74話
感想返しなどができてなくて申し訳ありません。
ですが、しっかり読んで皆様の意見を参考にいろいろ考えてますのでお許しくださいませ。
エルドニアワームの体は巨大だ。コウガ達ですら、ちゃんとしたダメージを与えられるのかが正直心配だよ。やっぱり装備品くらいは揃えておかないといけないから次の町ヘリオストスを目指すことも考えないといけないかもね。イザベラさんにも会いたいし。
まあその前に目の前のエルドニアワームとその取り巻きを倒さないとね。ここまで来ておいて戦力面で少し心配な仲間たちのレベルは次の通り。
コウガが39レベル
セツナが39レベル
イリスが18レベル
クルスが13レベル
カエデが20レベル
ルドラが17レベル
となっています。砂漠に出る前の死霊王を倒した時にセツナが39に上がって、コウガはもうあと数体倒せば40レベルになろうというところまで経験値の数字が伸びている。
進化組はレベルは低いけど、それなりに能力は上がっててクルス以外は進化前より高い攻撃力になっている。セツナはこの砂漠で結構活躍しているのでコウガとの経験値の差を詰めて来てるのがいい。
「ワーム種なんだし、とりあえず水で攻撃していくよ。ルドラは鉄壁で敵の攻撃を耐えるように頑張って」
「ギルルッ!!!」
やる気満々で前に出るルドラ。だけどまだ以前のブルーリザードの時とあまり大きさが変わってないから、エルドニアワームにのしかかられて潰されたりしないかすごく心配。
「イリスはタクトマジックで雨を呼んで、水魔法で攻撃、魔法の内容はイリスに任せるわ!」
「クポォ!」
あれ?いつのまにかイリスがモー○リのような鳴き声になってる?き、気のせいだよね。
イリスはすぐに雨雲を呼び寄せ、私たちのいる戦闘フィールド一帯に雨を降らせていく。
この雨が降ると視界不良の地形効果が発生し、本来なら私たちにも多少なりと影響が出るんだけど、何度も行った連携の訓練のおかげで致命的なミスをしでかすということはない。
雨に体を濡らされたエルドニアワームとその取り巻きのサンドワーム達は、嫌がるように体をうねらせながら地面に潜り逃げようとする。ここで驚いたのは一番巨体で動きな遅そうなエルドニアワームが真っ先に地面に潜ったことかな。でかいミミズのくせに早いわね。
「セツナは取り巻きのサンドワームにブリザード!相手の根本を凍らせて地中に潜らせないようにして。クルスは凍り付いたサンドワーム達に雷撃衝よ」
「グルルゥッ!」
「クワァッ!!」
この行動で狙い通りサンドワームの取り巻きたちは体の表面についた水分とわずかに砂漠にしみ込んだ水分で凝固し、わずかとはいえ地面に潜りづらくなった。
すかさず足に雷をまとわせたクルスが空高くから落下攻撃を仕掛ける。その威力は封印されていただけあり恐ろしく強く、サンドワームたちをひとまとめに破砕した。
スキルの説明文には高い位置から攻撃すればするほどダメージ倍率が上がるが、その代りに非常によけられやすいとか書いてました……。まあ一度練習で見せてもらってたから、相手の身体能力を著しく下げる効果を多く持つ氷魔法と組ませた方が相性がいいと判断したんだけどまさにその通りだったね。
「次にコウガ。ちょっと面倒だろうけど、エルドニアワームを追ってほしいの。後ろから何度か攻撃すれば相手が方向転換して襲ってくるはず。
それを確認してあなたはこっちに戻ってくる。もちろん火纏を使って移動速度を上げることを忘れないようにね?」
「ガルゥッ!」
コウガは任せとけ!といわんばかりに尻尾を振ってエルドニアワームの掘った穴に潜っていった。
火纏は攻撃行動をしなかったら身体能力が上がる。その代りに火傷を負い、体力を消費するけど戻ってくる分くらいなら持つはず。
あとは出てきたエルドニアワームに集中攻撃を仕掛けるだけなんだけど……雨が降ったままだと出て来てくれないかもしれない……よし。
「イリス、嵐を起こして適当に雨雲を散らしておいて」
タクトマジック3で覚えた嵐で簡易の暴風を起こし、空に向けて放つと雨雲があっという間に散り散りになって消えた。
今使ったタクトマジックによる嵐は、ダメージを与えるのが目的ではなく、風の属性強化や、こういった天気による地形(気象による)効果を打ち消す効果の方が強いんだよね。
だから嵐を攻撃として使うならセツナの【嵐風】の方が役に立つ。あれは完全に攻撃にしか使えないもん。嵐風が巻き起こす現象の属性には、すべて風の属性が含まれているから、イリスのタクトマジックによる嵐と組み合わせれば威力がかなり上昇するの。
この砂漠という土地で上記のスキルを使えば、高確率で土と風の属性を持つハリケーンを呼べるからそれをドカンと決める予定です。
ガッサガサガサ……
コウガの潜っていった穴を見張りながら待っているといつの間にか後ろに来ていたカエデに肩をたたかれた。このガサガサ音に気づかないなんて、コウガのことを心配しすぎてたかもね。
「あら?どうしたのカエデ……えっ?自分にも攻撃させてって?
