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我が家のミサイルで人類は破滅するの?  作者: 破魔矢タカヒロ
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第2話:警戒レベルの引き上げ


 タケルは、中庭の中央にある円形の広場にチンタラと歩いて行った。




 実は、その円形の広場こそが最高評議会の議場なのだ。




 中庭と言っても、広場と言っても、ピラミッドの天井の下にある。




 つまりは屋内なのだ。




 だから、中庭に議場があっても何の問題もない。風雨にさらされることなど無いのだ。




 タケルの一族の領地では、一応、物事が民主的に決定される。




 また、大統領と最高評議会の議員は選挙で選ばれる。




 選挙は5年に1度なのだがタケルの父親はもう20年も大統領職を務めている。




 なにせ、ピラミッドという領地では科学技術の究極の進歩のおかげで問題など一切生じないのだ。




 しかも、高度な人工知能による管理と制御と統制のおかげで、司法も立法も行政も極めて巧みに運営されているし、住民たちは皆、高等この上ない教育を受けていて、高度この上ない倫理観と良識を持ち合わせているので、衣食住の面でも治安の面でもトラブルなど何も起きない。




 それに、衣食住の全てがメカによって自動的に賄われるので、物資が不足することもない。また、衣食住に必要な物資は全てが無償で供給されるので、金銭など不要であり、それ故に、同じ人物が大統領や議員を長期にわたり務めても汚職や腐敗など生じるわけがない。




 選挙はちゃんと正規に行われるのだが、その選挙は立候補制ではなく互選であり、大統領や議員が入れ替わることは、本人が拒否しない限りはない。




 タケルの父、ヤマトは、そのようなことで、大統領職をもう20年も務めている。ちなみに、タケル自身は22歳の時に最高評議会の議員になり、今は5年任期の一期目だ。最高評議会の議員の定数は僅かに10名だ。それでも、高度な人工知能がほとんど全てをこなしてしまうので、定数が10名でも議員は手持ち無沙汰なくらいだ。




 さて、タケルが議員の席に着いたとき、他の議員と父親の大統領は既に着席していた。




 ヤマト大統領は、遅れてきたタケルを見て少し渋い表情を見せたが、そのタケルの着席を確認すると、議題の提起を始めた。




「今日、みんなに集まってもらった理由だが、手短に言わせてもらうよ」




 タケルの一族の領地、すなわち、ピラミッドでは敬語を使わない。というか、敬語は遥か昔に消滅してしまっている。だから、住民たちはタメ口で会話をする。言語は基本的に日本語だ。




「実は、人工知能が領地の警戒レベルを引き上げたのだよ」




 それを聞いた議員の全員が少し驚いた表情になった。




 そして、ムサシという名前の議員が口を開いた。




「警戒レベルを引き上げる理由なんか、何もないはずだろ。どうしてだよ?」




 大統領は、当然予想された質問に答えた。




「理由は、領地の外の情勢だよ。最近、北朝鮮のキンとか、ロシアのプッチンとか、アメリカのトリンプとか、中国のショウとか、頭のおかしなリーダーが続々と登場してきただろ。人工知能はそのことを問題視して警戒レベルを引き上げたのだよ」




 この大統領の説明を聞いても合点がいかないタケルは、続いて質問した。




「頭のおかしなリーダーなら過去にもいただろ。ヒットラーとかナポレオンとかさ、彼らと比べれば、今の連中なんか可愛いものだよね。このピラミッドが建造された5万年前から警戒レベルが引き上げられたことなど一度もなかったはずだよね。なのに、どうして今なのさ?」




 タケルの質問は的を射たものだ。そして、実のところは、大統領自身も人工知能の判断に納得がいかないのだった。




「うん、そうなのだよね。だから、私は、人工知能に何度も聞いたのだけど、人工知能によれば、要するに、全ての情報を総合的に分析した結果が警戒レベルの引き上げだと言うのだよね。私も不審に思うのだけどね、それでも、人工知能がこれまでに間違った判断を下したことなどないからね。だから、しばらくは情勢の推移を見守るしかないだろうね」




 大統領の説明になっていない説明を聞いたムツという名前の議員が発言した。




「まあいいじゃないか。警戒レベルを引き上げておけば、どのみちピラミッドに籠っている我々は安泰なのだからね。我々は、ただ、外の世界を眺めていれば、それでいいはずだよね」




 ピラミッドは、政治、経済、治安、そして軍事のどの面においても完全な世界だ。だから、議員たちは、「警戒レベルの引き上げ」という意外なことを大統領から聞かされて、最初は少し驚いたものの、今はまた呑気な表情になっている。




 ところが、そんなとき、ピラミッド内に非常警報のけたたましい音が鳴り響いた。




 大統領は、しっかりと驚いた表情になった。




「おい、あの音はなんだよ?」




 大統領の疑問にはタケルが応じた。




「あれは確か非常警報の音だよ。生まれて初めて聞くけどね」




 これを聞いた大統領と議員たちに緊張が走った。




=続く=



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