11. 彼と彼女の選択
喫茶店を出てしばらく歩いていたら、今日は辺りが、より一層暗いことに気づいた。
空を見上げても、椿は月を見つけられない。
椿は、今日から月がなくても平気だと思った。
一方、朔月は欅並木を楽しそうに見つめながら、椿の数歩先を行く。
ともすれば夜に溶け込んでしまいそうな白を、椿は慌てて追いかけた。
「朔月は写真を始めるといいと思うよ。
きっと才能がある。」
「才能があるかどうかは、わからないけれど、とても面白そうね。」
「朔月が欅を見つめる姿を見て、きっと美しいものを見抜くことができるんだな、って思ったよ。」
「そうかもしれないわね。
手始めに、生まれてくる裕二の赤ん坊でも撮りに行こうかしら。」
朔月は、そう言ってはにかむ。
「そうだね。今度一緒に見に行こう。」
と、椿は言った。
椿は、衝動的な予感に襲われた。
しかしながら、それは例えば、月が満ちては欠ける様に、または明けない夜がない様に、確実なものである様にも思えた。
夜がくる。欅たちは間もなく深い眠りに落ちるだろう。
椿は、そして、無意識に朝顔のことを思い出していた。
朝顔は黎明を告げる花である。
薄い朝霧。
光の乱反射。
青く濃くなる空。
朝顔は大空に向かって花を咲かすだろう。
〜おわり〜
ここまで読み切ってくださったみなさん、ありがとうございました。これで、「黎明樹」の連載は終了です。重ねて、読み手のみなさんには御礼申し上げます。
感想・評価は引き続きお待ちしております。随時、できるだけ返信はしていくつもりです。
また、今後は書き溜めた読み切り短編やエッセイを掲載していきますので、これからもペティをよろしくお願いいたします。
それでは良い一日を!




