94話
前回と同じく今回も平均より500文字少ないです。
次話で早くも氷獣王戦決着予定です。
「全員攻撃体勢!メインアタッカーはコウガ、クルス、セツナの3名。イリスとカエデは光魔法と木魔法で補助と回復を担当して!ルドラ、貴方は今回私の護衛はしなくていいから他の皆が一撃でやられそうな攻撃をガードしてあげてね」
指示を飛ばすとコウガ達に気合がみなぎる。まあそう見えてるだけだけど。
そして氷獣王はというと、私の指示でコウガ達がどう動くのかをじっくり観察している。たぶん全員で来る場合どう行動してくるのかを見極めようとしてるのだと思う。
やっぱりこの子(氷獣王)もかなり頭がいいのかもしれない。というか王種なんだからそういう戦略を練れて当然よね。どこぞの森で一人でいた某死霊系の王種とは違って仲間のことを第一に考えて行動するくらいに良い王種なんだし。
ちなみにコウガ達に対しどういった技を使えという具体的な指示はしない。なぜなら先ほどバラバラに行動させたときに技名で指示を出してしまった為、氷獣王がその技名に反応して避けてしまうのを防ぐためだ。
それにコウガ達なら一度覚えた動きならあとは自分で考えて行動してくれるので、よほどの事態にならない限りは私が指示を出さなくてもいい。
そうして氷獣王に向かってパーティプレイさながらに戦い出す六人。
氷獣王もアタッカーが三人になってから回避にも気を付けなくてはならなくなるので、隙ができることもあるはずだ。……まあさっき見せられた目でも追えない動きを連発されたらどうしようもないんだけど……あれがスキルだったなら発動毎にCTが最低数秒は発生するだろうからそこを付けるはず……。
「うん、皆なら私がスキルの準備を整えるまで頑張ってくれるよね」
一方で私はというとブートキャンプ中、力試し目的で攻略した《暗闇の山》にある《山嶺》ダンジョンクリア時に手に入れた宝箱から手に入れたスキルの種で習得したスキルの使用準備をしている。ちなみにダンジョンでは種の他にその他諸々(ここにはいくつかコウガ達の新装備も含まれている)を手に入れたので今現在皆の装備は変わっている。
「……んんっ、だ、誰もいないよね?(注:自分以外のプレイヤーを示しており、謎フィールドの外から見ている魔獣系のモンスター達の事は含めない)……よし……スゥ~ハ~スーハー…………ラーラーラララー♪……うん、イケそう……かな?」
ということで、私の新スキルは【魔唱歌】というものです。
最初は普通に【唱歌】だったんだけど、キャンプ中に声がかれるまで(断じて一人カラオケが好きだからって事じゃないからねっ!)使ってたせいか、スキルが変化しちゃったんだよね。……きっと暗闇の山の魔素の影響を受けたに違いない……。
まあっ、スキルの説明をするとこんな感じ。
【唱歌】:声に魔力を乗せて相手に伝えるスキル。効果は味方には能力上昇、敵対者には能力減少の効果がある。
【魔唱歌】:歌っている間は【唱歌】の効果に加え、自分(使用者)が設定した【スキル】一種類の効果を仲間全員に与え続けることができる。ただし対象が多くなるほど、発動までに時間がかかる。音痴でも効果発動可、気にせず使ってOK。
と結構使えるスキルなんだよね。まあ魔唱歌の方の最後のコメントはいらないけど。
…もしかして私が音痴だとか思ってたりしないよね?これでも大学の友人とカラオケに行くと盛り上がるんだからね?って私は一体誰に言い訳をしてるのかな?何か幻聴が聞こえたのかも?
とにかく、私にもこんな新しいスキルが増えたんだけど、それを準備するのにも時間が必要なわけ。
今回の戦闘フィールドには私を除いて家族が七人と家族になる敵対モンスターが一体。基本詠唱準備に約一分。効果対象の数が増えれば一対象ごとに三十秒ずつ多く必要になります。
今回だと基本詠唱時間の一分と、追加の二百四十秒が必要になるので合計で三百秒……五分必要になります。
コウガ達にはその五分をしっかり稼いでほしい。ちなみにその後分の間に氷獣王によって倒されてしまった場合は詠唱時間が減ります。私としては全員に効果が及ぶようにしたいからね。
「ティア、悪いけど【一目散】をつかってでも氷獣王の気を引くように頑張ってきてほしいんだけど、頼める?」
「マスター……本気ですかぁ!?」
「ティアなら大丈夫よ。だってさっき覚えた【予測】と併用すれば運が良ければ助かるから。ほら、さっき予測で氷獣王の行動を先読みできてたじゃない」
「う、運が良ければですかぁ……うぅ、わかりました。マスターの指示ですから今回は聞きますけど、次は無いようにしてくださいよ~?本当に私は戦闘はからっきしなんですからぁ~」
「えぇ、仮にやられちゃったとしても後でしっかり埋め合わせをするから今回はお願いね」
「ヘリオストスにいるプレイヤーの露店に極上スイーツが偶に並ぶみたいですからそれで手を打ってあげます」
「ティアったらいつの間にヘリオストスの情報を調べたのよ……」
「えっ?それはもちろん【チョメチョメ(謎)】を使用して~、大河の集落の男の人たちから念入りに情報を集めましたよ~?丁度大河の方に行商に来ていた若い商人さんが居ましたのでよかったです」
「ち、チョメ……こほん、あのスキルをすでに使っていただなんて……いったいいつの間に?」
「それは堕天種の秘密です」
気になる。何がちょうどよかったのかすごく気になります……。でも直接聞いたりしたら、はしたないかも知れない……。気になるけど今はまず、氷獣王の事が先だね。
「とにかく、五分。五分だけコウガ達と協力して氷獣王の気を引くように頑張ってきて。私のスキルが発動したらティアは戻ってきて構わないから」
「はい、マスター!では堕天種代表ティア……逝っきまーす!」
ま、まってぇ~!何かその掛け声、凄く不安を感じるぅ~っ!
引き留める間もなくバビューンと氷獣王の元へ向かっていってしまうティア。あぁ、あの子の死亡フラグにならないと良いんだけど……。
すっごい不安にさせられたけど、もうあとの事はあの子たちに任せよう。
そう思い、私は魔唱歌に効果を乗せるスキルを選ぶ。選んだスキルはもちろん……。




