魔王城
これで邪魔をするものはいなくなったな。
「おい、貴様らさっさと行くぞ」
む? カルたちの様子がおかしい。 先ほどの魔法はカルたちに影響を及ぼさなかったはずだが……
「……今の魔法何?」
クリストだけは目を輝かせながら我に聞いてくる。
「ティルト何とかとかいう核融合爆発の魔法だ。 おそらくこいつを使えるのは我だけだろう」
「……核融合?」
「貴様に説明してもおそらく理解できん」
残念そうな顔を浮かべるクリストは放っておき、今も呆然としているカルとアルバールとティアの顔を軽く引っ叩いて引き戻してやる。
「っは!?」
「っほ!?」
「はうっ!?」
我に返ったようだ。
「さっさと行くぞ」
3人は我の後をついてくるが、その足取りは遅い。 元気なのはクリストだけだ。
とりあえずついてきているのならいいか。
さて……ここまで派手にやったというのに魔王が出てこないということは、アレからまだ戻っていないと推測するのが正しいだろうな。
となれば、今の我は侵入者としてしか見られていないというわけか。
魔王城の門の前まで着くと、また中から懲りない愚か者が姿を見せる。
ほぉ……今度はストームジャイアントか。
「りょ、両手剣が片手剣に見えるぞ」
「貴様らは下がっていろ。 どうやら我が狙いのようだ」
カルたちをその場に残して我だけでストームジャイアントの側まで近づく。
「貴様も守護7魔将とかいう連中の1人か?」
……返事がない、シカトするとはいい度胸だ。
こういう輩は己の力に絶対な自信があるのだろうが……
クイクイとかかって来いと手で合図してやる。
直後にストームジャイアントが吠えながら両の手に持つグレートソードで我に斬りかかってくる。
一方の剣は我の腹を狙い、もう一方で首を落としにくるが、我は一切避けずに受けてやる事にした。
ドスンと音がして剣が止まる。 我に当たった剣は我の腹も首も斬ることなくそこで止まった。
僅かに血の匂いがするから皮膚ぐらいは切れたのだろう。
「ふん、ストームジャイアントだから多少は期待したが……期待はずれもいいところだったな」
「う、あ……あああ……」
なんだ、喋れるんじゃないか?
「では次はこちらの番だな?」
「あ、あああぁぁぁぁぁぁぁぁあ!」
なっ! 逃げだしただとぉぉぉ!
「待て貴様! それでもストームジャイアントかぁっ!」
己……我を斬りつけておいて逃げ出すとは……
「ルーちゃん、今の受けて何ともないの?」
「ん? ああ、僅かだが血が出たようだな」
「どういう体してんだよ!」
「そんなこと言われてもあの程度の武器じゃ我は殺せんぞ?」
我を傷つけたければ、最上位精霊でも宿らせた武器でも使わねば無理だ。
まぁ何はともあれ魔王の城には入れた。 あとは魔王が来るのを待っていればいいだろう。
「貴様ら行くぞ」
なんとも微妙な顔をしながらカルたちがついてきている。
「どうした?」
「いや、ルースミアが強いっていうのはわかっていたが……なぁ?」
「うむ、ここまで桁外れじゃとは思わんかったわい」
「私なんかルーちゃん避けないから死んじゃうっておもったんだよ?」
「……ウンウン」
確かにストームジャイアントといえば最上位精霊に匹敵するとは聞いている。 だがそう言われているだけで、あくまで人種の感想でしかない。
しかしそれにしても魔王城は広い。
歩けど歩けど一向に誰とも会わない。
「ルースミア、ここは俺に任せてはくれないか?」
我が適当に歩いていたからだろう。 カルが任せるように言ってくる。 なので任せてみると、床を調べ出しはじめて後戻りをはじめた。
「ここには足跡がないから、どこかに隠し通路か何かがあったんだと思う」
そうか、カルはローグだと言っていたから追跡能力があるのか。
隊列が変わり、今度は先頭をカルが行き、続いてアルバール、ティア、クリストの順に歩きはじめ、我が最後尾についた。
結構な距離を戻り、気がつけば魔王城の入り口が見えてくる。
そこに来てやっとカルが方向を変えた。
「こっちに走って行った足跡がある」
そうして進んでいくと行き止まった場所にたどり着く。
「どうした?」
「いや、足跡がこの先に続いているんだが……」
その先は当然壁になっている。
壁に触れてみるがシークレットドアの類でもない。 となれば……
「フンッ!」
我が殴ってみるとガラガラっと壁は崩れて先に道が続いていて、そこからが大変だった……
どうやらあのバカ魔王は城の中に礼拝堂やら錬金研究棟、時計塔に地下墓地とまるで何かを模して作ったような迷宮のような作りになっていた。
おかげであっちへ行ったりこっちへ行ったりと迷いに迷わされる羽目になる。
だが1つだけ役立つ事もあった。
出てくる魔物も雑魚が多かった。 そのためカルたちも戦うと言いだしたため任せたのだが、多種多様な魔物との戦いのおかげで最上階の魔王のいる場所にたどり着く頃には、なかなかいい動きを見せるようにまでなった。
仕掛けやらも豊富に用意されていて、実に3日ほどはかかっただろう。
途中、腹が減る事もあったが何故か宝箱から暖かい食事が出てくることがある。 そのため空腹に悩まされることはなく、むしろ全員満足できたほどだ。
そしてやっと魔王とその配下である守護7魔将も勢ぞろいしている場所まできたわけだ。
更新遅くなってすみません。
今回初の同時進行で2本の小説を書いてみて、他の作者さんは凄いなぁと思いながら書いています(;^_^A
最低週1ペースで更新頑張りますので宜しくお願いします。
まだ詳しく書けませんが、このルースミアの話ともう一つの書いているサハラの話には繋がりがあったりなかったり……




