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異世界に来てしまったようです。②



そこには、クラスメイト全員が倒れていた。目覚めたクラスメイト達は「何処だここ?」だとか「何よこれ?」とか次々と声をあげた。みんな慌ててスマホを確認するが電波は全く入っていない。

前方には果てしたく広がるジャングル、後方には広大な海が広がっていた。

クラスメイト全員パニック状態になっていた。

当たり前だ。突然こんな砂浜にいるのだ。落ち着いているのは俺ぐらいのものだろう。



「みんな!一旦落ち着こう」



そう言ったのはクラスの中心人物の姫島だった。



「気持ちはわかる。みんな同じだ。だか、一旦落ち着いて状況を整理しよう。俺たちはついさっきまで学校で授業を受けていた。そして、突然外が輝き、光に包まれ気が着いたらここに居た。俺の記憶ではこんな感じだが、これと違うと言う人はいるか?」



もちろん、その問いに手を挙げる者は居なかった。



「みんな俺と同じって事だな。ここが何処かは分からない。スマホの電波も来ていない。持ち物は全員スマホくらいしかないだろう。正直、状況は最悪と言わざるを得んな。何でこんな場所に飛ばされたとか言った話は後回しにして、これからどうするかを先に話そうか。選択肢は二つ。ここで、来るか分からない救助が来るのを待つか。そらとも、目の前のジャングルを抜け、住人を探して助けを求める。この二つだ。しいてもう一つ挙げるなら海を渡ると言う選択肢だが、これはまず不可能だし、二つ以上に絶望的だと思う」



それしかないだろう。皆がそう思った。不安そうな顔する者は多いが、どうしようもない事をみんな分かっているのだ。



「何故、こんな場所に突然飛ばされたのかは分からない。現実的にあり得ない事が起こった。それは事実だ。あくまでも推測だが、ここは日本ではないだろう」



姫島がそう言うと、周りが騒つく。

「嘘!」「そんなわけないだろ!」だのと、言い出す奴がいるが、俺からすれば「そんなわけあるだろ」と言う感じだ。

転移と言うあり得ない現象が起こっているのに、なぜ国内だと思える。可能性で言うならあり得ない話ではないが、日本にこんな場所は存在しない。日本ではないと言う事は必然的に国外。他国と言うことになる。

いや、そもそもここは俺たちの住んでいた世界かどうかもわからないのだ。

今の事態はそう言うレベルの話なのだ。

姫島も同じ様なことを説明するが、やはり動揺を隠せない者もいる。


時間が必要な生徒が多そうに見える。少し時間を置くことになった。

その間、余裕のある生徒で食べ物と水を探すことになった。

だが、この世界はすぐに信じたくない現実と最悪の精神攻撃を加えて来た。



「ちょっとあんた達!何してるのよ!」



砂浜で食べられそうな物を探していた女子生徒が半裸で海を泳ぐ三人男子生徒に叫んだ。



「何って、魚捕まえてやろうと思ってよ」



側から見ると、どう見ても遊んでいる様にしか見えない。



「遊んでる様にしか見えないんだけど、本当に捕まえられるの?」


「大丈夫だ!任せとけ!」



みんなあまり期待はしていなかった。

だが、悲劇はそれからすぐに起こった。

少し水深の深いところを泳いでいた。貝や海老を探す為、石をどかした時だった。



「うわっ」



水中だったからまともな声として発せられない。

どかした石の裏に穴があり、そこから大量のの魚が溢れ出し、男子生徒の身体にかぶりついた。

男子生徒の身体に痛みが走り、もがき暴れる。



「助けてくれっ!!!」



様子がおかしいのは砂浜に居る生徒にもすぐに分かった。



「何あれ?おぼれてるの?」



だが、彼が事切れるとはすぐだった。



「ギヤャャャャャャャア!!!痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い……」



痛いによる断末魔。

ブチブチと肉が食い千切られ、彼の周りの水は血で赤く染まっていく。

そして、数秒でもがく力を失い静かに沈んだ。



「お前らーーーッ!早く上がれーーッ!!」



姫島が叫び、他の二人も大急ぎで戻って来る。が、前触れも無く一人がスポンと海に吸い込まれた。



「ウワーーーッ!ウワーーーーーッ!!」



隣にいたクラスメイトが消えた。取り乱し、不細工に泳いだがその足を何かが掴んだ。



「うっ…」



そのまま海へ吸い込まれ、上がって来なくなった。



「……嘘」



唖然とその場にヘタリ込む女子生徒。



「何よこれ?何よこれ?!何よこれ!」



最悪の事態だ。

ここは確かに海だ。地球の海のこんな浅瀬に人間一人を引きずり込める様な生物が存在するか?


否。


俺たちは三人のクラスメイトを失い。ここが異世界である事を突き付けた。そしてこれは、助けが来ない事の証明に他ならない。


クラスは身動きが取れなくなった。


流石に火は必要という事なので、男連中で火を起こし、それを囲む様にして座っていた。

初めは騒いでいたが、夜には意気消沈していた。誰もが俯き落ち込んでいる。

そんな中、再び姫島が声をあげる。



「みんな、聞いてくれる。皆んなが話せる状態では無いのは分かっているが、話させてもらう。俺たちは今日、三人のクラスメイトを失った。この事件で俺たちが居るのは異世界である事がほぼ確定した。そして、この事助けが来る可能性はほぼゼロパーセントになった。俺たちに残された選択肢は一つになった。俺は明日にでも街を目指す」


「え?ちょっと待ってよう!そんな余裕無いわよ」


「そんな事分かっている」


「じゃあもう少し待ってよ!」


「食料的にも悠長に待ってはいられない。それと、俺はここの全員でジャングルを抜けるとは言ってない」



その言葉に、殆どのクラスメイトが驚き、一瞬意味がわからなかった。



「…それ、どういう事?自分だけでジャングルに入るって事?」


「いや、行けそうな奴を数人誘って行くつもりだ」


「…なによそれ?戦力にならない人はいらないぅてこと?!」


「まぁ、そうだな」


「姫島君それはあんまりじゃないの?」



憤怒し、突っかかる女子生徒。



「お前、何か勘違いしてないか?」


「何が!」


「俺はお前らの先生でも保護者でもないという事だ。なぜ俺がお前らの面倒を見ないといけない。もう、みんなで乗り越えよう何て甘い事、言ってられる状況じゃない。俺は俺が生き残る為に行動する。何か悪いか?」



その言葉に誰も言い返す事は出来たかった。

皆から勘違いしていた。彼は先生でも保護者でもない。俺たちと同じ一生徒。

柔道の大会で全国大会にも出場した事もある姫島。異世界で、ジャングルにどんな生物がいるかもわからない。三十二人という人数で、複数人足手まといが居たら、どれだけ戦闘スキルがあっても守りきれるわけがない。人数が多ければ多いほど生物との遭遇率もあがるし、三十二人分の水や食料も確保しきれない。


クラスメイトの頭では姫島の事を薄情という感情よりも、仕方ないという感情の方が強かったのだ。


夜が明け、姫島は自分を含め六人でジャングルへと入っていった。



「じゃあな、お前らも早く決めないと野垂れ死ぬぞ」



そう言い、姫島達はジャングルの中へ消えた。

そして、また一つ。また一つと、どんどん五人から七人のグループがジャングルの中へ消えて行く。

そして最後に俺を含め、六人のクラスメイトが残った。

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