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93話

平均より500文字少ないです。

 セツナの体に巨獣の牙が突き刺さった瞬間、セツナの体はかき消えていった。巨獣は確かに刺さったはずだと辺りを見るがセツナの姿は無い。

 一瞬のち、巨獣の後ろに突然現れたセツナはそのまま疾風斬で巨獣を攻撃した。この攻撃により巨獣の体力は大きく減少する。コウガやクルスの攻撃も一度食らった後はかなり警戒してたので、おそらく巨獣は体が大きいけど防御力はそんなに高くないタイプなんだろうと思う。まあその分攻撃力がダントツなんだろうけど。


 「ふふっ、セツナったら自分が本気を出せる相手が見つかってうれしそうね」


 背後からの一撃を食らったものの、すぐに体勢を整えた巨獣は先ほどまでクルスを攻撃していた氷の剣をセツナへ向けて次々と発射し、動きを封じようとしたがその攻撃もまたセツナの体がかき消えて当たることは無かった。


 セツナが使っているのはキャンプで習得した幻影回霧という。【風纏】【潜伏】【氷魔法】の同時発動で使えるようになった幻を利用した回避専用の技です。進化前は潜伏行動をとる所で粗が目立ってたけど、レッサーフェンリルまで進化して基礎能力が上昇したせいかスムーズに発動するようになっている。


 この幻影回霧は幻影による効果で回避能力と移動速度が二倍近くまで上昇し、デメリットとして防御力が下がる。セツナの場合、もともと防御力は低い子だからそこから半分になったところで実は大差がない。だって一撃で死ぬときは死ぬんだからさ、その分回避能力を上げた方がいいでしょ。……まあ死んだことがあるのは未だにカエデだけなんだけど……。



 キャンプ時にコウガ・クルス・イリスの三人が攻撃技を練習する中、セツナ・カエデ・ルドラの三人は支援・防御系の技を磨いていたのだ。

 まあ、セツナに関してはしばらく防御系を練習させたけどあまり身に付かなかったから、それなら攻撃を食らわないようにする技を身に付けようと提案したら喜んでくれたのがきっかけ。

 そのキャンプについて詳しく説明するのはまたの機会に。



 セツナが幻影回霧を常に利用して戦う利点は巨獣から見て、セツナが幻影回霧を使っているとわかっていても攻撃しないといけない点だ。しかも幻影回霧自体はフィールド効果などで魔法やスキルを封印したりしない限り常に使えるし、回避技を見切るなどどうやっても不可能である。


 よって巨獣は攻撃をしないことにはセツナを倒せない。だが、そのためには近づく必要がある。先のように剣を飛ばして攻撃しても結局回避されるのがオチだというなら、近距離から自慢の攻撃力を味わわせた方が効果が高いのだから。

 もちろん、その物理攻撃も回避された場合巨獣自身が手痛い反撃を食らうことになるが、戦いにおいて無傷で済むことなどそうそうないのだ。


 巨獣はその体の大きさと重さ、ついでに力を活かした攻撃を次々と仕掛けるが、そのこと如くが幻影回霧により回避されてしまう。


 「ガオオオオォゥ……」


 「グルルッ……」


 両者が距離を保ち睨みあう。セツナの体力はまだ完全状態、巨獣の体力はもうすぐ半分を切るといったところだろうか。


 「ガアァァッ!!!」


 先に動いたのは巨獣。走りながら体に剣を生やし、セツナに近寄った瞬間に全部射出するつもりなのだろう。


 「グルルルルル……」


 セツナは動かない。しかし、その体からは空気が噴出している。

 巨獣はそれに気づいているのか気づいていないのか速度を緩めずに突進を続ける。


 「グルァッ!」


 まもなく衝突というタイミングでセツナが吠え、それと同時にスキル【嵐風】が発動し巨獣の体を打ち付ける。その嵐風の強さに巨獣の剣が次々と体から剥離し何処かへと飛んでいく。


 「うわわっ!あぶなっ!ちょっ、セt……」


 後方でご主人様っぽい人の声が聞こえたが耳を閉じてシャットダウン、雑音?を気にせずにセツナは巨獣に嵐風を当て続ける。

 目に見えない風が次々と巨獣にダメージを与えていく。体の剣はすでに全て剝がれてなくなっている。

 巨獣の体からは血のエフェクトが飛びちっており、体力ゲージも徐々に減少している。

 そして半分を切った時……巨獣の目つきが変わった。嵐風から一足飛びで飛び出すとはるか後方へ着地した。

 先までの余裕の表情ではなく、よくぞ自分をここまで追い込んだという称賛も混じっていそうな眼付きだ。


 「ガルルゥ……グワァオオォォォ……」


 そして巨獣が大きく吠えると青い毛皮が次々と裂けていき、中から先ほどとは形状の違う新たな巨獣が現れたのだ。



 《蒼剣獣が氷獣王・ニブルヘイムへと変化しました》



 「ええぇぇっ!!うっそおぉぉぉっ!!!王種ぅ~?」


 戦闘中に流れるその無機質な音声。冷静に判断をする立場である私が真っ先に声を上げた。

 巨獣もとい、氷獣王が喋れたのならきっとこう言ってたのだろう。

 「オォッ、ここまでオラを追い詰めるとはやるじゃねぇか!今の形態でお前ぇの相手をするのは骨が折れそうだ、いっちょオラの本気を見せてやっか!」と。 きっとそうに違いない。


 氷獣王・ニブルヘイムの姿は真っ白な毛に覆われたライオンのような姿。動物園で稀にみるホワイトライオンを巨大化した感じかな?蒼剣獣の時のような見るからに強靭そうな四肢ではなくなり、無駄な部分をそぎ落とし、さらに破壊力を増した凶悪な四肢になっている。

 ……なぜ凶悪化がわかるかって?だって手足の指が全部切れ味鋭そうな剣だもん。

 実際どうやって立っているのか三日三晩問いただしたいところだけど、それはまあこの王種が私の下についてからじっくり考えるよ。


 あっそうか、ジャンヌ・ダルクの人達が見たって言うのはこっちの方の姿だったのかぁ。納得だよ。



 「ゴァッ!」


 氷獣王が一声鳴くと同時にその姿が見えなくなり次の瞬間にはセツナの真横に立っていた。

 しかし氷獣王はその隙だらけだったセツナに攻撃をせず、それを追えていなかったセツナを鼻でフンッと笑っていた。


 遠くから見てた私もまったく氷獣王がどう動いたかをみえてなかった。これはまずい展開です。

 どっちにしてももう今の状態の氷獣王をセツナ一人で相手するのはどう考えても駄目な策だね。今迄みたいに個別で行かず全員でやるしかない。それに場合によっては私もアレを使わないとだめかもしれないね……。準備だけでもしておこうかな。

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