シーン0/クラッキング・デモンストレーション
プロローグ(シーン0)/クラッキング・デモンストレーション
「ジゥ・ハオラン?」
「ああ、私だ。どうした?」
「グエンが第三の壁を突破しました」
「ほう」
「特設Webサイト、見てください」
「ちょっと待ってくれ…」
受話器の向こうでハオランが声を立てずに笑った気配がした。
「派手にやったな」
「はい、サイトリニューアルしてくれた」
「いままでのサイトよりセンス良いじゃないか」
「内緒の話、グエンが入社したらサイトのデザインも任せたほうが良い」
「ほんとだな。今回はどんな手口だったんだ?」
「グエンはバックドア※を仕込みました。前回のウィルスは完全に駆除したけど、すみません、バックドアはまだ見つけていません」
「じゃあ第四の壁を立ち上げても即突破されるな」
「でもシステム部の連中もだんだん意地になってきている。壁はかなり厳しくなります」
「ああ、厳しくなる。双方にとってな。手を抜くなよ。全員にそう言っておいてくれ」
「ジゥ・ハオラン、システム部がグエンに負けると思いますか?」
「思わないさ。手加減する必要は無い、ということだ」
「もちろんです」
※バックドア…一度システムに侵入した侵入者が作る、再侵入のための裏口