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83話

 道中いろいろあったけどヘリオストスから大河へ向かう旅を続ける私たち。まあ町からリアル半日という時間がかかるから途中のセーフティポイントで休憩やログアウトをしつつ順調に進んだ。

 休み期間中とはいえ、バイトとかがあるから仕方ないよね。


 「ギルル~」


 先の盗賊団の一件で構い倒したことで甘えん坊の一面を見せるようになったルドラ。どうやら以前のルドラは自分が戦闘以外で必要とされてないと思っていたらしく、あれ以来呼び出す度に構ってオーラを放ってくるようになった。

 うーん、私の愛情もといコミュニケーションが足りなかったのか……もう少しみんなとの触れ合いの時間を取らないといけないね。今考えると私ってモフモフが好きだからコウガやセツナ、クルスのトリミングの時間が多かったんだと思う。ちゃんと全員のトリミングはしてたんだよ?でもそれじゃ足りないと感じる子もいたのが事実なんだね。

 そう考えるとイリスとカエデも不満を持ってるのかと思い、その三人(三体とは言わない)を呼び出し、いつも以上に可愛がりながら言葉をかけ、反応を見る。


 「二人は私に不満とかあるかな?」


 「クポポッ?」


 ザワザワッ?


 二人とも頭上に?マークが幻視できるほど言葉を理解できていないらしい。あいかわらずイリスはモー○リ化してるけどもう今更気になんてしない。


 「ほら、もっとなでなでする時間を多くとってほしいとかそういう希望があるかなって話」


 「クポポ~♪」


 サワッサワワ~♪


 ……あらら。やっぱり皆もっと触れ合いの時間を欲していたんだね。よし、そうと決まればまずはトリミングの時間の調整から考え直さないと!戦闘などの働き次第で時間を変えたらやる気とか対抗心が湧くとは思うけど、その代りに皆の仲が悪くなったら本末転倒だし、どうしたらいいんだろう。

 私のログイン可能時間ももうすぐ大学が始まるから減っちゃうと思うし……うーんうーん。


 そのあたりもしっかり計画を練らないといけないからしばらくはできうる限り皆と平等に接するようにするしかないかな。

 そんなわけでその日のセーフティエリアには仲間兼家族達の恍惚の悲鳴がいつも以上に響き渡ることになった。



 それを聞いていた闇の領域の冒険者たちはこう語る。


 「セーフティエリアで何体もの数のモンスターの声が聞こえて来てビビっちまったぜ!怖くて見に行けなかったがな……HAHAHA。by魔人族男性」


 「セーフティエリアに獣の(女)王が降臨していた(にちがいない)。あのモンスター達の声はきっとその寵愛を受けていたに違いない!by妖魔族男性」


 「スキルで上空から俯瞰したら銀色の髪の女性が囲まれてた。ただスキルのレベルが低かったから顔など詳細は見えていない。モンスター達はあの人のペットなんだろう。なんとなくだが俺もあの人に可愛がってほしいとおもった……by魔獣族男性」


 「モンスター達の中にプレイヤーが居ると思い、近づこうとしたらうれしそうな眼をしていたはずのモンスター達にギロリと睨まれた。すっごく怖かった。by魔人族女性」


 とか様々な話がされていた。後日、買い物中にあるダークエルフから情報をもらい、アイリが掲示板を覗き、あの場に人が居たのかと赤面したのは言うまでもなく、それを見ていた(見てしまった)不特定多数のプレイヤーや住民たちが魅了による麻痺などの状態異常を受け、運営もしくは町医者(住民たちの回復施設)に問い合わせをしていたことなど当然ながらアイリが知る由もない。



 - 冬闇の大河 -


 一年の大半を雪と氷に占められている大河。この寒さでありながら凍りつくことのない大河はこの周辺に住む魔物や集落の人にとっては命をつなぐ存在。だが年々川の氾濫が増え、徐々に大河の川幅が狭くなってきていることが懸念されており、全盛期は川幅が百メートル以上あったが、今となっては四十メートルまで縮小している。

 周辺住民は、その氾濫の原因を調べたいと思っているが自分たちでは日々の生活がやっとで原因を究明するメンバーを出すほどの余裕がないのが悩みの種となっている。よって冒険者が集落を訪れるたびに原因究明をお願いするものの、大きな成果を得ることなく、ただ時だけが過ぎている。



 翌日のログインでようやく冬闇の大河へ到着。現在のパーティはセツナ、クルス、イリスの三人。

 残りのコウガ達は収納の中で待機中ですね。今までの戦闘の感じからして現在のフルパーティで探索する必要はなさそうだと判断したから。あとはあれですね。ルドラがここでは使えない。

