閉ざされた想い
もう、逢えるなんて思っていなかった。
声が聞けるとも、ましてや触れることなんて‥。
この気持ちを恋を呼ぶような気がする‥。
思い出す。
時間が経てば経つほど、心は痛む。
誰かが言ってた‥。
忘れるには時間だよ。
傷が言えるには時間だよ。
嘘だよ‥。
時間が経つほど、思い出す。
記憶が鮮明に描かれて、
大好きなその声も、私を包むその手の
温もりも忘れられないモノになる。
貴方の好きな歌を聞いては思い出し
私が好きな歌を歌えば貴方のことを
想ってる。
確かにあるその想いを胸に
前に進もうと前進する。
それでも消えないこの想い‥。
今あるその手を大切に
今ある守るべきものを守りつつ
心だけはあの頃のまま、止まってる。
〜電話
仕事の休憩中、近くのカラオケに一人カラオケに
行く。
私は30歳、普通の事務員。
二人の子供に恵まれて、☓付きだけど
優しい 同棲している彼氏がいる。
失恋ソングを無意識に選んで曲を入れる。
歌ってる途中に 頬を伝うソレは
今日も貴方を想っていると思い知らされた。
子供も居るので外に出歩くこともなく
仕事をしては、家に帰って主婦になる。
年に一度や二度くらい、親友の真琴に夜に
会うことがある。
あまりお酒を飲まない真琴。
私は弱くてあまり飲めないのに、飲みだすと
止まらなくなる。
いつも、冷静なまことに甘えきっている。
あの頃まま。
「ねぇ‥真ちゃんに会いたいよ‥」
「‥ 」
「すごく幸せだった、忘れられないよ‥」
「真ちゃんねぇ‥ 梓のこと大好きだったもんね。」
そんな会話にも付き合ってくれたる真琴の優しさは
神だと思う。
あー。 あーーー。
仕事中にも思い出す。
今の彼氏に感謝をしてる。
こんな破天荒な私を受け入れて
守ろうと決めてくれた。
好きな気持ちも、もちろんある。
比べたらいけない。比べているわけでもない。
でも、ただひたすらに、想ってしまう。
頭によぎってしまう。
電話帳を開いても出ては来ない。
私は電話番号が変わっている。
彼の電話番号も変わっているかもしれない。
別れてから何度か、記憶を辿ってかけたことがある。
出られることはなく折り返されることも無く、
何もなかったかのように、時間だけが過ぎて
いった。
今更、、、、
なんて想う。
そこに何を望んでいる訳でも
求めている訳でも ない。
ただ、会いたい。
声が聞きたい。 元気なのか知りたい。
今ちゃんと幸せなのか知りたい。
何より、ありがとう”を、 伝えたい。
貴方にとっての私がどう残っていて
どんな思い出の1ページに刻まれているのかは
分からない。
けど、私にとっては私を沢山愛してくれた
私に沢山、色んなことを教えてくれた
今生で1番‥ 大切な人だから。
バカだねって思う人も居るだろう。
思い出なんて美化されるものだよ、と
笑う人もいるだろう。
それでもいい。
私だけが分かっていれば、
それでいい。
時間が経つほど、消えない思い出は
募る想いに溢れてばかり、止まることを
知らなかった。
想えば貴方を失って10年が立っていた。
心だけ時を止めながら‥。
後悔をしない人生って
あるのかな。
人生は全て選択の連続で、
間違いがないだけに、その決断には
責任がついてきて、考えすぎてもよくないし
安易すぎたらもっと、良くないし。
生きることに疲れて嫌になる時さえある。
甘えるだけの幼少期。
夢を見れた思春期。
感情だけで走れた青春時代。
現実を見るしかない大人になってしまった今。
おじいちゃん、おばあちゃん。
二人は凄いんだね。
お父さん、お母さん。
二人はたくましいんだね。
私は、まだ大人になることを受け入れながら
どこかでダダをこねているよ。
ピピピ‥
電話番号を押す。
消す。
また、押す。 そしてまた、消す。
何回繰り返してるだろう。
同じ画面を見ながら、ため息をつく。
そこに確かな想いはあっても、目的はない。
指は勝手に、コールボタンを押していた。
うっすらと記憶に残る番号を‥
プルル プルル
「もしもし」
出た。 出て欲しくて
声が聞きたくて、コールボタンを押したはずなのに
動揺が隠しきれなかった。
「もしもし‥」
私も答えた。
「はい、もしもし」
私は息を呑んで、もしもし‥だけを答えていた。
声は震えていたと思う。
「どちら様ですか?」
懐かしいその声が聞こえる‥。
「‥」
動揺して、言葉が出てこない。
でも切られたらもうかけても
出ないかもしれない。
「あの‥」
でも、言葉は出てこない。
「誰?もしもし」
懐かしいその声がまた私の聴覚に響く。
切られたくない。
だから精一杯の声を出す。
「真‥ちゃん?」
「はい、そうです。 どちら様ですか?
