命の危機はじめました
「さあ、準備は出来たわ。あなたには2つの選択肢がある。進むか、戻るかよ。」
フォルテの言葉。
俺の心はもう決まっている。
静かにフォルテを見つめて頷いた。
「……いいわ。もう後戻りは出来ないんだからね。さぁ、これを受け取りなさい。」
フォルテが羽根帚をもう一度振るうと白い何かが現れた。
自然と俺の目の前まで降りてきたそれを受け取る。
これは布袋のようだ。
「これは?」
「冒険袋と呼ばれる袋よ。それを開けるとこの異世界のどこかに飛ばされる。そしてあなたに必要な能力がひとつだけ受け取れるの。」
そこまで言ってフォルテはくるりと回って見せる。半透明の羽が綺麗だ。
「さぁオトハ!私とはここでお別れよ!惜しむ気持ちは分かるけどその冒険袋を開けなさい!」
フォルテがウェーブのかかった髪をふわりと片手で払いながらそう言って俺から少し離れる。
知り合いのいない、チュートリアルのない世界に飛び立つんだ。
フォルテに片手を振って笑ってみせる。
「ありがとう!……じゃあ、また!」
フォルテはお別れと言ったが、きっとどこかでまた会える。
そんな思いでそう告げて布袋を開く。
微かに視界に微笑んで手を振る妖精がみえたが、すぐに世界が真っ白になった。
「っ……ここは…」
白い光が消えるとそこは森のような場所だった。
さっきの草原とは少し違い、木々も多い。
でもそこまで高い木は見当たらない。日差しがしっかり入ってきている。
ふと片手に残った冒険袋を見ると中身は空っぽだった。
「ただの白い袋にしか見えないけどな…」
そういえばフォルテの話通りだと能力がひとつ手に入ったんだった。
体にはなんの変化もないし今のところどんな能力かは分からない。
「色々試すか。」
わけのわからない世界を生き抜くんだし、自分の能力を知っておいた方がいいはず。
まずは走ってみる。それからジャンプをしてみたり、木を登ってみた。
「すごい!こんなに高く飛べんのか!」
とにかく体が軽い。
最初はスーツから服になったことで動きやすくなっただけかと思ったがどうやら違うような気がする。
ただこれが能力ってわけでもなさそうな、そんなレベルの話だ。
「か、体が軽くなったとはいえ、急の運動は、キツイ……体力とかじゃなさそう、だな…」
多少は動きやすさを感じるがこれはさっきのフォルテの魔法によるものなのかな?
息が切れる…さすがにしんどいな……
今度はぐっと拳を作って岩を殴ってみたが…
「い"ってええ!!!」
普通に痛い!
腕力でもないらしい!
真っ赤になった俺の大事な相棒でもあり恋人でもある右手をそっと撫でる。
思い切り殴ったつもりだったがそこまで大怪我でもないし、大丈夫だと思う。
「……おい。ここは私有地だ。」
不意に後ろから声がして振り返ると目前に何やら金属物。
見慣れないそれをよく見てみると向けられているのは銃口だった。
体に緊張が走りぱっと両手を挙げる。
もしかして、トリップ早々大ピンチ?