 原因はスキルの【冷気弱点】によるもの。やっぱりもともとが爬虫類だし、特殊な進化をしてドラゴンになってもスキルが引き継がれた。こうなるとルドラが氷系統のドラゴンに成る事は絶対になさそうだね。


 他の皆もこの辺りの地形効果によるダメージを受けるものの、ルドラほどじゃない。ルドラ以外が一律5ダメージ受けるとしたら、ルドラは25ダメージ食らっているようなものだからね。それに寒い中では彼は動くことができないらしく、物理壁になりえないのである。可哀そうだけどここで探索している間は収納の中でお留守番することになるだろう。

 私はどうなのかというと、砂漠で買ったマントをまとえば食らうダメージが少しだけ減ったので残り体力に気を付けながらも進むことができる。うーん、体力の数値を増やすためにもVIT補正の装備がほしくなってきました。



 もう一つとしてはメンバーが少ない方が経験値的な意味でも効率がいいんだよね。進化してから必要な経験値が多くなったから一度の戦闘で得られる経験値を多くした方がいいと思ったわけ。

 皆が居れば戦闘時間は短くなるけど場合によっては全員に指示を出す間もなく終了することもあり、手持無沙汰な子が現れる。それなら平均的な戦闘時間で大量の経験を得られるように行動メンバーをその都度変更することにしたの。


 まあ収納に入っていても最低限とはいえ経験値(実はこれ私が本来得るはずだった経験値だったらしい)が入るので交互に入れ替えて行けばレベルに差があくことはほぼない。ルドラだけは今度しっかり埋め合わせをしようと思ってるけどね。

 軍勢スキルの方の配下たちに関しても使えば使うほどレベルアップする子たちなのでちょくちょく呼び出して経験値を稼がせている。



 あとはそうだね、みんな忘れてるかもだけど初めて死霊王を討伐した時にユールでもらった魔獣の卵がもうすぐ孵化するんだよね。


 《魔獣の卵:孵化まであと1日》


 光の領域で聞いた限り生まれるモンスターは種族ごとに決まっているんだろうけど、光の領域でもらった卵じゃないからこの子が孵化すると間違いなく闇の領域の魔素に適応した魔系統の種族になるはず。

 どんな子が生まれるのか、はたまたルドラの時みたいにいくつかの選択肢が出るのか楽しみです。


 この子が生まれたら7体目の家族。パーティの最大人数は8人までだからこれで戦闘面では正式にフルパーティとなるわけ。闇の領域に来ても仲間が増える速度が遅いと思うでしょ?

 ダメだったのは闇の森だけだったのかなと思い、調教師関連のスキルで家族を増やしたくて道中で見かけたモンスターを勧誘してるんだけど、どうしても断られちゃうのよね。

 だけど魔王関連の配下にするのであれば二つ返事で入ってくる。ほんとになんでなんだろうね?


 私以外にも王種プレイヤーが居たら情報交換とかできるんだろうけど、おそらくいないよね?もしかしたらバレる前の私みたいにひた隠しにしている可能性もあるけどさ。



 私たちは大河の集落を目指し歩く。大河の集落は大河の目と鼻の先という距離にあった。

 集落の場所は大河を確認できる高台の上。村人に話を聞くと大河の氾濫が増えたため集落の移転をしたらしい。その後その村人から村長に会ってもらえないかという話を受け村長の元へ。


 「おぉ、冒険者どの……ようこそいらっしゃいました」


 村長は挨拶を済ませた後に、冒険者が来るたびにお願いしているという前置きを置いてから大河の上流の調査をお願いしたいと頼んできた。

 私としてもクエストで上流方面に行くこともあると思い、報酬もいいと思い受諾。


 《大河の氾濫の原因を除去せよ。クエスト報酬:レアスキルの種》


 スキルの種が通常のスキルを含めてランダム取得するに対し、レアスキルの種は取得可能なレアスキルのどれかがランダムで得られるというものだ。ちなみに使用したことのあるユニークスキルの種はこれのさらに上を行くアイテムだね。


 依頼を受けた後、そのまま村長に私が受けているクエストアイテムの事を聞いた。

 それによると、冬闇の雫は村の北部にある林で手に入り、冬血の純結晶は村の南西部にある氷窟ダンジョンで手に入るという情報を得られた。なお残りの一つ、冬空獅子の目玉に関してはやはり目撃情報がなく自分の足で探すしかないとのこと。

