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生物保護活動はじめました  作者: ノイズ
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手続きはじめました


「お、俺なんかで良ければ、その…是非お願いします!」


嬉しかった。

自分みたいななんの取り柄もないただの人間を、ホルンさんは迎え入れてくれるっていうんだ。

ぱっと立ち上がり大きく腰を折るようにして頭を下げ、右手をホルンさんに差し出しながらそう返答をする。


まるで告白をして、その答えを待つ人のような体勢だ。

実際の気持ちだって、それに負けず劣らずな感じではあるけれど。


「ふふっ…君って面白いね。じゃあ、よろしく。」


そっと俺の手をホルンさんが握ってくれる。

少しひんやりとしていて心地よい手だ。


「ありがとうございます!!!」


自分が思っていたよりも大きな声が出て少しびっくりしつつ、手を握り返す。

異世界でさっそく衣食住と素敵な上司を手に入れられた。

俺はなんて運がいいんだろう!!


「さ、座って。紅茶を飲み終えたらギルド加入の手続きを済ませてしまおう。」


にっこりと微笑むホルンさん。

優しそうでこっちまで肩の力が抜ける。

今までの上司って結構怖い顔した人だったせいか、余計に素敵な人だと感じる。


甘い果物の香りのする紅茶は味はそこまで甘過ぎなくてほっとする。

こんなオシャレなもの今まで見向きもしなかったってのに、既に俺の好きな飲み物ランキング上位に刺さってきてる。


「ギルドの加入はとっても簡単なんだ。用紙にギルドと自分の名前、ある程度の情報を記載して遺伝子の一部…髪の毛でいいかな。それを提出するだけだよ。」


「へぇー…履歴書とか、流石にいらないのか。」


「いや、加入希望者には事前のアポ取りと履歴書の提出をお願いしてるかな。」


おおう……そこは意外とファンタジー感少なめだな…。

そう思いながら紅茶を飲み終えるとホルンさんが1枚の紙を取り出してくれた。

普通のA4サイズに見える。

同時に万年筆も手渡してくれる。

紙には名前を書く欄とギルドを書く欄、その他年齢や誕生日、性別なんかの欄もある。

分かる範囲は借りた万年筆で記載していく。


「えっと、種族は…」


「人間でいいよ。…へぇ、オトハくんて27歳なんだ。」


「はい。…ホルンさんはもう少し上、ですか?」


紙を見た感じだと漢字の概念もあるようだ。

一応名前は漢字で書いて上にカタカナでフリガナを振った。

記載しながらホルンさんとのんびり話をする。


「うーん、もーっっと上、かな。僕の種族は長命なうえ、見た目の歳もある程度からとらなくなるんだ。」


「もしかして…エルフ、とか?」


「ふふ、詳しいね。正解だよ。」


ちらりと顔を上げる。

青紫色の髪から突き出ている長い耳、やっぱりあれはエルフ耳だったんだ。

本物が見られるなんて、数時間前には思いもしなかった。


「書けたみたいだね。…そういえばオトハくん。君の能力はもう分かっているの?」


能力といわれ思い出す。

そういえばあの袋を開けると能力が与えられるってフォルテが言ってたな。

まだわからないことを思い出し、少し悲しくなる。


「いえ。色々試したんですけど、まだ...」


「大丈夫。そんな顔しないで。遺伝子をギルドに送るとちゃんと調べてギルドカードに載せて貰えるからね。」


「えっ!!そうなんですか!?」


調べて貰えるの!?

石なんか殴らなくて良かったってこと!?

もう痛みはないがつい右手を撫でる。


「因みにだけど、能力は一人にひとつ、この世界に生まれた時に与えられるんだ。君は異世界人で能力がなかったからシルフが与えてくれたんだよ。」


「そ、そうなんですか...おれ、てっきり...」


「自分だけ特別だと思った?残念でした。」


ふふ、と笑うホルンさん。

能力が分かるのは嬉しいけど、てっきり自分だけの能力だと思っていたから...ちょっと残念な気もする…

でもまあ、普通なら得られない能力が手に入るってだけでも良しとしよう!

うん、すごく嬉しいことじゃないか!


俺が開き直っているうちにホルンさんが瓶を差し出してくれる。

透き通った綺麗なガラス瓶だ。


「ここに髪とその用紙を入れて。」


「はい!」


ぷつん、と1本の紙を引き抜く。

因みに俺はまだ白髪はない。

それから用紙をくるくると丸めてその瓶へと入れた。

ホルンさんがコルクを閉めてくれる。


「これでよし…こっちに来てごらん。」


ホルンさんが立ち上がったので俺もついて行く。

見ると部屋の壁に蛇口がついている。

そこから少量ずつ水が溢れていた。

その水は下にある貯水槽のようなものに溜まっている。

水は透き通っていて綺麗だ。

十分飲み水にも使えそうなくらい。


「ここに瓶を入れる。それからコインを投げ入れて……よし。オトハくん、手を入れてごらん。」


瓶もコインも水音を立てて沈んだ。

じっと揺れる水面を見つめているとホルンさんが笑う。

不思議に思いながらその中へ手を入れる。

冷たくて気持ちがいい……けど、あれ、


「え?瓶が……」


貯水槽の中で手を動かしても瓶にもコインにも触れられない。

そんなに深い貯水槽じゃないのに!

掻き回すように手を動かすが見つけられない。


「これも魔法、ですか?」


「魔法、なのかな。ギルド協会とこの水瓶は繋がっていてね。協会に送りたいものとコインを入れると協会にいる宝瓶宮という種族の人達が回収してくれるんだ。すごいよね。」


「へぇー!!」


宝瓶宮って…確か水瓶座のことだよな。

星座の種族もあるってことだよね。

ものすごい種類の種族がいるってことなのかな。


無事にギルド加入手続きも出来たことで、不安な気持ちは殆ど薄れているせいか、この世界に対する好奇心と感動で胸がいっぱいになっていた。

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