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プロローグ

 我の名はルースミア、人種の神々からは破滅(カタストロフィ)の象徴、人種からは赤帝山を住処にしていたため赤帝竜(ルースミア)と呼ばれている。

 まぁいわゆる竜の神格だ。


 事の成り行きを話すと、異世界から来た人間と我は出くわし、人の形をして共に旅をする様になってから我の生活は大きく変わるのだが、いろいろとあったそののち、世界(ワールド)守護者(ガーディアン)となったその異世界から来た人間と我は、つ、(つがい)となったのだ。



 そんな中なにやら悪さを企んでいる愚かな元人種の神だった輩が、世界の創造主たる創造神を捕らえ拘束した直後から(つがい)が記憶障害を起こし、我の財宝全てを持ったまま発狂したかのように行方不明になってしまったため探している最中、というのが今の我の状況だ。





 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 (つがい)を探して飛び去っていった方角を目指していくと1人の男が我の前に立ち塞がってきた。

 端正な顔立ちだが身体中から発している恐怖を与えるオーラを感じ取れる。


 弱い者であればこのオーラだけで死にかねないだろうな。



「我は今忙しい、邪魔立てするのなら容赦はしないぞ」

「竜の神格、破滅(カタストロフィ)の象徴、いやいや怖い怖い、怖いですねぇ」


 我をその呼び方をする者は神格を持つ者……まさか……


「貴様、ニークアヴォか」


 (つがい)を発狂させた張本人め、のこのこ我の前に姿を見せるとは愚かな。

 2度と蘇ることもできぬぐらいにバラバラにして喰ってくれる!


「ご明察通り私はニークアヴォ」

「わざわざ我に殺されにでも来たか!」

「いえいえ、むしろその逆ですよ……貴女に消えてもらいに来たのですから」


 たかだか元人種のそれも元【商売の神】だった程度の神が、知恵は回る様だが純粋な力においてはたかだか知れているはず、にもかかわらず我を前にしてこの余裕……何かあるな。


「おやおや、どうしましたかな? まさか破滅(カタストロフィ)の象徴ともあろうものが、恐れを抱いた、などとは言いませんよねぇ?」

「侮るな。 貴様が我を前にしてその態度、対抗するだけの何かを持ってきているぐらい容易に想像がつくわ」

「いやはや、さすが一筋縄ではいきませんなぁ」


 ん、なんだ? 奴め左手を見せつけてきた。

 ……籠手か? いや、アレはただの籠手ではないな。


「コレは『魂抜きの籠手』と言いましてな。 神々すら凌駕する力を持った代物なのですよ」

「ふん! そんな玩具で我を倒せるとでも思っているのか!」

「やってみますかな? ……いえ、貴女がお断りしても私としてはここで潰すつもりですけどね。 そのためだけにこの籠手を手間暇かけて手に入れたのですから」


 ふむ、見れば見るほど奇怪な籠手だ。 まず指を入れる場所が5本ではなくなぜか6本もある。 更にはかなり強力なマジックアイテムであろう事が見てとれるな。

 だがだからと言ってあんな玩具で我を倒せるとでも本気で思っているのか? 籠手は防具であり武器ではないはずだ。


「まぁいい、その籠手で我が倒せなければ、その時は貴様が死ぬだけだ」

「もちろん、その覚悟はしていますよ、もっとも……私の理論上では貴女は十中八九消滅することになりますがね」

「笑わせてくれる! 100%にしてから挑むべきだったと後悔するがいい!」


 所詮は籠手だ。 できることといえばせいぜい殴るぐらいだろうが、元【商売の神】如きが我を殴れるどころか触れられるものか。


「殺す前に1つ聞いてやる。 貴様がそうまでして我を滅ぼそうとする理由はなんだ?」

「私の目的を達成させるには世界(ワールド)守護者(ガーディアン)が邪魔なのですよ。 その奥方となった貴女は世界(ワールド)守護者(ガーディアン)を守ろうとする、となれば私の最大の障害となってしまった……それだけですよ」


 なるほどな、(つがい)を害するためには我が邪魔というわけか。 そして1人でいる今がチャンスというわけだな。


「それではサクッといきますよ! ソウルスティール!」


 ん、殴ってくるのではないのか? ソウルスティール……魂を奪う、か。


 ……む!?

 コレは! 籠手が体を、いや、魂を強奪しようとしてきているのか!?


「これで貴女はおしまいですよ!」


 たかだか元【商売の神】と侮ったか。 いや、この動きは籠手によるものだ。 その証拠にニークアヴォの体は全然ついてきていない。

 しかし、ふっ、どうやら籠手の方は我の体をただすり抜けただけのようだ。


「——どうやら、10のうちの1か2だったようだな?」

「なっ!? 何故です! なぜ魂抜きの籠手が効かないのですか! 見落とした? いえ、アレだけ近くで見ていたのだから見間違いがあるはずない!」


 クックック……慌てておるわ。 何かわけがわからないことを言っているようだが……我に牙を剥いた報いは受けてもらうぞ。


「我を、殺したいだけであればゼロをけしかければよかったが……よもや我を滅ぼそう、などと考えるとはな」


 もっともゼロを回収するには、我よりも厄介なあの宿屋(シェイディドラゴンイン)女主人(バケモノ)を相手にしなくてはならないわけだがな。


「っく! こんなところで私の目的を邪魔されてたまるものですか! ここは一旦退いて……」

「ククク……逃すとでも思っているのか?」

「こ、これは結界!? いつの間に!」


 種明かしをしてしまえば、我と相対した時点ですでにこの結界は勝手に張られている。 コレが我が破滅(カタストロフィ)の象徴と言われる由縁の1つであるのだがな。


「さぁて……今度はこちらの番だ。 宣言通り死んでもらうぞ」

「ひ、ひぃぃぃぃぃ! 来るな、このバケモノが!」


 なんとも情けない声を上げるものよ、一応神であった身だろう。

 さて、どうやって殺してやろうか?


