81話
ちょ~久しぶりに2日連続投稿。だけど出来は……
「うひひっ!てめぇはここに入っておとなしくしてなっ!身ぐるみ剝いだ後にたっぷり可愛がってやっからよ!なぁに殺しはしねぇ、安心しなっ」
「その状況のどこに安心できる要素があるのか知りたいなぁ……」
はい、こんにちはアイリです。私は今《闇鴉盗賊団》という人達に捕らえられ、そのアジトらしき場所に幽閉されております。アジトの壁はすべて自然の土壁であることから土を掘った洞窟っぽい感じだと思います。
魔王ともあろうものがこうもあっさり捕まってしまったことにはそれはもう深ぁい事情があるんです。
体感では数時間前、西門から大河へ向かう際に門で通行料を支払いました。実は高値で吹っかけていた衛兵も言い値ですんなり払われるとは思っていなかったらしく、驚いていたけどそのまま受け取り、すんなりと通してくれた。
私の後ろで彼らの口元が歪んでいたことなど当然気づくこともなく……ね。
西門を出てしばらくすると、馬車が破壊された形で残っており、その周りにはオロオロしている二人の住民らしき人が居たので無視するのもどうかと思ったので声を掛けたわけです。
「実は盗賊に襲われまして積み荷と嫁をさらわれてしまいまして……」
聞けば、彼らは住民の商人とその護衛でヘリオストスから次の町に当たる大都市に向かっている途中、突然馬車が止まり、盗賊の襲撃を受けたんだそうです。その際護衛の冒険者が迎え撃ったけど、健闘むなしくその片割れのやはり女性が麻痺毒を食らい連れ去られたとか。冒険者はもともと三人いたのでその内の斥候職が盗賊たちを追っていった。それで彼らはその斥候が返ってくるのを待ってヘリオストスから兵を出して助けてもらおうとしたんだって。
待ってる間にヘリオストスに戻ればいいのにって?そうよね。でも多分ショックが大きくてそこまで頭が回ってないんじゃないかな?
「そうなんですかぁ。大変ですね」
「大変ですねっ……て……その助けてもらえないんでしょうか?」
「手伝ってあげたいのは山々なんですけど、私も先を急いでいるから申し訳ないです……」
護衛の冒険者達が居た上でやられてるんだからその盗賊たちはきっと強いんでしょう。
まあ私には関係ないんだけどさ。えっ?ここは主人公としては助けるところだろうって?
ふふっ、私が主人公だなんてそんなまさか……。どうして私が手伝う必要があるのさ?危険があるだけで私には得することは無いじゃない。助けられたらお礼をもらえる?ふ~ん、それで?お金には困ってないよ?アイテムでの報酬をもらえるかもしれないけど、どんな感じのものが手に入るかもわからない依頼を受けるのはちょっとね。
そりゃ私が当事者になれば話は別だけど。
「そ、そんな!ここであなたと出会えたのは私にとって光明なのです、なのでどうかっ!」
商人さんは必死で頭を下げている。くぅ、冷たい態度を取り続けることに慣れてない私ではここまでされては断りづらい。
「……わかりました。ですが先ほども言いました通り私も先を急ぐ身ですので、もうしばらく待って斥候の方が戻ってきた場合は状況を聞いて手助けするか考えてみます。帰ってこなかった場合はやはり先を急がせていただきますね」
えっ、今度は一転してチョロすぎるって?いいじゃない。非情になり切れないんだもん!