ん?ん?」
本当に真ちゃんだ‥
どうしよう。
「あずさ‥」
「‥」
切られる。切られちゃう。
怖くて、名前を言えなかった。
名前を伝えたら切られるって怖くて
仕方なかった。
「えっ、どうしたの‥どうして‥」
切られなかった。
切られないことに安心した私は
笑ってしまった。
目には涙を浮かべながら。
「元気かなぁって」
「声が変わったな‥ 分からなかった」
「え、そう?真ちゃんは変わらないね。」
「再婚‥した?」
「‥ したよ。」
「そっか、よかった、ね!
どのくらいたつの?」
「もう、4、5年かな。」
もうあとの会話は覚えてない。
太った?とか、いくつになった?とか
そんな他愛もない話をしていたと思う。
ガチャ。
事務所のドアが開いた。
社長が帰ってきしまった。
私は慌てた。
いつもだいたい事務所には一人で
電話も繋がると思わなかった私は
何も考えずにコールボタンを押していた
のだから。
電話を切れない。
声が震える。
何分だったろう、5分ほどしか無かったと思う。
ごめん、ちょっと待ってね。
と、言って電話を切ってしまっていた。
社長に頼まれごとをした私は
返事をして、真ちゃんに、ショートメールを
打っていた。
また、かけてもいい?
繋がっていたかった。
それで終わりたくなかった。
何も多くのことは望んでいない。
求めていない。
でもただ、それで終わる事だけは
避けたかった。
目から溢れる粒が止まらない。
事務所から外に出る頼まれごとをしたので
急いで外へ出た。
仕事じゃなければ出れるけど
もう仕事始まっちゃう
と、メールは返ってきていた。
確か、たまたま休憩中だったと言っていた。
もう終わるとも。
それでも私は再度、コールを鳴らしていた。
電話が出られることはなかった。
ショートメールを返した。
梓って言ったら電話切られちゃうかと思って
怖かった、ありがとう。
と。
声聞けてよかった、元気に生きてろ
返って来た文章に涙が止まらなかった。
私はそこでメールを辞めることができなかった。
真ちゃんは今、幸せ?
私はワガママだからいつもよく困ってるよ。
貴方に愛された時間がどれほど特別なもので
幸せだったのかを知った時に貴方は居なかった。
後で気付いた想いに後悔を沢山したけど、
出会ってくれて愛してくれて本当にありがとう。
私にも彼氏がいるよ、貴方のように頑張る。
返信は来なかった。
再度またメールを送っていた。
もう同じことは繰り返すつもりはないし
お互いの道を生きているけど、
ただ普通に会って話したい。
ダメ?
気付いたら勝手に指が動いていた。
逢ったらダメだと思うぞ。 逢いたいよ。
でも逢ったら‥昔の気持ちを求めて
しちゃいけないことまで俺は望んでしまう
かもしれない。
返ってきたメールは、私の想ってたものとは
違かったけど、なぜかとても涙が溢れて止まらなかった。
私は貴方なら再婚していると思ってたよ。
その人のことも大切にしているはず。
だから、何も望んでないの。
ただでも、少しでいいから逢いたい。
今から向かおうか考えちゃってるよ‥
返ってきたメールに昔のまんまの真ちゃんを
を感じた。 あの時の真ちゃんを。
冗談だと思っていたら、
今向かってる。と、メールが入っていた。
私の会いたいで、そんな近くもない距離を
楽々来ようとする熱い、気持ちに正直で素直な
真ちゃんは、本当に昔と何も変わらなかった。
それはダメだよ、家族も居るし
それはダメ。逢いたいけど今はダメ。
落ち着かなくちゃ‥
今、、何かよほど辛いんだろう?
