第7話:ミサイル着弾
結局、外の世界のミサイルは、50基中10基がピラミッドの北側に着弾した。最初の40基の迎撃ミサイルの次の迎撃ミサイルの充填が間に合わなかったのだ。
ピラミッド内は、外壁による防音がほぼ完全であるために小さな音しか響かず、また、ピラミッドの外側についても、磁気シールドが見事に機能したので、外側の樹木が燃えることもなかった。
だから、ピラミッド内は、一部の住民が少しの不安を感じただけで、平穏が保たれた。
そんな中、最高評議会のメンバーたちは、そのような展開を議場の大画面スクリーンにより見守り、そして、その顛末を見届けた。
大統領もタケルを含む議員たちも安堵した表情だった。
まずは大統領が感想を述べた。
「ここまでは予想通りだね。我々のピラミッドはビクともしなかった。むしろ問題は今後だね」
タケルも同じ感想だった。
「そう、今後が問題だね。こちらのミサイル迎撃能力が最大40基ということがばれてしまったからね」
それから、議員の各々がそれぞれの意見を述べたが、メンバーの見方はおよそ同じだった。
一方、ピラミッドの外の世界では、特にピラミッドのある日本では50基の巡航ミサイルが放たれるまで、ピラミッドについて報道管制が敷かれていたが、50基の巡航ミサイルの発射という事柄は流石に目立ち広く知れ渡ることになった。
それ故に、外の世界はちょっとしたパニックになった。
もちろん、外の世界の人々はピラミッドのことを大いに気味悪がった。
また、ピラミッドへの対処をめぐり世論が二分されることになった。
世論の一つは「ピラミッド側に和平を申し入れる」というものであり、もう一つは「ピラミッドは危険極まりないので早期に攻撃して破壊するべき」というものだった。
そこで、外の世界の世論を人工知能によりウォッチしていた最高評議会のメンバーは、外の世界に対して平和のメッセージを送ることにした。また、ピラミッドとその住民について差し障りのない範囲内で最小限の情報を外の世界に向かい開示することにした。
具体的には、日本のテレビのキー局のサーバを乗っ取り、ピラミッドの5万年の簡単な歴史と住民たちの暮らし向き、そして、外の世界に対して何の敵意もなく恒久的な平和を望むことをゴールデンタイムに放送した。
しかし、その「ハイジャック放送」に対する世論も真っ二つに割れた。
その一つは「ピラミッド側と平和条約を結ぶべき」というものであり、もう一つは「放送はこちらを油断させるための陰謀なので騙されることなく攻撃するべき」というものだった。
外の世界の反応がそのようなものだったので、最高評議会の大統領をはじめとするメンバーは、外の世界の世論の推移を静観することにした。
外の世界の側もピラミッド側も、交流とか攻撃とかを何もしないまま、言い換えれば、双方が静かに睨み合ったまま2ヶ月ほどが経過した。
そのようなわけで、ピラミッド側も外の世界も、なにはともわれ、しばらく平穏だった。
しかし、そんな時、ピラミッド内に3度目の非常警報が発令された。
タケルは、早速、自宅に設置された端末のモニタの画面を人工知能とのインタフェースに切り替えた。
その画面を食い入るように見るタケルの背後から妻のミレイが声をかけた。
「ねえ、タケル、また攻撃なの?」
「ああ、そうだよ。しかし、これは少しまいったな。今回は100基の巡航ミサイルがこちらに飛んでくるよ」
=続く=




