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78話 ???視点① 

うーん、別キャラ視点を欠いた時の反響が非常に怖い。


前回(他視点)までと違ってイメージが悪くなるような表現はしてないはず……。


 ある街の片隅にひっそりとたたずむ石造りの建物から、カーンカーンという金属を叩く音や時折ドッカーンという爆発音が聞こえる。


 「……ん。おかしい、また失敗……。素材の調合手順や精錬手順は間違っていないはず……どうして?」


 そんな建物の中で一人の金髪ドリル髪の少女が言葉少なく呟いていた。

 少女が見る先には見る影もなくなった武器になるはずだった金属の残骸や服になるはずだった布切れ、それに自分の攻撃手段の一つでもある爆弾の残骸が残されていた。


 少女は【Eternal Story】を開始してすぐ器用さに優れたトロールのキャラを作り、鍛冶・錬金・裁縫・木工などの偏ったスキルを取得し、生産職として活動をはじめ三か月が経過しようとしている。

 途中、何度かイベントがあったが少女は積極的には参加せず、ひたすらに自分のスキルを磨いていた。

 そんな彼女だから先ほど述べた金属加工や爆弾の作成などはレシピも高品質を作り出す調合手順なども熟知しており、通常なら失敗などありえない。失敗した理由に思い至らず、考え込む。


 「やっぱり、あの人からの依頼の達成は……」


 少女は数日前に自分の工房を訪れたプレイヤーを思い出していた。




 「おじゃましまーす」


 ある日いつも通り、町の中心部で開かれるバザーに出店する装備品を制作していると、突然工房に入って来たやけに服装が大人(アダルティ)な感じの女性プレイヤー。少女は相手の言葉通り「邪魔だなぁ」と思いつつも、お客さんだから対応しないといけないと思い作業の手を止め、話を聞きにいく。


 そのプレイヤーはどうやら装備品を一新したいらしく、様々な素材を持ってきているから作れるものを作れるだけほしいと頼んできた。

 持ち込まれた素材の内容は流通量の少ない素材や自分が見たことのない素材の数々。少女自身も生産をメインとした構成でスキルを組んでいるとはいえ、自分で素材を採取しに行ったり、欲しい素材を持つモンスターを狩りに行ける程度にはレベルがある。



 少女は鑑定スキルを使い、プレイヤーの装備の性能を確認する。当然、そのプレイヤーには了承を得ている。鑑定をして現在の装備の性能を知っていないと、せっかく新装備を作っても装備してもらえないからである。自分が作った装備ものを装備もしてもらえず、アイテムボックスの肥やしになるなど生産職として許せるはずもないのだ。


 「……今つけているその装備でも十分に性能が高い。その装備なら十分戦えると思う。……なのにどうして新しい装備を求める…の?」


 少女はそのプレイヤーに問いかける。するとそのプレイヤーは答えた。


 「いろいろ事情があって私の強化をするのが最優先事項になったの。今の装備のままだとモンスター相手には戦えるけど、対人相手では正直厳しい。だからステータス補正は問わないけど対人耐性がつくような装備がほしいの。できるかな?」


 プレイヤーが言う内容を勝手に判断して考えるにこれから先、対人戦が多くなりそうだと予感しているらしい。

 無論対人耐性など聞いたことのない特性ものだ。少女は自分に出来ないことは断るタイプだったのでこの件も断ろうと思った。とはいえ、知らないことを知らないままにするということも少女にはできない。


 「……残念。対人耐性というのは聞いたことが無い。本当にその効果が存在するのなら付与方法を探すのは吝かじゃない……」


 少女は基本的に生産各種と付与などの強化系スキルがメインであり、攻撃スキルは投擲くらいしかない。普通にアイテムを使用しても投げることはできるが、このスキルでより遠くに投げれるようにという思いから選んだスキルだ。


 「対人耐性がついてる実物があればいいの?うーん、たしか……あ、あったあった。これなんてどうかな?」


 プレイヤーが取り出したのは、身に着けていた一つの装飾品。それは鳥と花で彩られた彫刻がついている腕輪だった。

 少女は訝しげに腕輪に鑑定を行うと、そこに現れたのは今までに見たことのない程のレアリティを誇る高いステータス補正値と効果一覧に対人耐性他いくつかの見たことのない効果という確かな表示があった。


 「……これはすごい……」


 少女は思わず唸った。少女自身狩りで手に入れた珍しい装飾系のドロップ品を何種類も持っているが、それらの装飾品を余すところなく合成しても補正値が及ばない。

 なるほど、この装備が一つあれば申し訳程度にでも補正がついていれば十分にステータス面のカバーは可能だろう。こんな装備を一体どこで手に入れたのかが非常に気になるが、それはこの装飾品が欲しいからではない。

 少女が生産関連に妥協することなく打ち込んできた自分の作品より上のものが目の前にあることが許せないのだ。だからこそ詳しく内容を確認し、これを超えるものを作り上げてやると熱くとも密かな思いを胸に抱きつつ……。