昔と何も変わらないんだよ‥
返ってくる言葉が胸を刺した。
どうしてあんな別れ方をして
10年も過ぎているのに
私の逢いたいの1言に、120%で
返してくれるのよ‥
それでも私達は、もう
1度、同じ事をしている。
それではダメなんだ。
私はそう思っていた。
彼の心にもその葛藤は見えた。
でもダメだよな。
自分がされたら嫌だよな。
一旦、冷静さを取り戻した私たちは
おそらく同じ想いで、同じことを考えていた
だろう。
頑張って守ってきたもんが壊れちまうんだ。
同じ繰り返しの後悔をしないよう
今そこにある笑顔を大切にしなさい。
逢えなくても生きているって知るだけの幸せで我慢だ
でなきゃ、目の前が嘘になる。
人生なんて後悔と我慢しかない 。
継続することがいちばん大事だけど
いちばん難しい 。
だから頑張って継続しつづけるんだ
自分を壊しちゃダメだ。
同じだよ。 分かってる。
あの頃も分かってた。
頭では分かってた。
気持ちが言うことを聞かず、
私達は、私達の事だけを考えて
想いのままに走ったのだから。
人は成長をする。
変わらないままのものもある。
いいように変わるものもある。
同じ事は繰り返さない。
けど、今後も良い関係を
続けていきたい。
ただ、繋がっていたいの‥。
静かに想った。願った。
過去を壊したのは私で
守ろうとしてくれていたのに自ら壊して
失った。
それで、後悔したからって
色々気付いたからって
勝手だよ。
それがどんなに辛くても
今を受け入れて、まっとうに
生きなければいけない。
あの頃のように、
誰か一人のことを考えて止められなくて
進んだ特別な恋。
でもあの頃、守れなかったのは私なのだから。
守りきれたとしても、綺麗なものではないのに
2回目はないよ。
分かってるんだ。
だからもう大丈夫。
大好きなその声を聞けてよかった。
変わらないままの貴方を見れて
よかった。
あの頃の想いを伝えられてよかった。
元気に幸せに生きていてくれて
よかった。
神様、ありがとう。
電話が繋がって
彼との時間を与えてくれて。
この心の再開は、よき道へ導いてくれる
同じ愛でも形を変えた
愛の再開でした。
普通ならば、ありがとうも想いも
伝えられないからこそ、もっと苦しかった
はずだから‥
それだけで、充分。
今、決めて選んだ進んでいる道の背中を押すために
必要だった。
私は幸せモノだ。
今を元気に生きてろ。
元気に強く、今ある笑顔を守ろう。
来世で、今生のやり直しを
させて下さい、と空を見上げて今夜は眠ろう。
今日もいつもと同じ朝が来る。
違うのは心が暖かいこと‥
「おはよー」
「おはよう」
そうだね、朝はおはよう。
朝食の支度をして彼を玄関で見送る。
子供たちを学校へ送り出す。
洗濯をする。
仕事のために化粧をする。
掃除機をかける。
頭で分かってるけど、どうしても
気持ちが言うことを聞かない心と
理性を保っていてよかったとホッとする心。
交差する想いの葛藤に苛まれる。
今すぐに逢いたい。
このまま、気持ちのまんまに動いて
しまいたい。
何も考えずに、気持ちに従って動きたい。
重い足取りと涙と共に仕事へ向かった。
真琴に朝からメールをする。
真琴は、私と同時期に妊娠して
結婚をして離婚もせず仕事も
常に2つや3つ掛け持ちながら
忙しなく働いていた。
それでも、朝からメールを返してくれた。
(早まるなよ。)
このメールを最後に落ち着きを取り戻した。
すると真ちゃんにメールをしていた返信が今
返って来た。
今すぐに逢いたい。と
何も考えなくていいのなら、今すぐに逢いたい。と
止めなくてはいけない‥
止めずに私もだと、返したくなる。
一旦、携帯を閉じた。
譲れない想いや人想う気持ち。
頭で考えるものではなくて、
自然なその想い。
止めることなんてやっぱり出来ないんだよね。
私も真ちゃんに逢いたい。
メールは送信された。
夕方には戻らなくてはいけない。
車で1時間少しかかる、その距離を
簡単に走ってきてくれたんだ。
会っていた時間はどのくらいだろう。
2時間半ちょいだっただろうか。
とても早く感じたけど、何も変わらない
その雰囲気に時間の短さより時の濃さを感じた。
10年前の話しや、それからどうしていたのか
沢山の話をした。
色んな想いが溢れたけど、
ただ一つ、大好きで、落ち着いて、
安心して、気持ちが満たされたんだ。
お互い責め合う事なんて何もなくて
どれほど想っていたのか
ただそれらの気持ちを伝えあっていた。
真ちゃんは私より私を本当に知っていて
いつも自分より私で、
それが今もあの頃も変わらなくて
嬉しかった。 安心した。
こんな想い合える恋ができた奇跡。
真ちゃんは忘れる方が難しい” と言った。
ほんとにそうだね。
〜冷静
今、聞こえるのは子供たちが遊んでる声。
喧嘩してる声。
現実に引き戻される。
今のこの幸せを、守らなければいけない。
「ただいま」
帰ってきてくれる人が居る。
私を信じて、私達のために頑張る彼が
帰ってくる。
その、日常を守らずに何をする。
「おかえりっ」
数日、色んな葛藤があった。
けどもう。 戻れない。
前に進むしかない。
会話をしなくても、分かる。
真ちゃんも同じ事を想ってる、きっと‥。
10年の想いがクリアになった気がした。
言い出したら切りのないもっと‥
でも、今は蓋をしよう。
お互いが選んで進んだ道を
一生懸命に、生きよう。
まだまだ頑張れる。
あの時も今も‥ 心からありがとう。
私達はきっと、また巡り会える。
形を変えて、きっと今よりいい形になって。
そう信じてる。
きっと何度でも私はあなたに恋をする。
いくつになっても、何度でも何度でも。
私は必ずあなたに恋をするから。
いつか来るその日を夢見てるだけで
頑張れる。
ありがとう‥。
miwa ハジ→♪
繋いだその手の温もりを‥の、続編が
書けるとも思っていませんでした。
人生とは、分からない。
頑張っていればいいことはある。
この小説を読んでくれたあなたも
何かの縁があって、きっと意味は‥ある。
想いを大切にしたい。
素直に生きたい‥。