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75話 ダークエルフ視点③

 私がアイこと、王種(暫定だけどね)プレイヤーであるアイリを追いかけ始めてから一日目~七日目。

 アイは毎日闇の森に赴き、仲間モンスターの育成をしている。連れているモンスターは犬が二頭、そのうち一頭はオオカミかもしれないけど見た目が似てるからどっちでもいいわ。

 それに巨大な鳥と空を飛ぶ光輝く魚、あとはよく動く樹木に小さいドラゴン……見事にバラバラよね。あんなモンスターがいる場所なんて少なくとも私は知らない……特にあの空を飛ぶ魚は一体どこで仲間にしたのかしら?

 まあ個人的には猫が見たかったんだけどしょうがないわ。いつか連れてるところを見かけたらモフらせてもらうことにしましょう。


 アイはそれらすべてに指示を出し、闇の森前半に出現する雑魚だけど群れると厄介なダークゴブリンをはじめ、中盤以降に出現するフィールドの暗さに溶け込み奇襲をしてくるナイトアサシンや、木の上から突然落ちて来て、斧のような頭で対象をカチ割ろうとしてくるアクスビークというモンスターたちと戦っている。


 私が見てる限り、アイの指示は的確ね。きっと、今まで足取りがつかめなかった場所で練習とかしていたんでしょう。まあ私はあの子みたいにテイマーじゃないから、詳しいことは分からないけどね。


 大体アイは一時間ほど狩場に潜ってはいったんユールに戻り、所持品の販売やクエストの受け直しと報告をして狩場に戻っていく。


 「ん?あの子、また酒場に顔を出してる……もしかしてあのマスターが情報屋であるという一面を知ったのかしら?」


 しばらく様子を見ていたけどまだマスターからの信頼を得られてないみたいね……。でも信頼を得てない割には、いつも仏頂面しているマスターの表情がニヤけてるわね。一体あの子どんな話をしてるのかしら。

 とりあえずマスターと次回話すときにはその辺の情報を教えてもらうとしましょう。


 っと、いろいろ考えてるうちにまたアイが闇の森に向かっていったわ。私も後ろから付いていきましょうか。もちろんコソコソ隠れて付いていくような真似なんかしないわよ?私はそういう事するのは好きじゃないからね。

 ちゃんと、アイに面と向かって後ろから付いていくけど気にしなくていいから!と言ってあるもの。

 まあアイはなんか絶句してたけど気にしてないわ。アイが何を思おうと目的を達しない限り私の行動が変わる事なんてありえないのだから。



 アイはあれから二度三度と出入りを繰り返し、順調に魔物を育てていってるっぽい。入っていくエリアも入り口から中心部、深部、奥地とクエストの報酬が高いほうへ変化してる。

 そして本日何度目かの闇の森探索は深遠部に行くみたいね。レベルが高そうな犬二頭ならいけると思うけど、他の四体だときついんじゃないかしら?


 そう思ってたけど、ふたを開けてみれば全然苦戦してなかった。メインアタッカーは予想通り犬たちだったけど、他のレベルの低い四体がフォローに入り、うまく敵を誘導してた。

 でもあれはアイの指示じゃないわね……もしかしてオートAIで勝手に判断して動いたのかしら?


 そうだとしたらアイのモンスター達だけでなくアイ自身も厄介な存在かもしれない。その時の行動の最適解を出すようにアイがいままで指示を出し、アイが指示を出さなくてもちゃんと動けるようにしたってことだもんね。


 あぁ、そういえば前にやってたゲームであの子ったらチートを疑われるほどの帝即位までの最短記録を叩き出してたっけ。

 自分が最適解を選び取れるのなら、仲間モンスター達をそれぞれの役割に沿って鍛えるのは簡単だったのかもしれない。


 でもこの辺りはまだアイの個人的な能力に過ぎないわ。……ここまででも十分こわいんだけど。

 私が見たいのは本人の力の部分じゃなくて、このゲームでのスキルやその構成。それを知れば、敵対する未来が来たとしても対策をとれるかもしれない。

 とりあえず、アイの事をある程度理解できるまでは余計なことはしない方がよさそうね。




 闇の深遠部では獅子・蛇・山羊が合わさったような魔獣であるキマイラと戦ってた。

 私は今まで通り、敵が流れてこない所に待機して見てたんだけど、キマイラ戦でもアイは指示を出さなかった。……ほんっとにあの子、いつになったらスキルを見せてくれるのかしら?