 村長のもとを去り、他の村人にも聞いたけど全く情報がないことからこれは長引きそうだなーという印象を受けた。



 「あっ、ねえ、そこの女性プレイヤーさん」


 冬空獅子の目玉に関しては情報収集を一旦あきらめ、今いけるクエストをこなすべく村の外に出ようとすると丁度その正面から女性のみの赤・青・緑の髪色をした3人組のパーティが集落に入ってきて声を掛けてきた。


 「えっと、なんですか?」


 「私たちはジャンヌ・ダルクっていうパーティなんだけど、この集落まで来れる能力を持つあなたに手伝ってほしいことがあるの。時間があるならとりあえず話だけでも聞いてくれない?」


 「話……ですか?別にいいですよ~」


 時間があるか無いで言うと、基本あると答えられますからね。


 「そう?よかったわ。それじゃあ、集落の酒場に行きましょう。外じゃ寒いし」


 私とジャンヌ・ダルクの人たちはそのまま酒場へ。クエスト?そんな行先がわかっているものに関しては急がなくても大丈夫ですよ。それに女性プレイヤーと話をするのは私にとってもいいことだし。


 「改めまして私たちはジャンヌ・ダルクという。リーダーは私アリス、見た通り魔人族で剣士よ。こっちの青い髪がダークエルフで魔術師のジュリ。緑の髪がレプラコーンの錬金術師ソフィーよ」


 「あっ、私はアイリと言います、見た通り人族で調教師をしてます」


 「えっ?人族がなんで?じゃあもしかして光の勢力なのっ?」


 見事に3人が慌てだす。そりゃ普通の人族といえば光の勢力なんだからね。


 「いえ、私は間違いなく闇の勢力ですよ。最初の質問の答えによって、どの勢力に属するのか決まるかはご存知でしょ?」


 「そ、そうよね。びっくりしたわ。てっきりすでに光の勢力が闇の勢力に入ってきてるのかと思ったもの。闇の勢力側はレベル上げ優先の意識が高い為か光の勢力への入り方を模索すらまだできていないのに……てね」


 とはいえ、口で言っても信じてもらえないかもしれないので、闇の勢力の冒険者ギルド証を取り出す。今現在・・・において冒険者ギルドの証を持っているというのはその勢力に属していると証明するものだからです。

 当然、ただ人族ということで光の冒険者証を得て、闇の勢力では数少ない調教師として闇の冒険者証も得ている私としては、その証明は出来ないとわかっているんだけどね。

 闇の冒険者証をみて落ち着いた彼女たちに話をするように促す。



 「私たちが頼みたいのは、かなり大きな魔物討伐ね。たぶんレアボスとかそういった類のものだと思うんだけど、吹雪のせいで近づくことができなくて名前とか種族がわからなかったの。

 見た目は白い体毛の獣でこの吹雪や雪のフィールドにおいてもすごく動きが早いわ。でも明らかに私たちを捕捉していたのに襲い掛かってはこなかったから、ノンアクティブのボスだと思うのよ」


 「……その、害がないのでしたら倒す必要はないのでは?」


 「だってあんなモンスターだから倒したらドロップアイテムがすごそうだし、素材も欲しいのよ。プレイヤーとしてそう考えてもおかしく無いでしょ」


 「そうですね。それは私も同じです……ちなみにそれをどこで見たかを聞いても?」


 「これ以上は協力してくれるなら話すわ。もしかしたらこの情報を持っているのが私たちだけかもしれないし……ね」


 そりゃそうだよねー。でもなんかそのモンスターがすごく気にかかる。情報は欲しいけど……。


 「返事ですけど今受けているクエストをこなしたいのと、考える時間も欲しいので少し時間をもらっていいですか?」


 「そうよね、わかった。答えが決まったら連絡して。基本この集落の宿を拠点にしてるし、この酒場にも今くらいの時間には居るはずだから」


 「わかりました。それでは」


 彼女たちはきっとこれからも見かけるプレイヤーに話を持ち掛けようとするんだろうね。彼女たちのレベルは平均で43だと聞いた。これは今のエレノアを上回るレベルだね。きっとこの辺の経験値効率がいいからこその数字なんだろう。

 一応エレノアに43レベルの人達が居ると教えてあげたら、かなりやる気をだしてたからすぐに抜かすんだろうと思う。


 ジャンヌ・ダルクの面々と別れ、考えを纏めるべくいったん宿に戻る。さっき彼女たちから聞いたボスっぽい存在の正体がもしかしたら目撃情報の少ない冬空獅子なのかもしれない……と思ったから。

 なぜ保留にしたかというと、事実襲い掛かってこない存在を倒すような事はしたくないもん。


 「よし、それなら……」


 私は一つ考え行動に移すことにした。 

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