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ルースミア、ビッチと別れる

 やっと一段落したか。 しかしまさかこんなバカっぽい奴が我が眷属だとは……

 これなら【闘争の神レフィクル】の元にいた竜の血を引く獣人の方がよほどドラゴンらしかったわ。

 ともあれこれでコイツに聞けば魔王のところまで行けるだろう。



「おい貴様、魔王の住処に案内しろ」

「ちょっとそれは無理なんですけどぉ」

「何故だ」

「ルースミア様には従いますけどぉ、魔王様は裏切れないんですぅ」


 いちいちイラつく物言いする奴だ。 だが、我に従うが魔王は裏切れないとはどういう事だ?


「だって、あたし魔王様の事を愛してるんですものぉ〜」


 ……確実にビッチは貴様だな。 コイツは間違いなく竜族の恥だ。


「さっきまでカルの事を(つがい)にするだ、交尾するだ言っとったと思うんじゃが」

「……ウンウン」

「うん? 言ったけどなんか文句あるわけぇ?」

「俺は了承してない!」

「あんたに決定権なんてな〜いの! あたしの物って言ったらあたしの物なわけよ、分かったぁ?」




 そこからはしばらくブラックドラゴン……アーリーだったか、と、カルたちで言い合っている。



「ルーちゃん止めないでいいの?」

「貴様こそいいのか? カルの事を好いてるのだろ?」

「う……そ、そうだけど、カルは私の事は仲間としか見てないよ」


 どう見てもお互いに好き合ってるというのに面倒な奴らだ。

 しかしさすがにこのままというわけにもいくまい……



「おいアーリー、そろそろいい加減にして案内はしないでいいから魔王の居場所を教えろ。 そうしたら我が1人で行ってくる」

「それも絶対ダメですぅ、言えませ〜ん」


 おのれ……

 ならばどうする。 何か手は無いものか……



「ルースミア、1度帝都に戻らないか? 急いで用意したからルースミアとアーリーの分も入れると、食料の残りが引き返す分ぐらいで無くなりそうだ」

「人間如きがルースミア様を呼び捨てとかありえないんですけどぉ?」

「貴様は黙っていろ!」

「ヒャい!」



 さてどうするか? カルたちだけで帰らせて我は元の姿で上空から探す……はダメだな、守護7魔将とかいうリッチもブラックドラゴンのアーリーもたかだか知れた程度だ、魔王が我を警戒して出てこないかもしれん。


 ではこのまま帝都に戻った場合はどうなる? 魔王が新たに軍勢を率いて襲いかかってくるかもしれないが、こちらも我の存在を知った以上警戒してくるはずだ。


 かといってこのまま無闇に探すのも愚かな行為だろう。 それに人の形をしていると人種のようにエネルギーが必要になる。



「ねぇルーちゃん、町に戻ってソーイングセット使えばその人形も治せるよ?」


 考えあぐねている我に願ったり叶ったりなことをティアが言ってきた。


「よし、戻ろう!」


 それなら迷う選択などなに1つ無い!


「ブワッハハハハハッ! そういうところはルースミアらしいわい!」



 そんなわけで帝都に戻る事に決まったのだが、アーリーが動こうとしない。


「アーリー、貴様も一緒に来い!」

「え〜、あたし守護7魔将なんですけどぉ……」

「言わなきゃ問題ない!」

「ルースミア様、超強引過ぎですぅ」


 ん……待てよ、ここでアーリーを魔王の元に返せば我に会う気になるかもしれん。


「わかった、貴様は魔王の元に戻れ。 そして魔王に我に会いに来いと伝えろ」

「一応伝えておきますけどぉ、会わないかもしれませんよぉ〜?」

「それならばそれで構わん」


 その時は、それ相応の覚悟をしてもらうだけだな。


「ルーちゃん顔が凄く悪い顔になってるよ」


 おっと、つい顔に出てしまったか。


 アーリーは我の顔を見てじょば〜っと小便を漏らしていた。



 小便を漏らしたアーリーとはここで別れ、我はカルたちと帝都に引き返す事にした。

 わざと会う術を言わなかったが、会う気があるのなら果たしてどのようにして我の前に姿を見せるか見ものだ。





 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 帝都に引き返す途中でカルが進路を変えていく。 そのまま北に行けば着くところを北西に進路を変えていた。

 その理由は帝国に怪しまれないようにするためだそうだ。


「冒険者ギルドで南門から出る必要のある依頼を受けておいたんだ。 少しキツい依頼なんだが、ルースミアがいれば大丈夫だろうとね?」

「つまり討伐の依頼という奴か」


 カルが頷いて返してきた。

 カルたちで達成できなくもないらしいが詳細に不明な点が多く、受ける冒険者が少なかったものらしい。


「もしやその依頼とはアレか?」

「……そうだ、オーガ討伐だよ」

「ちょっと待ってカル、それって確か一団だって話だったわよね?」

「ああ、運が悪けりゃ10体以上いるかもしれない」

「……絶対無理」

「でもこっちにはルースミアがいる。 利用するようで悪いが協力してほしい」


 カルがそう言って頭を下げてきた。

 たかだかオーガ程度、我からすればどうということは無い。


「理由がわかったから構わんぞ? むしろ貴様らは邪魔だから離れた場所で見てればいい」

「いやぁ……それはさすがに……」

「1〜2体ぐらいは儂らにも殺らせてもらわんと申し訳がたたんわい」

「……ウンウン」



 目的の場所へ移動していくと小高い丘がある場所だった。

 人種よりも遠くを見渡せる竜眼で見て見ると、オーガの姿が2体見え、ダイアウルフも5匹ほど姿が見える。


「オーガが2体にダイアウルフも5匹ほどいるな」

「なんじゃと! ちゅうかなんちゅう視力しとるんじゃ」

「もっといるかもしれない、風下から行こう」


 あの程度真正面からでもなんとも無いのだがな……


 移動しようとした時、人影が現れて立ちふさがってきた。



「待っていましたよ。 あなたたちのせいで僕の名誉が地に堕ちたんです。 その責任を取ってもらいます!」


 サンドロ=アルベス……元勇者か。

 自分で落とした名誉を人のせいにするとは、落ちるところまで落ちたな。


「違う! あなたが虚偽の報告をしたからで、私たちのせいじゃないわ!」

「やぁティアじゃないですか。 君はこんな奴らといたらダメです。 ティア、僕と一緒に人生を歩みましょう」


 狂ったか。


「サンドロ、俺たちを殺す気か?」

「だって、自害なんてしてくれないでしょう?」

「当たり前じゃ! 儂らはなんも悪くはないわい!」


 サンドロは話し合う気はないようだ。 剣を抜いて構えてくるなりカルに斬りかかってくる。

 初めて見るが剣筋は確かにカルたちよりも良さそうにみえる。

 カルも剣を抜いて初撃こそ受け止めはしたが、2撃3撃と攻撃されるとすぐに押されだし、アルバールも斧を手に助けに加わった。

 2人掛かりでサンドロ=アルベスと応戦するが、実力差がハッキリするほどでクリストは魔術を使うか迷っている。


 そうこうしている間に凶刃がカルを斬り裂こうとしてきた。 だがそれは囮で斧を思い切り振り上げていたアルバールに向く。


「しもうた!」

「アルバール!」


 振り上げきっていたアルバールの隙だらけの胴にサンドロ=アルベスの剣が届こうとしたため、我が引っ張って押し除けた。


「確かに貴様らでは無理なようだ。 我が相手をする」




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