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我が家のミサイルで人類は破滅するの?  作者: 破魔矢タカヒロ
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第1話:大統領の息子


 タケルという名の青年がいる。彼は25歳だ。




 タケルは、今、自宅の中庭に居並ぶ100基のミサイルを何気に眺めている。




 タケルは名士の倅だ。大統領の息子なのだ。




 そのタケルには妻がいる。同い年のミレイという女子だ。




 タケルとミレイの夫婦の間に子供はまだいない。




 ところで、100基のミサイルの発射命令を下す権限を握るのはタケルの父であり大統領であるヤマトだ。




 そのヤマト大統領はどこの国の大統領か?




 いや、どこの国でもない。




 なにせ世界に向かい独立宣言をしたことなど一度もないのだ。




 それどころか、ヤマト大統領が治める領地は世界のどの国からも誰からも知られていない。




 それでは、タケルやその妻のミレイや父のヤマトは自分たちの領地のことをどのように呼ぶのか?




 彼らは、自分たちの領地のことを「一族の領地」あるいは単に「領地」と称する。




 その「一族の領地」とはどのような領地でどこにあるのか?




 「一族の領地」とはピラミッドを山のように見せかけた巨大な建物だ。




 その巨大な建物は日本国内にある。




 もっと詳しく述べれば、日本の中国地方の山々の一つがその巨大な建物なのだ。




 しかし、日本国民の誰も、というか世界の誰も、その山がピラミッド型の建物であることを知らない。




 そのピラミッドのカモフラージュはそれほどに完璧なのだ。




 だから、外の誰が見ても綺麗な円錐状の山にしか見えない。




 そのピラミッドは、山と思われるだけあって、まさに巨大であり、高さが500メートル、底辺が786メートル、勾配が51度50分の建物だ。




 そのピラミッドの外面は、普通の山の形状に見えるように人工の岩で覆われていて、更にその岩の上には自然の土が被されており、その土には自然の樹木が植えられている。




 それらの外装を施された結果として、そのピラミッドの山としての高さは550メートルとなっている。




 だから、そのピラミッドは、誰からも形の整った円錐型の山に見えるというわけだ。




 さて、そのピラミッドの内部だが、中央部分が吹き抜けになっていて、その吹き抜けの周囲が住民たちの生活圏になっている。




 その吹き抜け部分は、あたかも屋外のようだ。




 太陽光が光ファイバーによってピラミッドの内部に巧みに取り込まれていて、その吹き抜け部分が屋外のような日光で照らされるからだ。




 その吹き抜け部分の地面は、ピラミッド住民が共有する中庭になっている。




 中庭には自然の木々や花々が植えられており、外の世界の庭園とほとんど変わらない景観を構成している。




 タケルという青年は、今、そのような中庭を生活圏の集合住宅の一室のベランダから眺めているわけだ。




 そして、その中庭には、自然の木々に織り交ざるようにミサイルたちが置かれている。




 それらのミサイルは核ミサイルであり、外面が木々に馴染む茶色で塗装されている。




 それらの核ミサイルは、あくまでも、自衛のためのものだ。




 タケルが暮らすそのピラミッドには1万人の住民が暮らしている。




 1万人の全員が血縁者だ。




 だから、ピラミッドの住民は、1万人からなる一族ということになる。




 そのピラミッドは約5万年前からそこにある。




 5万年?!




 そう、5万年前からだ。




 人類はこの地球上に今から約10万年前に登場したとされる。




 しかし、記録にあるという意味で言えば、人類の歴史は、一番古い古代エジプトの始まりからカウントしても5千年しかない。




 では、古代エジプトの前の9万5千年に歴史はなかったのか? 文明はなかったのか?




 そのような話になると、伝説上のアトランティス大陸やムー大陸が持ち出される。




 そして、その真偽なのだが、大陸の名称はともかくも、現在の世界史が始まる前にも人類の文明は実際に存在した。しかも、現在の文明よりも高度だった。




 しかし、その有史以前の文明は5万年前に滅びた。




 ところが、タケルの一族の遠い祖先たちは滅びずに、日本の中国地方のとある山奥にピラミッドを築き、そこに一族で籠ったのだった。




 ピラミッドを築いて一族で籠った当時、その一族は100人のみだったのだが、その後増えて、今では約1万人の一族がそのピラミッドの中で暮らしている。




 今、当初の一族の末裔であるタケルは、そのようなことに思いを馳せるでもなく、木々に織り交ざって立っているミサイルをただ何気に眺めているのだ。




 すると、背後から声が聴こえた。




「タケル、もうすぐ会議よ。お父様、じゃなくて大統領から電話があったわよ。早めに出てくるようにですって」




 声の主は、タケルの妻、ミレイだ。




「早めにって、会議で話すようなことなんか、どうせ何もないだろうに」




 タケルは、そのように言ってはみたものの、大統領の指示とあって、面倒臭そうに腰を上げるのだった。




=続く=



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