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プロローグ

ノベルジムからの避難。

よろしくお願いします。




 勇者とは何て理不尽な存在なんだろうか?



 この世界における勇者とは、この世界の秩序を守るために戦う勇敢な戦士だと言われている。

 だが、その実本当は国に使いっぱにされているだけの傀儡でしかない。いや、世界への生贄か。

 世界の秩序を守るという使命を与えるのはこの世界で言うところの神だ。そのお告げは三歳になった夜に突然頭の中に神の声が響くことにより勇者という役目を知る。だから、勇者という単語を聞くと親も喜ぶし本人も栄誉のあることだとそう言うのだ。

 だからこそ、生贄であろうと誰も気にしないしむしろその事実を喜ぶ。真実に気付きもせずに。

 だからこの世界≪ミルシード≫の人間は誰も気付いていないし、知ろうともしない。

 それもそのはずだ。この世界にとってはそれが常識なのだから。


 世界の為に身を捧げる。

 それを栄誉だと世界中の人がそう叫ぶ。


 勇者に選ばれるのは誉れだ。

 そう世界中の人は口々に告げる。


 だが、もしそこに異分子が居たとしたらどう思うだろうか?


 それは……。



「ギル。今日は剣の鍛錬でもしようか」


 そう声を掛けられたギルベルト・ルギンスは、その声の主であり父親であるアルバス・ルギンスを見上げて小さく首を傾げた。


「どうしたんですか、お父様。僕はこれから魔法の勉強をしに書斎に行こうと思っていたのですが」

「いや、だってお前は俺のことを直ぐに超えてしまっただろう。たまには手合せしてくれないかなと思ってな」


 アルバスは金髪に碧眼をした青年を少し過ぎたくらいのかっこいい男性だ。短く切り揃えられた髪は清涼感に溢れていて、こんな人になりたいという感情をギルベルトに抱かせる。


 ギルベルトは現在六歳。父親譲りの金髪をさらりと流して、ギルベルトを生むと同時に身体を壊して亡くなってしまった母譲りの紺碧の瞳をしている。

 最初は負い目を感じていた時期もあった。何故かと言うと、ギルベルトの事情について言及しなければならないのだが、実は彼にはもう一つ記憶がある。


 ギルベルトはミルシードに生まれる前に日本という別の世界で、生きていた記憶があったのだ。その時の名前はどうしても思い出せない。でも、その時に学んだことは鮮明に覚えているし友達の顔だって自分の顔だって覚えている。

 ただ、自分の名前も、家族の名前も、もちろん友達の名前だって全然思い出せないのだ。それは、もしかするとこの世界に生まれ変わることになるギルベルトが前世を引き摺り過ぎないようにという配慮だったのかもしれない。


 そんなわけで剣と魔法の世界に赤ん坊として生まれ変わってしまったとき、ギルベルトは相当混乱した。けれど、何よりもギルベルトを腕に抱いた瞬間に力尽きて死んでしまった母の姿に、その優しい温もりを受けて思いっきり泣いた。

 「おぎゃあ。おぎゃあ」と泣き叫ぶギルベルトに、名前を付けてくれたのは父だ。彼は最愛の妻の死を哀しみながらも、その彼女が死してなお護ろうとした息子を愛していたのだ。


 嗚咽を堪えながら、「お前は今日からギルベルトだ。お前が生まれたらそう名付けると決めていた。お前は、俺たちの大切な宝物だ」と。その言葉に、愛されて生まれてきたことを知ったギルベルトは余計に泣いてしまった。

 それを恥ずかしいことだとは思わない。前世では確かに成人していたが、それでも今は子どもなのだ。子どもは子どもらしく泣いたっていいじゃないか。


 そうして両親の愛情をひしひしと感じて生まれてきたギルベルトは最初にこの世界のことを知ってすぐに魔法の練習をした。ギルベルトの目には何故か魔力が色をついて宙を漂っているのが見えたのだ。だから、魔力操作をするのにそれほど時間はかからなかった。

 ただどんな風にこの世界の人たちが魔法を使っているのかわからなかったので、向こうの世界で読んだことのあるラノベの本を参考にして無詠唱でひたすらに魔法を使ってみた。


「≪ファイアーボール≫」


 最初は簡単な魔法からだ。赤子が魔力を暴発させて魔法を使ってしまうことがあると聞いたからばれることはないとわかっていたが、できるだけ家の人間が寝ている時間を狙って魔法をひたすら勉強した。

 因みにこの世界の言語は英語に訛りを付けたような言葉だったのだ。幸い前世で得意だったこともあり、生後三か月くらいで聞くことはできるようになったのが僥倖だった。




 その間面倒を見てくれていたのはメイドのアンだ。よく「ギル坊ちゃまは偉いですねぇ」と頭を撫でてくれる。それはギルベルトが滅多に泣かないからだろう。もちろんそれを不気味がっている人もいたが。


 そしてギルベルトが上級魔法を軽々と使えるような魔力を得たときだった。最低で最悪のギルベルトの運命を変えてしまう声が聞こえたのは。


 そう。それはきしくも三歳の誕生日の出来事だった。

 

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