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ep1. お釣りが少ない!?

ようやく、初めの1歩を踏み出すことができました。よろしくお願いいたします。

 目覚ましがけたたましく鳴る。もう、朝になったのか。午前6時45分。目覚ましを止め、コーヒーを入れる。外はまだ暗く、鶏ではない鳥がけたたましく鳴いている。ここは、マレーシア、クアラルンプール。海外生活を始めて1年が過ぎ、ようやくこの土地での1年間の時間の流れが理解できたところだ。


 俺の名は、升永 洋介。日本ではコンサルティング業で経営コンサルを行っていたが、2年ほど前に仕事でクアラルンプールに来た時に知り合った人から口説き落とされ、こちらで働くことになった。現在は某メーカーにて営業と購買を行っている。


 コーヒーを飲みながら、今日のスケジュールを確認する。10時半にインドからの来客予定。現在の工場だけではなく、インドの現地企業との合弁でインドに新工場を建設する方向で話が進んでおり、インドの現地企業から弊社工場を視察、今後のするための来社だ。他の予定も確認したところで、少し早いが家を出る。出社前に会社そばのMバーガーで朝食がてら近隣の会社の友人たちと情報交換を兼ねたブレックファストミーティングを行うためだ。


 このブレックファストミーティング、毎週火曜日に行われる。開始時間は適当。終わる時間もそれぞれの出社時間に合わせ適当に。出張などがあれば、もちろん欠席可能だし、自分の仕事に関わる話であれば会社に連絡の上、出社を遅らせることもある。何とも自由なミーティングだが、出席するメンバーは自分の裁量で出社時間を決めることができる。日本にいたときはこんなことできなかったので、かなり気楽だ。


 Mバーガーに入ると、既に飲み友達でもある近隣の会社で働く佐藤さん、隣の会社で働く水野さんが先に到着していた。


 佐藤さんは、以前はタイや台湾に駐在していたとのことで、日本語、英語の他、中国語やタイ語も話せるすごい人だ。まだ独身でイケメンの色白長身、バンコク駐在員の時には、接待で行ったラウンジで、ラウンジの女性陣が彼の隣に座るために裏で殴り合いの喧嘩を始めた話を聞いた時には羨ましさを超えて憐れみを感じたほどだ。


 一方の水野さんは、華奢で儚げな雰囲気がある超絶美人だ。とはいえ、気配りが利く上に頭の回転が速く、なぜこんなところで働いているのか? と思えるような人だ。噂では、以前働いていた会社で上司のセクハラに業を煮やし、柔道の大外刈りで病院送りにしたため会社を辞めざるを得なくなったらしい。本当だとしたら、そんな会社は許せない。いや、それ以前に水野さんを怒らせないようにしなければ、と考えてしまう。見た感じ守りたくなるような女性で、今度デートにでも誘いたいところなんだけど。


 「んじゃ、オーダーしてきます」


 鞄を置いた俺は、カウンターに向かい、いつものマフィンセットを注文する。価格は、6リンギット85セン。小銭がたくさんあったので10リンギット札一枚と、85センをコインを渡し、そして事件が起こった。(注: 現地通貨と日本円の為替については、最後に触れております)


「なんで、おつりが3リンギット55センなの? 4リンギットでしょ?」


 そう、レジの機械を使いながら、なぜかきちんとしたおつりが出てこない。カウンターではなかなかこういった間違えはないが、ドライブスルーではほぼ確実におつりを間違える。わざとなのか? お釣りをごまかしているのか? と最初のころは感じたが、どうもそうではないらしい。


 「えっと……。何が間違えてる? いくら渡せばいいの?」

 「さっき渡したのは、10リンギット85セン。品物は6リンギット85セン。だから、10-6=4で、4リンギットがお釣り。大丈夫? 理解したらお釣りをきちんと払って」

 「おー、ごめんごめん、そうだね」


 正しい金額のお釣りとマフィンセットを受け取りテーブルへ。


 「大丈夫ですか? お釣り間違えられました?」

 「よくあるんですよね。間違えるなら初めからきちんと打ち込めば良いと思いません?」


 彼らは、レジへの打ち込みを、受け取った金額を打ち込むのではなく、レジには10リンギットと打ち込み、85センの部分は暗算で計算しようとするのだ。で、いつも間違える。これは、受け取った金額をきちんとレジに打ち込むよう教育していないのが悪いのか、そもそもこの程度の計算を暗算でできないほうが悪いのか。マレーシアでも小中学校は義務教育だが、そのレベルはまちまちだ。頭の良い子にはきっちりと教えていくが、勉強が苦手な子は授業に出ていさえすれば良い、という雰囲気があるようにも感じる。


 そんなことがあったため、ブレックファストミーティングは、社員教育、訓練へと話が進んでいった。


 「教育すれば、変わるもんなんですかね? タイにいたときもかなり苦労しましたが、なんだか全然変わらなかったような、少しは進歩したかな? という感じだったりしたような、微妙な感じでしたが。どうなんでしょう?」

 「ええ、それなりには変わるはずですよ。学ぶ方の意欲ももちろんありますが、教える側のやり方や熱意などによっても大きく変わるでしょうね」


 佐藤さんと私の会話に、水野さんが参加する。


 「そういうと、なんだか高校生のころの授業や先生の教え方を思い出しますよね。私も自分の部下の教育とか、結構困ってはいるんですよ。日本でやっていたことをそのままこちらに持ってきても、うまく通じないというか。升永さんは、どうやっているのですか? 前職が生かせるのですか?」

 「そうですね。私もこちらに来て試行錯誤ではあるのですが、少しずつは改善していると思います。会社の方針というか、どのように従業員を教育する仕組みを作っているかによっても変わってきますよ。うちの会社には、残念ながら何もないような状態でしたので、 逆にHRに話を通して自分の部署、まずは購買から教育を進めています」

 「え! 私の会社も教育制度がしっかりしていないの。今度、どうやっているか教えてもらえるかしら? 少し助けてもらえると助かるわ」

 「ああ、それくらいのことだったらいつでも。今週だと金曜日の午前中なら何とかなると思うのですが、そこでどうでしょう?」

 「え、本当に良いのですか? ありがとうございます。スケジュールは升永さんに合わせるよう調整します。確定したら連絡入れますね」


 なんか、水野さんとの距離が近くなりそう。ちょっと嬉しい! いや、かなり嬉しいけど慎重にならねば。大外刈りで病院送りとか嫌だし。そんなことを考えていると、横から佐藤さんが


 「うちもぜひ。教育・訓練の効果がなかなか目に見えてこないので困ってるんですよ。今週は、明日からバンコク出張なので、来週か、適当な時に時間を取ってもらえると助かります」

 「ええ、もちろん。来週は私が出張入りそうなので、スケジュールの調整しましょう。ところで、今日はこの3人だけなんですかね? 1か月後のゴルフコンペの話をしなきゃって思ってたんですが」

 「ああ、他の皆さんは、出張が入っているみたいで、今日は来れないようです。教育・訓練の話とか、他社さんもちょっと話を聞いてみたいところですね」

 「そうですね。私も、日本での職務経験で得たものだけですし、こちらでの教育・訓練のコツなどあるかもしれませんからね。そういったことを聞けるとより良いものになるでしょうね」


 タイミングが良くなったところで話を切り上げ、それぞれの職場に向かった。



※1リンギット=約26.26円 (2016年12月22日現在)

※100セン=1リンギット

※6リンギット85セン (RM6.85=約180円)


字数とか感覚が解らないので、短めですが区切ってみました。慣れてきたら読みやすい長さを目指していこうと思います。

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