 いい加減マズい状況になったら出すと思うんだけど、仲間モンスター達がうまく立ち回りすぎて危険な状況にすらなってないじゃない。……ぶっちゃけ暇だわ。


 そしてキマイラは倒れた。一応あいつは深遠部では徘徊型のフィールドボスである死霊王を除いたらトップ3に入る強モンスターなんだけどねぇ。それを危なげなく倒しちゃいますかぁ。私なら倒せなくはないけどアレに挑むなら、倒す為には回復アイテムがそれなりに必要なんだけどなぁ。

 キマイラって尻尾の蛇部分が全体を見ている脳的な役割をしているからそこさえ切り落とせばあとは暴れるだけのデカブツだしね。まっ、簡単に見えるその尻尾を切り落とすのが一番難しいんだけどさ。



 「ギシャー!」


 「ん?」


 結構近い場所から叫び声が聞こえたので振り向くと闇の深遠に出現するモンスターの中でキマイラほどではないけど強い部類に入るメテオプラントというモンスターがいた。

 こいつは魔樹タイプのモンスターで火が弱点。要するに火属性をかなり鍛えている私にとってはカモ。


 言い忘れてたけど私は、弓メインに、火・水魔法、サブウェポンで短剣スキルを鍛えているオールラウンドプレイヤー。メインで使うスキルは鍛えに鍛えているからそう簡単に後れを取らないわ。……王種以外にはね。


 「【スターインフェルノ】!」


 私はその場から動かず、火魔法6で覚える単体へ極めて大きなダメージを与える魔法を放った。


 「ギシャアァァ……」


 当然ながらこの一撃でメテオプラントは倒せた。さて、じゃあアイの方はどうなったかな?


 「あっ、しまった。一瞬目を離したすきに逃げられたわ!」


 確かにアイたちはすでにキマイラを倒してたんだから次の場所に移動しててもおかしくないものね。

 なんとなくアイたちは必死に私から逃げているような気がする……。今回も私がアイの目視範囲にいたことが原因でチャンスとばかりに逃げたに違いないわ。とはいえ、隠れて付いていく真似は宣言した手前出来ないしやりたくもない。

 くっ、メテオプラントめ……しばらくあんたらは見るたびに燃やし尽くしてやるから覚悟してなさい。




 仕方なくユールへ帰還し、アイの現在地を確認しながら酒場で待つ。どうせだからさっき気になってたことを聞いておこうかしらね。


 「ねぇマスター?」


 「なんだ?エレノア」


 「銀パツのあの子……アイリのことをどう思うかしら?」


 「ブホァッ!?な、なんだいきなり」


 NPCといえど、こういう突然の会話には驚きを見せる。でも私はここまで取り乱したマスターの顔をしたところを見たことが無い。やはり何かある……。


 「ど、どう思うも何もあの子は俺の仕事相手だ。それ以上でもそれ以下でもねぇ……ぜ?」


 「そう顔を赤くしながらそんなこと言われても信用できないわよ?」


 「本当に深い意味はないんだ。ただあのアイリっていうやつと話していると、こう胸がドキドキするというかだな?」


 「……え、NPCがプレイヤーに恋したとか?てかその顔で胸ドキとかいわれても……」


 「ち、ちげぇ!それに俺だけじゃねぇんだって!隣の雑貨屋の店主にも確認してみろ」


 「はいはい。きいてきますよ~っと」


 雑貨屋の店主に聞いてもマスターと同じ反応だった。雑貨屋店主が言うにはアイリというプレイヤーにはどうしても安くしたい、アイリの力になりたいという気持ちが湧き起こり、実際安く売ってしまっている。