 少女はそのまま対人耐性について目を凝らすと、その効果が派生する素材の名前や組み合わせなどが表示されていく。もちろんスキルのレベルが低いせいか全ての情報を開示されているわけじゃないが、それでも基礎となる素材のいくつかの名前は判明した。

 少女が使ったこのスキルは【真聖鑑定】といい【鑑定】と、あるスキルのレベルを一定以上まで上げ、かつ住民からのクエストをこなすことで習得する事が出来た、現在においては鑑定の派生先である【上級鑑定】を超えるレアスキルである。

 これで調べると先に述べたようにそのスキルの由来や効果、付与をするにあたって必要な素材などもしっかり知ることができる。




 「それで出来るかな?足りないものがあるなら分かる範囲で集めてくるよ。さすがに知らないものだったら時間をもらうけどね」


 少女が黙り込んでアイテムに必死になっているのをある程度見守っていたプレイヤーが、時を見て少女に話しかける。このプレイヤーは恐らく少女が何かをしていることに気づいていたらしく、反応を見ていたのだろう。少女が必要な素材などを思い出したところで声を掛けてきたのでタイミングが完璧だった。


 「……研究のために一緒に持ち込んでもらった素材と、あともう少し種類と数があればできる……と思う。だけど、絶対とは言い切れない。それでも良ければ受ける……」


 「それでいいよ。素材の追加は2~3日に1回、まとまった量を持ってくる予定だけどそれでいいかな?「構わない」……うん、それじゃあ、納品時間についての連絡方法だけど……」


 「……来る前に連絡くれるなら対応できる。連絡なしで持ってくる場合も工房の空いてる時間なら大抵いると思うから気にしなくていい……」


 全てを言い切る前に口を挟んでしまったが、特に気を悪くした様子じゃなく安心した。


 そのプレイヤーからフレンド申請が飛んでくる。少女はその名前を見て一瞬眉をしかめたが、何事もなかったかのように了承した。

 その名前は最近巷で有名になっていて、今のレベルでは到底勝てないだろうと言われている王種モンスターをすでに数体ソロで討伐している有名なプレイヤーだったからである。

 ここ一か月で2回くらいそういった放送が流れてたから、確固たるその力はあるんだろう。

 そう思いつつも、今目の前にいるおおらかな対応をするプレイヤー自身からは、そういう特殊な事ができるような印象は受けないのだけど……。

 



 「……進展があったら連絡する。それじゃすぐに作業に入るから、出て行って」


 「えっ?あっ、ちょっと……」


 そういうと少女は挨拶もそこそこに、依頼人であるプレイヤーを追い出した。プレイヤーはまだ何か言いたげだったけど、少女の意識はすでにその新しい効果を発現させる方向に向いていたため耳に届かなかった。


 とまあ、偏屈にみえただろうけど、少女は単なるコミュ障なだけだ。どんな相手にも必要以上に喋れない。現実の親相手にすら壁を作っているのだから当然と言えば当然だ。



 そんなの彼女が話せる人物など数えるほどしかないない。現実の姉の他には以前ゲームで知り合い、しばらくともに行動することで、ゲーム側では仲良くなってもいいな……と思った数人だけ。


 その数人とは携帯電話の、あるアプリで連絡を取る間柄だったが【Eternal Story】を始めるのと同時にやり取りが減少した。理由は言わずもがな。ゲームが面白すぎて情報交換をするにはまだ早いと判断したという理由もあるし、自分が手にいれたスキルについて質問されるのも嫌だから。そう思った理由も簡単だ。その数人の友人……と言えるかどうかは知らないが、その人たちも必ず何らかの特殊なスキルの一つや二つを持っているに違いない(決めつけ)のだ。情報を交わすならそういうのが全員分確認できてからでもいい。


 数度だけそのアプリに着信があったけど、わざわざ自分が答える必要はない内容だと判断し返事をしなかった。なんだかんだで自分を含めたその数人はゲームが好きな人種だし、今無理して連絡しなくてもいつか出会う事になるだろうと思っているから。


 少女はすでにそのうちの一人とはすでに面識がある。狩りに行った際に何度か狩場で見かけていたからだ。当然少しばかりの情報交換もしているので少女が求める素材もその相手から仕入れることが多い。

 その人曰く「気にせんでええよ。代わりにいいもん作ったら流してくれたらいいからな~」と言ってたし。



 「……難しい……だけど何となくあの人をがっかりさせたくないと思ってる自分がいる。……素材の在庫はあるんだし、これからもあの人が持ってきてくれる。もう少し頑張ってみよう……。ついでに一応、彼にもあの人がこっちにいることを教えておこう」


 そうおもい、再び作業場に戻っていく少女。少女が作業場に入るとしばらくしてまた金属を叩く音や、何かが焼ける音、ついでに爆発音などがひっきりなしに聞こえてくるのだった。

次話、思い浮かんだら投稿します。


次からまたアイリ視点でマッタリしつつもブートキャンプをしたり、クエストをしたり色々やらせていこうと思います。しかし生産関連だけはスキルが統治しかないので触れる程度で終わりそう!


こんな生産スキルくらいあった方がいいんじゃね?とかいう要望があれば登場させるかもしれません。

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