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ルースミアとビッチ

 人の形に戻る。

 リストブレードが元どおり腕にはまっていた。


 ……これがシャリーの呪いか。 どういう原理かわからんが失くしたり壊れたりしないで済むようだ。

 だが……勝手にやったことに感謝などしないからな。



「うおっ!」

「むほぉ!」

「……あうあう」

「ルーちゃん裸! って、コラー! 3人は目を閉じてなさーい!」


 ティアに言われて見るとリストブレード以外は元の姿に戻った時に破れたようだ。

 そういえば……『俺以外の異性の相手に裸を見せたらダメだぞ』と言っていたな。


「『不可視化(インヴィジビリティ)』」


 これで見えなくなったのだからよかろう。



「ルースミアが消えた!」

「なんじゃと!? ほ、本当じゃ!」

「……魔法?」

「カル! 目を閉じてなさいって言ったでしょ! で、ルーちゃんどこにいるの?」

「さっきと同じ場所にいる。 姿を消す『不可視化(インヴィジビリティ)』の魔法だ」



 どうもこの次元の魔術は戦闘に特化されたものばかりに思える。

 魔法が不可能を可能にする力だとすれば、魔術は作り出せなくはない武器の様に思える。 例えば、(つがい)の元いた世界なら重火器というものがあった。



「ルーちゃん、私のだけどコレ、着れたら着てみて」

「うむ」



 着替えが済ませ『不可視化(インヴィジビリティ)』の魔法を解く。


「あ、似合ってる似合ってる! ルーちゃん可愛いよ。 それにしても魔法って本当になんでもできるのね」

「おお! ティアより胸も尻もあるわい!」

「どうせ私は胸もお尻もぺったんこですよ〜だ!」

「……可愛い」



 ティアの寄越した服はシャツとジャンパースカートで、長さも膝よりも上のため随分とスースーする。 何よりもふんどしの様な下着が非常にはき心地が悪い。 そしてシャツは半袖のため、折りたたまれたリストブレードが手甲のように丸出しになってしまった。



 魔法を勘違いしているようだが、確かに魔法とはあらゆる事象を起こせる。 だがそのためにはそれ相応の魔力も必要になるし、ほんらい人種が魔法を使うには魔法の詠唱とそれを発動するための発動詠唱が必要になってくる。 その詠唱は難しいものになれば長くなる為隙も大きくなる。 加えて魔法は充分に休んだ後に使うであろう魔法を記憶しておかねば使えないから臨機応変が効かないものだ。 もっとも例外もあるがそれは今はいいだろう。

 もちろん擬似魔法を使う我は例外なのだがな。


 それに対してクリストが使った魔術を見た限りでは、詠唱も必要ないし使用回数も制限もなさそうだ。 どんな種類があるのかはわからないが、戦いに限って言えば魔術の方が便利に思える。





 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 さて、ボロボロになったのに加えて泥まみれになってしまったネズミーの人形を服にくくりつけたところで、いまだに潰れたトカゲのようになっているブラックドラゴンの顔の前まで行く。


「フンッ!」


 容赦なく横っ面を蹴っ飛ばす。


 顔をけられた痛みでゆっくりと目を開けたブラックドラゴンが、我を見るなり叫ぼうとするから声が出ないように口を踏みつけた。


「ギャー! ブッ……」

「次にギャーギャー騒いだらその舌を引っこ抜くぞ?」


 半ば地面に埋もれたブラックドラゴンが顔を地面に擦り付けながら頷いたから足をどけてやった。


 すっかり子犬のように大人しくなったブラックドラゴンが、仰向けになって服従のポーズを取ってくきた。


「あ、あなた様は一体……」

「違う! まずはこの我をビッチ呼ばわりした謝罪からだろう!」

「は、はいぃ! 申し訳ありませんでした!」

「まぁ良かろう、我は貴様ら竜族の神格であるルースミアだ」


 ここでもまた神がわからないとでも言うように顔を傾げた。


「この次元では竜族までもがコレか……まぁいい、とりあえず貴様も人の形をしろ、それぐらい成竜なら出来るだろう?」

「普段は人型になってるんで、できますぅ」


 ブラックドラゴンの姿が消えて人種の雌の姿になる。

 ブラックドラゴンだけに、肌は褐色で髪の毛は茶色をしている。



「うおぉ!」

「またもや裸じゃぁあぁぁ!」

「……ハウハウ」


 そんな3人にティアはさすがに呆れた様子を見せながらも、直接ではなく我に別の服を渡してくる。

 今度渡されたのは、緑のワンピースでいかにもエルフらしい服だ。


「おい、コレにさっさと着替えろ」

「え〜……あたし的には緑よりも黒の方が似合うと思うしぃ、良かったんですけどぉ」

「つべこべ言わずにさっさと着替えろ!」

「は、はいぃぃ!」


 着替えが済んだはいいが、やれ胸がキツイだ、センスが悪いだとかグチグチと口にする度にティアの眉がピクピクしていた。


「ティアの胸が小さいじゃとよ!」

「……センス無い?」

「そうか? 俺はいいと思うけどなぁ」




 ……で、


「つ、つまりルースミア様はあたしたちの、えーっとぉ? 親? って事なんですかぁ?」

「我が貴様の親な訳ないわ!」


 まったくもって神がいない世界で神というものを教えるというのは難しいものだ。

 何はともあれ理解できたかわからんが、我に従うことにしたようだ。


「それでぇ、ルースミア様はなんで人の味方になんかついてるですかぁ?」

「我が元いた次元に帰る為の手伝いをしてもらうからだ」

「え〜〜! 帰っちゃうんですかぁ!?」

「無論だ、我を待っている(つがい)がいる」

「キャ〜! ルースミア様には伴侶がいらっしゃるんですねぇ? きっと素敵なドラゴンなんですよね? ね!」

「ドラゴンではない、人種だ」

「え……ぶっちゃけマジありえないんですけどぉ〜」

「貴様のような奴には生涯かかっても分かるまい」

「そ、そんな事ないですぅ。 あたしだって……」



 そこで視線をカルたちの方へ移し、そちらに近づきだした。


「ねぇ、そこの人間」

「お、俺か?」

「そう、あたしの(つがい)にしてあげる」

「は!? え? ちょっ、そ、それは困る」

「お前に拒否権なんて無いんですけどぉ〜? それにあたしと交尾できるのに嫌がるとかマジ分からないんですけどぉ?」

「こ、交尾!? い、いや、俺には……」

「いい加減にしろ! 貴様には竜族のプライドは無いのかっ!」

「こうすればぁ、あたしもルースミア様の気持ちがわかると思ったんですぅ」



 まったく、疲れる奴だ。

 だいたいなんだこの喋り方は! 我の気持ちがわかるためなら誰でもいいような態度、むしろビッチなのはこいつの方だろう。




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