 だけどそれが嫌なことなのかと言われるとそうではなく、むしろ、うれしいのだそう。


 「……あの子……NPCに作用する効果を持つ何らかの称号持ちなのね」


 こっそり、消耗品の代理購入を頼もうかしらとか色々考えたけど、それはさておいて……。

 酒場から出た私はそのままユールの町の武器屋と素材屋、冒険者ギルドの買取カウンターにも話を聞きに行ったけど、どこもアイリに対して好感度が高くなっていると思える。


 ユール内にいるプレイヤー連中にもアイリの名は出さずに銀髪のプレイヤーについての聞き取りを行った。

 なぜ名前を出して情報を求めなかったのかというと、アイから他の誰かにバレるまでは内緒にしてほしいと頼まれたから。守ってあげる義理はない……訳ではないのだけど友人としてそこは守ってる。

 私にとってもアイは数少ない共通(主にゲーム関連の方ね。あの子の趣味はメイクとかおしゃれ関係だっていう話はメールで聞いてるけど、私はそこそこしか興味がないわけだからアイがそういう話を振ってきたら、なんとなーく話をそらしていき話題を変えるすべを手に入れた)の話し相手だからね。まあお互いに顔はここでアバターを見るまで知らなかったけど。


 確かに今の状況で銀髪の美人=アイリとだとバレてしまうと死霊王を倒した謎多き本人ということと、突如現れた銀髪の美人という二つの意味でプレイヤーに囲まれること間違いないもんね。

 その美貌も、さすがに一週間以上も見ているとある程度慣れては来る……。


 と言いつつも、たま~にゲリライベントのように、突然酒場で犬達の世話を始めるんだけどさ、その時に浮かぶあの幸せそうな表情を見てしまったら悔しいけど未だに見惚れちゃうのよ。

 居合わせた普通のプレイヤーも席を立とうとしてたのに再度座りなおしてたしね。アイツらわかりやすすぎるわ……。


 そのようにプレイヤーですら引き込まれる要素があるんだから、あの子何か隠してるに違いないわ。(その際立った容姿のためではなくスキルや称号のせいだと思い込みたいだけかもしれないけど……)



 アイ関連の情報はすぐ集まった。やっぱり普通の男性プレイヤーは美人がプレイしていると聞けば、その情報を求めようとするものなのね。まあ一部は情報提供する代わりに私とパーティを組みたがる物好きもいたけど、そんな輩は相手にしなかったわ。大方アイリが高嶺の花すぎるから私で妥協しようとしてるのが見え透いていたもの。


 とにかくプレイヤーからの情報を整理すると、アイに見つめられたり、その笑顔などを見たらアバターが瞬間的に動かなくなったとかそういった情報を得られた。

 調べれば調べるほど謎が増えていくアイ。やっぱりじかに聞くしかない。その代わりにあの子がほしがりそうな情報を集めたいところだけど、あの子が今どんな情報を望んでいるのかを本人にリサーチしないといけないか。


 とりあえず、もう数日は様子を見てからじっくり踏み込んでいってみましょう。



 そんなことを考えながらアイをつけ回し、気が付けばさらに1週間が経過してた。なんかいざ問い詰めようと思ったら、踏み込みにくいのよねぇ……なぜかしら。


 その日、うまく話すチャンスが来たと思ったら、運悪く死霊王が現れて逃げる際にアイとはぐれた。

 アイは砂漠の方向に逃げたみたいだから、それを追いかけようと砂漠へ入った私は、集落で怪しげなマントを被った人物を見たというプレイヤー証言を聞き、その怪しげなマントが向かったという西南西へ急いだ。