う、うーん……そうだっ!ナチュラルメイクで作れる実の中に火傷の異常を付ける爆発するのがあったよね?あれをたくさん作っといてくれる?」
ガッサガササ……
カエデは砂漠に根を下ろし、ナチュラルメイクで実を次々と作成していく。
砂漠にも魔素は少しとはいえ存在するのでそれを吸収しつつカエデは実を作る。だけど、闇の森で使っていた時ほどの生成速度が出てない所を見ると砂漠は闇の森よりも魔素が少ないということで間違いないかな。
「その通りです、アイリ様」
わっ!?突然話しかけてこられたらびっくりするじゃない!というか、いつの間にか考えてたことを口に出してたっぽい?
「はい、僭越ながら私に話しかけてくださっていると思い、返事をさせていただきました」
「まあ考え事してただけなんだけど、まあいいか。それでトリビア、どうして砂漠には魔素が少ないのかな?」
「はい、この領域の魔素は大昔にとある容姿・能力不明の王種が奪い去ったと聞きました。私はそのあたりのことを調べるために遺跡を根城に研究をしておりました」
「へぇ、じゃあ、何かわかったの?」
「いえ、謎の王種がどのような手段で魔素を奪っていったのか、全く痕跡がなくわからないまま50年を過ごしてしまいました……。魔素がない土地は疲弊してしまい復活には長い年月がかかってしまいます。
ですが代わりに魔素がない地域では良くないことが起こる事だけがわかり、資源を魔素に変換する魔道具を作成し、魔素の復活を試みたのですがわずかに回復する程度でした」
ふむふむ……んっ?魔素がないと困るのはなんとなくわかったけど、資源を変換して魔素を生み出す?
「その魔道具ってまだ動いてるの?」
「はい、遺跡にある私の研究施設にあるので壊れているということはないはずですが?」
「もう一つ聞きたいんだけど、この砂漠って魔素を奪われる前もしくはトリビアが来る前から砂漠だったりする?」
「そうですね。魔素を奪われてから砂漠化が進んでいたことは事実ですが、少しばかりの自然は残っていました」
……なるほど。どっちにしろその魔道具が稼働してその少しばかり残った資源を消費しているのだとしたら、ちょっと嫌な予感がするね。でも、それを考える前に目の前のエルドニアワームを片付けておかないと。
「来たっ!コウガ!」
穴の中からコウガが姿を現し、体に付いたらしき砂を振るい落としていた。その直ぐ後に地中を大きいものが移動しているような振動が伝わってくる。
どうやらコウガはちゃんと仕事をしてくれたみたい。コウガの力を信用してなかったわけじゃなく、心配だったからね。
すかさず戻ってきたコウガをイリスが回復し、全員で戦闘態勢をとる。
「フッシャーー!!!」
穴から顔を出したエルドニアワームは怒り心頭といった感じ。
コウガは一体、穴の中でどんな攻撃をしたのか非常に気になる~。現にエルドニアワームのヘイトは完全にコウガに向いてる。背中が無防備だよ~。
コウガはワームの攻撃を避けつつ、体当たりや毒撃、火纏を使用しながらチマチマとダメージを与えていく。最初に心配してた巨体だからダメージが通るか心配とかいうのは杞憂だったね。
エルドニアワームは地面に潜って砂を吸い込み、地上に出てきたときにそれを散弾のように飛ばして攻撃してくる。この攻撃はおそらく物理っぽいので私が当たると蒸発する。なのでルドラが前にでて鉄壁を使い防いでくれている。
「セツナは【嵐風】!クルスは【雷撃衝】。あっ、クルスは嵐風に巻き込まれないよう注意ね!
