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第四話 圧倒的力量

 雷、火、水、氷、岩、他にも様々な種類の魔法が飛び交う。流石実力主義の学校とだけあって多種多様、威力もなかなか強そうなものばかりだ。伊達に入学してきたわけじゃないらしい。でもこれもし傷つけても誰が傷つけたとか本当に分かるのか……。


 フラミィも魔法を行使するのかなと思い目を向けてみると、吟味するかのように俺同様この光景を眺めているだけだった。


 少しの間魔法の嵐で舞台上の様子が分からなかったが、やがて生徒の魔力も尽きてきたのか嵐は弱まり、やがて完全に消え去ると、焦げ付き凍り付き砕かれボロボロになった舞台の姿があった。


 だが、その光景とは不釣り合いに、教頭の装いは整ったものだった。何事も無かったかのように悠然とこちらを眺めている。


 どうやって避けたのかは分からないが、あの殺戮の嵐を受けてもなおある余裕ぶりは流石としか言いようがなかった。


「なるほど、君たちは素晴らしい腕をお持ちのようだ。我々教師陣としても非常に鼻が高い」


 よくもまぁ無傷でいけしゃあしゃあと……。

 呆れていると、ふと横でパキポキと子気味の良い音が聞こえる。


 見てみれば、立ち上がったフラミィが虚空から一対の紅いダガーを取り出し、慣れた手つきで逆手に持った。


「お、行くのか」

「ま、卒業云々はさておき、小手調べにな」


 問うと、挑戦的な笑みを浮かべ、フラミィが飛翔する。


「直接攻撃はどう対処すんだ教頭先生よぉ!」


 フラミィが吠え、舞台へ到達。同時に斬撃を教頭へと打ち込むと、教頭を両断。攻撃が入った事に講堂内がざわつく。


 まさかやったのか? と思われた矢先。斬られた教頭の姿は水に溶けだす絵の具のように霧散する。


 何があったのかと目をこすると、気付けば教頭はフラミィから少し離れたところで佇んでいた。


 フラミィは即座に反応。踏み込むと、再度現れた教頭に紅の一閃。しかし教頭は霧散。フラミィの背後にふらりと霧散した残像が集まり、教頭の姿を形成する。勿論傷一つない。


 フラミィの苛立たし気な素早い刺突。同じく、霧散。するとさらに教頭は距離を置いて姿を現す。だがそれは読んでいたのか、すかさずフラミィはもう一方のダガーを突き出し、紅蓮を教頭めがけて放った。


 これは対処できないだろう。誰もがそう思ったかもしれないが、大量の炎は見えざる壁に阻まれ、全て受け流されていた。物理攻撃を躱すあの奇妙な魔法は聞いた事ないが、炎を防いだ方は恐らく魔法反射(リフレク)という奴なのだろう。魔法使いが魔法使いに対抗するために編み出された魔法らしく、どれほどの魔法を無効化できるのか、あるいは素早く発動できるのかは術者の技能による。あの速さであの量を無効化するという事はやはり教頭はかなりの手練れなのだろう。


 フラミィもそれを悟ったのか、しばらく教頭と対峙していたが、やがて諦めた様に手をあげダガーを虚空に収めると、こちらに向けて歩いてくる。


「魔法だけではなく体術も申し分ない。彼女に拍手を!」


 もはや嫌味にすら聞こえてくる教頭の講評にフラミィが手だけあげて答えると、軽い拍手が起こる。


「ったく参ったね。流石啖呵を切るだけあるぜあの教頭」


 ふいーとお疲れなのかため息をつくと、フラミィは椅子に深々と沈む。


「やっぱり強いなフラミィ」

「んな事ねーよ。それより、クロヤは行かねーのか?」

「行かない。どうせ勝てないからな」


 答えると、フラミィがぽつりと呟く。


「どうせ、か」


 この短い言葉にどういう意味が含まれているのかは分からないが、もしかしたら失望させたのかもしれない。でもまぁ修練した刀剣術は俺のためにあるわけじゃないからな。俺が失望されたところで構う事は一つもない。

 腰に差している愛刀の重みを確かめていると、フラミィが椅子に沈めていた身体を「よっ」と正す。


「俺としては魔法の使えねー奴がどんな戦いをするのか見てみたかったんだけどな」

「そんな大層なもんじゃない」

「まさか。この学院に入ってきた時点でクロヤが強い事くらい予想できるぜ。ついでに並外れた何かがあるんじゃないかって勘ぐってるところさ」


 強いという言葉が重く肩にのしかかる。何故なら俺は弱い。途方もなく弱いからだ。確かに入学にあたって、難関と言われている実技試験は受けたが、別段少しこわもての生き物を倒すくらいで苦労は無かった。


「強い、か。残念ながら俺は弱い。買いかぶりだよ」

「本当にそうかねぇ?」


 ねっとりとした視線を向けてくるフラミィだが、とりあえず良しとしたのか舞台の方を向き直る。


 その後、教頭が退場すると、別の教師が現れ学院で生活するにあたっての諸注意等を話し解散となった。


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