 ちょうど流砂エリアに来た時私は自分の目を疑った。

 この砂漠のレイドボス級の巨大モンスター、エルドニアワームが巨大な鳥と空飛ぶ魚、それに犬二匹にドラゴンと樹木というこの二週間ですっかり見慣れたメンツと戦っており、その全員が一瞬にして散開したと思ったら、次の瞬間には主であるアイがその力を発揮した所も。



 このゲームで倒されていないレイド級モンスターというのは領地を持つモンスターとして有名だ。そして今私が目撃しているエルドニアワームも過去何度かプレイヤーがパーティを組んで挑戦したらしいけど、膨大な体力と、えげつない範囲攻撃に、盾役のプレイヤーですら押しつぶす攻撃をしてくる難敵で、いまだに討伐証明されていないモンスター。


 ちなみに私は領地とかどうでもいいからレイドには参加していない。

 ぶっちゃけあっても無駄なのよね。内政したいなら、したい人が領地を得ればいいんだから。そもそも内政に関するスキルがあるって話すら聞かないのに、領地を持つ意味もないのよね。




 アイが手をかざすとその目前にあらわれた空間から恐ろしい数のモンスターが出現。その中には先ほど闇の森で私を追いかけてきたナイトアサシンの群れの姿もあった。


 ……どういうこと?まさか死霊王から逃げてる時に後ろから突然現れたナイトアサシンの群れはアイが呼び出したの?

 私から逃げ切るために?確かにあのナイトアサシンたちは追いかけて来はしたものの攻撃をしてくる素振りは見せなかった。



 アイが本気でついて来られるのを嫌だったとしたら、あのタイミングで呼び出したのは正解だと思える。たぶん私もアイと同じ立場だったら似た行動をしたと思うからね。

 かといって、された側からすると少しばかり腹が立つのだけど。


 ……とにかくこれも本人に聞かないといけない。

 今迄みたいに興味半分ではなく、数少ない友人の一人として話を聞き、そのうえでアイリの本音をきいておきたい。これでどうしてもアイリが知られたくないって言いきるのだったら、王種を見つけた報告だけはさせてもらうけど、そのほかの情報は秘匿すればいいんだし。


 最悪、秘密を掛けて勝負というのも辞さない考えよ。とはいう物のあの召喚っぽいスキルを使われたら負けるのは目に見えてるのよね。一部この辺では見ないモンスターも交じってるし。

 戦うにしてもあの召喚がアイリの力だというのなら制限させるわけにはいかないし……。問題は山積みね。


 そんなことを考えているうちに目の端で、レイド級のボスであるエルドニアワームがプレイヤー、一人に倒されるところを見た。

 一人でパーティとレイド以上の手駒を使うソロプレイヤー。あの子こそ、まさに一騎当千ね。もうあの子はプレイヤーじゃなくてボスモンスター扱いでいいのではないかしら?死霊王すらあっさり2度も倒しているんだし。


 はぁ、それにしてもレイドで倒せないモンスターを実質ソロで討伐するとかアイ……見たもの聞いたものをすべて含めて本当に侮れない子だと再認識したわ……。



 《闇の領域、砂漠東部におきまして砂漠東部を統べる魔王が誕生しました》


 「っ!?……へぇ~、なんだぁ。そういうことだったのね……」


 このワールドアナウンスが流れた瞬間、アイったら右往左往してた。それはつまり、あの子自身にもそれを示すコメントが流れたという事。そこから考えるに今誕生した砂漠の魔王というのはアイの事なのね。おっと、SS撮らないとね……。フフフッ、これで決定的な証拠を得られたわ。

 あとは本人に私に攻撃を仕掛けたことも含めて何の魔王かも聞き取りしたうえで、結果を出すとしましょうか。

とりあえず、こんな感じで投稿してみたけどまだ、ダメな点はあると思われます。

次話以降でまたゆっくり方向修正をしつつ、続行していきたいと思うので、こうしたらいいんじゃないか?とかコメントなどがありましたら是非とも助言をいただきたく。


作者の能力の及ぶ限り善処させていただきます。

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