「た、『魂抜きの籠手』よ、私を守りなさい! あのバケモノを私の目の前から消し去るのです!」

「まだそんな玩具に頼るか!」


 面倒だ、手足を引きちぎってカンに触るあの舌を喋れぬよう引っこ抜いてやるわ!


 距離を詰めるとニークアヴォは距離を取ろうとしたが、籠手の方は我とやり合う気があるようだ。


「うわ、うわぁぁぁぁぁぁあぁぁ! 来るな、来るなぁぁぁぁあ!」


 手がとどく……その瞬間、逆に籠手が我を掴んできた。


「むっ? お、おおお?」


 次の瞬間、宙に持ち上げられ地面目掛けて叩きつけられた。





 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 ちっ、油断しすぎた!


「だがその程度効かん!」


 地面に叩きつけられるまでの間が少し長かった気がしたが、すぐに立ち上がってニークアヴォのいた方に顔を向けるが姿が見当たらない。

 それどころか景色も一変していて、誰もいない中1人叫んだとなるとさすがに恥ずかしくもなる。


 ど、どういう事だこれは……


 ひとまず今いる場所がどこか上空から調べ……いや、そうなると着ている物と(つがい)に貰ったリストブレードを一時的といえど手放さなくてはならない。

 特にこいつだけは絶対に手放せんしな。


 ジッと腰に吊るしたかなりくたびれた人形を見つめる。

 それは擬人化させた黒いネズミのようで赤いズボンに白い手袋をはめている。


 くふふ、ネズミーマウス今日も可愛いぞ。


 元の姿に戻るにはコレらを全て外さねばならんし、小さすぎて持ち運べないからな。



 仕方がない、飛行(フライ)の魔法で調べるか……

 っと、こっちに向かってくる奴らがいるが、あれは冒険者か?

 ちょうどいい、あいつらに聞くとするか。



 徐々に近づいてくる姿を待ち続ける。

 我が声をかける前にあちらから声をかけてきたわけなのだが……


「#^*>;\_#>+*<|"'+''€"|;;?」


 こ……言葉がわからんだと!?

 世界の言語のほぼ全てを知っているはずのこの我が……

 目が点になるとはこの事か?

 ありえん、こいつらはどう見ても普通の人間だ。 いやエルフやドワーフも混じっているが、とにかく人種である事は間違いないはずだ。


 今話しかけてきてる奴が特別かとも思ったが、他の連中も声をかけてきて同じく全く聞き取れない。


 ……仕方あるまい。 実力行使するが、(つがい)よ許せ。



 1番身近にいた雄の手を掴んだ我は、慌てて手を離される前に『言語読解』の魔法を使う。 この魔法の欠点は、その言語を話す相手に触れなくてはならない事だ。


「ちょっとカルっ! なにいきなり手なんか掴んでるのよ!」

「ちが、触ってんの俺じゃない! よく見ろ! この子が俺の事を掴んでるんだ!」

「だが、まんざらでもないって顔じゃな!」

「……ウンウン」


 よし、これで言葉がわかるようになったぞ。

 しかしうむぅ……やはり誤解を招かせてしまったか。 我の責任でもあるし、ここは誤解を解いてやらねばなるまい。


「誤解を招くような事をして済まなかった」


 手を離してから素直に謝罪する、(つがい)にはしょっちゅうこれで怒られたものよ。


「ほ、ほら見ろ! 俺じゃなかっただろ?」

「じとー」

「じとーっちゅうのは、普通は自分の口で言わんもんじゃろうに」

「……ウンウン」


 ……は? また勝手に騒ぎ出しはじめたぞ。

 仕方がない、収まるまで待つか。


 ……

 …………

 ………………


「——それで、君はどうしてこんなところに1人でいたんだ?」


 はぁ、やっと収拾がついたと思えば、今度は質問攻めか。



「気がついたらここにいただけだ。 それよりもここはどこのなんという場所だ?」

「可愛らしい顔をして言葉使いはずいぶんと高圧的じゃのぉ……もったいない」

「……ウンウン」

「もしかしたら攫われた貴族の娘かもしれないわよ」


 いい加減このやりとりにぶちキレそうになるが我慢していると、やっと知りたい情報が得られた。


「ここはルルアガ帝国の帝都から少し離れた場所だけど……」

「ルルアガ帝国?」

「ちょっとおかしくない? この子ルルアガ帝国も知らないなんて。 それにこの子の髪の毛……あり得ないくらい真っ赤だし、目もなんだか……」


 竜眼みたいとでも言おうとしてやめたようだ。


「魔族……というわけでもなさそうじゃな」


 竜眼ではなくそっちか。 という事は魔族がいるということか。


 あちらはあちらで話し合っているようだったが、我もそれどころではない。


 ルルアガ帝国だと? そんな国の名は聞いた事もないぞ。 それに我が知らない言語を話していた。

 仮にここが未来だとして、知っている国が全て滅びた後だとしても言語がここまで変わるはずはない。

 そうなると考えられる事は1つだ。



 まさかここは……


 異次元だったのかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!




お待たせしました。

ルースミアが主人公になった新作です。

基本的にピンチってなに? というような展開の話になります。

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