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9. 懊悩の美術
椿は、それでは自分もいずれそうなるのだろうか、と考え始めた。
椿は、まだ夢の途中である。
椿は、悩む。
それは、漠然としていた夢がリアリティーの波になって押し寄せてくるのを、恐れているようでもあった。
親友二人が椿に対して語った経験は、椿にとって、どんな格言よりも重みがあり、価値があった。
「ひとつ言っておくとね。」と朔月が瞑想に割り込んできた。
「私も裕二も、夢を追いかけた事に関しては、一切後悔してないわ。夢を追いかける事って、とっても美しいもの。」
「美しければいいのか。」
「全力である事に価値があるのよ。」
「僕は今全力で悩んでいる。」
「それはとても美しい事だと思うわ。」
そして、朔月は言葉を言い換える。
「それが人間してるって事だと思うわ。」
章の区切りがここまでなので、今回は少なめです。あと2章で終わります。よろしければ最後までお付き合いください。