今の私は主人公じゃなくてチョロインだって?否定できないね。
そして待つことしばらくして……
「盗賊たちのアジトを発見し、戦力についても大方調べてきた」
例の斥候さんが戻って来た。護衛の冒険者と商人さんが女性達の安否を確認する。それによると二人は捕らえられているだけでまだ暴行などを受けていないらしい。だがヘリオストスまで戻り、兵を頼んでいる間に手遅れになりかねないのでこのまま盗賊団から奪還する方が無難だと斥候が提案してくる。
冒険者もその案に賛成したが商人は浮かぬ顔だ。
「ですが私たちだけで盗賊団を倒すことなどできるのでしょうか」
その疑問はごもっともだよね。余裕をもって強奪できる腕前を持つ盗賊団が相手なんだもんね。
その心配に関しては私も同じ意見です。
「それは大丈夫だ。俺たちが襲撃を受けた時の半分以下しかアジトにはいないから十分に殲滅が可能だ。……だが今を逃せば襲われた時以上の数に囲まれる恐れがあるぞ」
「くっ、……わかりました。私も賛成します……ですが私はただの商人。このままついていっても足手まといになるでしょう。私はこのままヘリオストスに帰ろうと思います。妻を助けてくださいお願いします」
商人さんが一人で帰れるのか心配だけど、そこは大丈夫らしい。こういった町から延びる街道にはモンスターはほとんど出ないんだって。そういえば街道を歩いているときに敵とエンカウントした記憶はないね。それならなんで護衛が必要だったのかというと、街道は町からある程度離れると次の街道に当たるまで途切れる箇所が発生する。そこでは当然モンスターが現れるのでその対策なんだって。
「それでアンタも手伝ってくれるのか?」
居残っていた護衛冒険者に聞かれ私は頷く。商人さんに頼まれたんだし、しょうがないよ。
「そうか、それは助かる」
うれしそうにする冒険者。斥候はその様子を見て目を細めている。口元はマスクで隠れていてわからないが目元の印象から笑っているように思える。今のところのどこに笑える要素があったのか甚だ疑問だよ。
三人であたりを注意しながら進む。コウガ達を呼ばないのはなぜかって?斥候曰く、数が多いと気づかれる可能性があるから呼ばないでほしいって言われたの。私としてはうちのコウガ達をなめないでほしいものだけど、一応その道のプロである斥候さんが言うんだから反論するわけにもいかない。
ガサガサッ
その割には斥候さんの歩き方というか行動がおかしいんだよね。草むらでは音をたてないように行動するのが基本なのに大きなというほどではないにしても一般人と同じくらいの音を立てて進んでいる。
護衛冒険者さんも似たような感じだね。まあこっちは戦う方が専門だろうから仕方ないか。
「ウグッ!」
突然冒険者さんが低い声を上げて倒れた。
「触るなっ、……しまった。こんなところに麻痺効果のある植物が生えていたとは……すまない。先ほど俺が通った時に気づいていれば……」
「気に……するな。お前から預かっている解毒薬ならポーチに入っている。それを飲ませてくれたら回復するだろう」
斥候さんがポーチから取り出した薬を冒険者さんに飲ませる。すると……
「ウガァァ!!」
さらに甲高い声を上げる冒険者さん。その顔はもう真っ白だ。
「お……ま…え。何を……飲ませた……グフッ!」
そう声を発し、冒険者さんの顔は土気色に変化した。……あれ?これ死んだの?
「ふっ、やっと麻痺が効いたか。次はお前だ、女!」
冒険者の様子に驚いていた私に対し、斥候さんは白いと黄色のガスを吹きかけてきた。
「ちょっ、なにする……のよ……」
こうして眠気と麻痺の状態異常により私はあっさりと敵に捕らえられることになった。
「……さてと、それじゃあ行動開始と行きますか~!」
土壁の牢獄に放り込まれた私ですが、実は先ほど捕らえられる際に浴びせかけられた毒やら麻痺の効果を持つガスは効いていなかったのです!
考えても見てよ。私はCHA特化のプレイヤーだよ?忘れてる人のために説明をするけど、CHAのステータスの説明表記には「CHAは魅力。様々なステータスに若干のプラス補正を加える。異常攻撃成功率・異常攻撃耐性にも影響する。他にも……」とある。
死霊王という強いボスモンスターの魔法すら無効化するCHAの前に普通の毒とかが効くはずないじゃないですか~。
「それじゃおいで、ルドラ」
「ギルルッ!ギルゥ?」
土壁の牢獄の中で呼び出されたルドラ。どうしてここに呼び出されたのか彼は分かっていない。
私としても気分でルドラを呼んだので全く以って深い意図などはない。最近私の守りばかりを担当していて暴れたりないだろうと思ったから出したわけじゃない……ないったらない!
「ルドラ。この中にいる人みんなと【じゃれ】てらっしゃい。いっぱい楽しんだ後は帰ってくるのよ?」
「ギルッ?ギルルゥ~♪」
嬉しそうに尻尾を振りながら扉から出ていくルドラ。しばらくすると野太い悲鳴が聞こえてくるが耳栓がついている(設定の)私にはそれは聞こえない。聞こえないったら聞こえない。
ベビードラゴンというランク的にはそう高くない種族であるとはいえ、ウチの物理壁要員ですから盗賊団程度には傷一つつけられないと思うんだよね。
まあ魔法攻撃をできる盗賊が居たとしても、以前行った山籠り《暗闇の山ブートキャンプ》で取得したスキル【自己修復】があるから大丈夫でしょ~。
さて、それじゃあ私はルドラが返ってくるまでのんびりと待つことにしますね。
うん、なんか配下に指示を出す魔王っぽい。ルドラは配下じゃなくて仲間だけどね!さすがにこのアジトで軍勢を使ったらまずいだろうからこれでちょうどいい感じ。
それじゃ、待ってる間に今のこの状況に至った原因や要素を順に整理することにしよう。
なんか、書きたかった流れと違う気がしてならない。
書き始める前は定番通り馬車が盗賊に襲われてる現場に出会うはずだったんだけどなぁ。どうしてこうなったんだろう。まあいいや。
次話で何となく盗賊回の説明をかるくして、本来の目的へ戻るつもりです。




