11.悪役令嬢と鈍感クソ野郎
翌日の学校にて、昼になり騒がしい教室で、俺はいつも一緒にお昼を食べている友人に今日は一緒に食べれないと断りをいれてとある人物の席の前に向かう。
「黒薔薇ー、どうせ一人だろ。一緒に飯食おうぜ」
その一言にクラス中がざわっとした後、教室内を沈黙が支配する。俺に注目が集まる。やっべえ、なんなのこの視線の量、俺ってばモテ期がきちゃったかな? などと内心でおちゃらけなければやっていけない。これが黒薔薇の世界か、孤高なる悪役令嬢のポジションの世界だ。好奇の視線、一挙手一投足注目される環境。彼女は孤高という立場にいる代償に常にこのプレッシャーのなか生きているのだ。ああ、本当にかっこいいよ、黒薔薇はさ。
「あなた……何を考えているの? 私は『悪役令嬢』なのよ……」
「何って友達とお昼を食べたいなって思っているだけだよ。嫌ならいいけど」
もちろん、黒薔薇の言いたいことを俺はわかっている。だけどさ、俺は黒薔薇をみて思ったんだ。自分を貫くのはかっこいいな……だから俺もまねることにしたのだ。あいつのように俺はやりたいようにやろうと思ったのだ。俺は黒薔薇と友達として接したいから接することにしたんだよ。
「いいの? 私と仲良くするってことは……」
「わからないな、どうやら俺は『鈍感クソ野郎』らしいからな」
「本当に馬鹿ね」
俺の言葉に彼女は唇をゆがめて軽く笑う。いつもの悪役の笑い方だったけれどその目は本当にうれしそうだった。
「じゃあ、お言葉に甘えましょうか? ここは騒がしいし、部室でもいきましょう」
「オッケー、今日は弁当だけど、黒薔薇は?」
「私はコンビニで買ってきたから大丈夫よ」
俺達はそんな会話をしながら教室を出て部室へと向かう。すれ違った友人はガッツポーズでよくやったと言っていた。あれ、まさか俺がデートに誘ったみたいに思われてないよね? ただの友達なんだけど……でも誘った時の黒薔薇の顔は本当に嬉しそうで、勇気を出してよかったと思えた。
「そういえば昨日のアニメみた? ああいう武器も作ったりできるのかしら」
「ああ、サイトとかみれば結構のってるぞ。ほらよ」
俺は黒薔薇のラインにURLを送ってやる。彼女はそれに喰いつくように見始めて、これはどうすればいいとかそういう会話がしばらく続く。そして彼女は俺に再度お願いをするのであった。
「ねえ、よかったら今度一緒にイベントにいってくれないかしら」
「ああいいよ、どうせ暇だしな」
「ありがとう、大地。あの時偶然趣味がばれちゃったときはどう口止めをしようか迷っていたけど、それがきっかけで仲良くなれて本当に良かった」
俺の言葉に黒薔薇は花が咲くような笑顔で答えた。ああ、こんな笑顔みせられたらいけないなんていえねーよな……俺は新しくできた友人のために休日が消えるのを覚悟するのであった。そして俺は彼女とコスプレをすることになったのであった。
ちょっと短いですがこれで完結です。
いくつか伏線が放置されていますが、設定などを再度考え直して改訂版を作成する予定です。
ここまで読んでくださってありがとうございました。
評価や感想などいただけると嬉しいです。ここが楽しかった、ここが残念だったなどありましたら次回への参考にさせていただきます。




