異世界に来てしまったようです。①
「すいません!そっち行きましたっ!」
耳障りな奇声を上げながら、森を不細工に走る深緑の肌色の小人。
「任せろッ!」
小人の前に立ち塞がる革鎧を着た少年がきりかかる。攻撃は小人の身体を掠めた。
「浅いか!」
転がりコケる小人は進行方向を変え、必死に逃げる。だか、その逃げた先には、学生服を着た少年が立っている。
奇声を上げ、小人は学生服の少年へとボロボロの剣を抜き、切りかかった。
学生服の少年は表情一つ変えず、小人が剣を振り下ろし間も無く首を切り飛ばした。
頭部は血を撒き散らしながら転がり、身体も切り口からダラダラと血を流しながら、人形の様に崩れた。
「やったの?」
小人の死体に駆け寄る仲間たち。
「相変わらずすごいね。いつも一発」
深緑色の小人。これはいわゆるゴブリンと呼ばれるものだ。
俺たちは今、見知らぬ世界で冒険者をしている。
異世界と言う事はが適切だろう。
つい二ヶ月前まで学生をしていた俺たちがこんな事になるなんて思ってもいなかった。
一ヶ月前。
「……何してんだろ…俺」
小学生の頃、両親は交通事故で呆気なく死んだ。厳しかった父は「父さんの身体は銃弾だって受け止める事ができるんだぞ!」と、胸を張って言っていた。葬式の時にその言葉を思い出し、心の中で「簡単に死んでんじゃねぇよ…」何て思ったのを覚えている。
残った俺と妹は親戚達が初めは面倒を見てくれたが、良い顔はされず、中学生に上がってから親戚の家を出た。
そして、一年前、妹を息を引き取った。
家族を全て失った俺の世界は色褪せた。
待ってほしい俺を時間は待ってくれない。俺を置き去りに、時間どんどん進んで行く。
何となく高校を受けて、何となく受かった高校に通っていた。
一日、ぼんやり黒板を眺めて、帰宅。黒板を眺めて帰宅。この繰り返しだ。
「…あいつ、名前なんだっけ?」
先生に当てられ、教科書を読むクラスメイト相手に思う。俺はふと、窓の外へ目を向けた。
すると、足元が光った。
足元が紫色の光を放っていた。教室の床には魔法陣のような物があり、光はだんだん大きくなる。
「え、なに?」
クラスメイトが口々に声を上げる。
その光に目が眩み、俺たちはこの光な包まれた。
目を覚ますと、俺たちは見知らぬ砂浜に倒れていた。