ルースミア、魔王城に戻る
今回短いです。
やれやれ、急ごしらえで作られていそうな世界だとはいえ綻びだらけだ。
だがこれを創造神が作ったとは思えないほど作りがちゃちすぎないだろうか?
他にも何かあるのか? それとも……
考え事をしていると、満面の笑みを浮かべながらイザベルがアルマダで斬りかかってきた。
「フンッ!」
イザベルを殴り飛ばす。
謁見の間の高い天井まで吹っ飛び、そこでグシャッと潰れたような音が聞こえ、そのまま床に落下して再度グシャッという音が聞こえる。
「イ……イザベル……」
這うようにホセ・イグナシオ=ルリがイザベルだった物のところへ向かいだす。
「おい、ホセ・イグナシオ=ルリ。 貴様それ以上それに近づくと貴様も死ぬぞ?」
潰れて肉塊となったはずのイザベル。 だがその肉塊が我の言葉に反応して動き出す。
「ヒッ! ヒィィィィィィィィィッ!」
「なっ……なんだコレは……」
グニョグニョと肉の塊が起きあがり、なんとも形容しがたいおどろおどろしい姿と変わり、そのあまりの禍々しさに、すっかり忘れていた皇帝に呼ばれて来た男は狂気に陥る。
「……なるほど、すでに貴様らが動き出していたのか」
「すでに? どういうことなんだ!?」
「話は後だ。 先にこいつから始末する」
イザベルだった肉塊はなんとなく人の形はしているが目も鼻も無く、ただ口だけが大きく開いていてゲッゲッゲッと笑い声をあげている。
「奴らの下僕程度が図にのるな!」
サッサとこいつを仕留めて魔王城に戻らねば。
カルたちではこいつらを見ただけで狂気に陥ってしまう。 魔王は大丈夫だろうが、我が守護7魔将のうちの2匹と兵たちを殺してしまったからな。
こいつら相手にパワーセーブの必要はない。
「グゲゲゲゲゲゲゲーーーーー!」
飛びかかってきたところをリストブレードでめちゃくちゃに斬りつけてバラバラにしてやる。
バラバラにしても肉片1つ1つがびくびく蠢き、1つに集まろうとする。
「火球」
そこへトドメに火球で燃やしてやれば再生もできまい。
少しだけ様子を見て完全に動かなくなったのを確認した後、我は魔王城に向かおうとした。
「ま、待ってくれ。 後で説明してくれるんじゃなかったのか?」
「後と言ったが、こいつの後じゃない。 魔王城に向かった連中を始末した後だ」
ホセ・イグナシオ=ルリが何かを言っていたが、今は一刻の猶予もない。
謁見の間の壁を殴って破壊し、外が見えるようになったところで本来の姿に戻る。
ビリビリと破れる音で服が破れたのに気がついたが、気にしている暇もなく魔王城に向けて羽ばたいた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
壁に穴が空いた謁見の間にぽつんと残されたホセ・イグナシオ=ルリは呪いのせいで力なくルースミアを見送る。
そんな状況の中、物陰から人影が現れて床に落ちていたアルマダを手にした。
「やったぞ! 僕はアルマダを手に入れた! これで僕は本物の勇者だ!」
「何を言っている! それ私の剣だぞ!」
「立つこともおぼつかないあなたにこの剣は相応しくはないですよね? だから僕が使ってあげますよ」
ホセ・イグナシオ=ルリが激痛が走る中、無理をして立ち上がりサンドロ=アルベスに近づいていく。
「返すんだ」
「じゃあ返しますねっ!」
「なっ……」
サンドロ=アルベスが手に持ったアルマダでホセ・イグナシオ=ルリの胸を貫いた。
「ちゃんと返しましたよ? あれ? どうかしましたか?」
「き、さま……」
「早く死んじゃってくださいよ。 誰か来たら犯人が僕だってバレちゃうじゃないですか」
「くっ……ラ、ラヒー」
「させませんよそんな事! サッサと死んじゃえ! 死んじゃえ! 死んじゃえばいいんだ!」
サンドロ=アルベスがアルマダで何度も何度もホセ・イグナシオ=ルリを突き刺す。
「ん? 動かなくなった。 死んだかな?」
サンドロ=アルベスはアルマダで動かなくなったホセ・イグナシオ=ルリを何度かつつく。
「ははっはははははは! これでアルマダは僕のものだ! あとはティアだ。 ティア待ってるんだよ、今すぐに行くからね」
笑いながらサンドロ=アルベスが謁見の間から去っていく。
中には皇帝とホセ・イグナシオ=ルリとイザベルだったものの亡骸が横たわり、それを狂気に陥った者が眺めていた。




