って見惚れてしまった。黒薔薇のいう事は一理あるが実行できるやつは少ない。学校という狭い世界だ。気の合わないやつとも話をあわせなけれいけないし、愛想笑いだってしなければならない。そうでもなければクラスで浮いてしまう。少なくとも俺はそうやって生きてきた。

 彼女の生き方は俺が思う以上に大変な事もあるのだろう。例えばただ、異性と歩くだけで変な噂をされる。他にも色々あるかもしれない。

 それでもその生き方を貫く姿は正直カッコいい。孤独ではなく孤高、群れるのではなく、媚びるわけではなく、三千院黒薔薇という少女はクラス内でも一定のポジションにいる。俺にも少しはそんな勇気があれば世界は変わるのかなとは思う。



「黒薔薇はかっこいいな」

「当たり前でしょう、私はかっこよくて美しいのよ」



 いや、そこまではいってねーけどな。でも、もしも……もしもだ。いつか彼女が俺と友達になりたいと思ってくれたらならそれは本心でそう思ったのだろうなとそう思う。


明日も同じくらいに投稿予定です。


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