続けてカエデは作った木の実をセツナの嵐風の根本に向かって投げて。もしかしたら火傷の効果が広がるかもしれないから。
ルドラは……そうね、余裕があればアクアブレスを当てれるよう様子をうかがっておいて。でも最優先は私の守りってことで。次、イリスは変わらず相手が嫌がっている水魔法で攻撃!さあ皆、お願いね!」
さて、全員に指示を出したらあと動いてないのは私だけ。トリビアもいるにはいるけど、攻撃することも受けることも出来ない存在だから放置でいい。
エルドニアワームからすると攻撃対象のほとんどが自分の体に隠れているせいで視認できなくて体を動かし、のたうつような攻撃しかできていない。砂を吐いても嵐に巻き上げられて威力が半減しているのでよけるのもたやすくなってるしね。
死角から攻撃を食らい、ちゃくちゃくと削れるエルドニアワームの体力を見ながら私が使える攻撃スキルを発動する寸前まで準備を終えた。
そしてその時は来た。イリスとルドラの水属性攻撃を受けた直後、クルスの雷撃衝がヒットし、エルドニアワームが麻痺とまではいかないけど一時的に痙攣した。そこにコウガがセツナと連携を取り多大なダメージを与える。
カエデが頑張って作った実による火傷の効果はなく、単なる爆風による威力があっただけ。だ、大丈夫よカエデ、そんな不満そうな顔をしないで。あなたと相性いいモンスターがきっと現れるから!
「全員離れなさい!!……さあ、エルドニアワーム。あなたの持つこの領地は私がもらってあげるから安心して食らいなさ~い【軍勢:魔獣/獣】【軍勢:鳥獣/鳥】。全員突撃いっ!」
呼び出された軍勢の数はおよそ300。その中には闇の森で配下にした個体が数多く存在している。
ちなみにダークゴブリンとかの亜人種やアースドールという無機質種モンスターは対応した軍勢スキルがないから呼び出せてない。早く呼び出せるようになりたいね。特に亜人種の配下は出現数が多く、融合によるプラス値をだいぶ稼げていて強いから。
現れたのは、アクスビークやナイトアサシンという闇の森の深い場所に生息していた鳥獣種、エアロホークやノヴァコンドルといった光の領域で配下にした鳥種の進化形がエルドニアワームの上から次々と襲いかかり、地面からは空を飛べないダークウルフやらナイトドッグといった光と闇の混成獣軍団がエルドニアワームに襲い掛かる。
軍勢で呼び出した光の勢力の鳥や獣たちだけど、コウガ達と同様ステータスダウンするのかと思ったけどそういう事はないみたいで安心した。
やっぱり仲間と配下では、一緒にいる時間とかの関係で扱いが違うんだね……。
エルドニアワームも必死に砂の塊を吐き出し砂煙を巻き上げてこちら側の視界を奪い自分を有利にしようとしたり、その巨体をふるって魔獣軍をすりつぶそうとするが残念ね……。その子たち強化値が+15なのよ。見た目は小さくてもそう簡単にはつぶされなくってよ?
「ギシャァァァー……」
断末魔の叫びをあげて地面に倒れこむエルドニアワーム。地上を攻めた魔獣/獣混成軍は、体が崩れかかっているワームに対して執拗以上に攻撃を加えていく。もしかして止めるように指示しないと止まらないのかな?さっきの攻撃指示、全員突撃で終わってる……。
そういえば今までは突撃前にその後の行動指示まで出してた気がするわ……。
やっぱり軍勢の方はあらかじめ行動内容を明らかにしておかないと一定の行動を続けるのかな?
そうだとしたら、軍勢の動かし方ももう少し勉強したり研究しないといけないね。
《コウガのレベルが40に上がりました。新たな進化先が追加されました》
《セツナのレベルが40に上がりました。新たな進化先が追加されました》
《イリスのレベルが20に上がりました》
《クルスのレベルが14に上がりました》
《カエデのレベルが21に上がりました》
《ルドラのレベルが18に上がりました》
《エルドニアワームの肉を取得しました》
「おぉ、アイリ様は魔王の資質の代表スキルである軍勢スキルも使いこなしているのですね。ますます、素晴らしいです!」
トリビアのヨイショに少しばかり気分が良くなる私。ふふふっ、もっと褒め称えたまえ~。
やっぱりボスを倒しただけあってレベル上がるね。コウガ達にも新たな進化先かぁ。
次はどういったのが増えてるのか楽しみだね。とりあえず安全圏を確保できたら確認だけしておこう。あっ、でも進化はまだだよ?クルスたちの攻撃能力をもう少し底上げしておきたいからね。
そしてボスモンスターの肉をいただきましたが……こっちにはシオリさんがいないので加工をお願いできない!取り合えずは、ボックスに保存しておいてこっちで料理人を探すか、いつか光の勢力に行ったときにシオリさんにお願いするか考えよう。
最終的に軍勢スキルで呼び出したモンスターのうち育成が不十分だった1/4は戦闘不能となった。思ったより消耗しなかったわね。このくらいなら数日あれば補充できるわ……エレノアがついて来なければだけど。
やっぱりこういうボスと戦うつもりならもう少し消耗を少なくする努力もしないといけないわね。
いつか言ってみたいわね。「私の配下は一騎当千。命が惜しくなければなんたらかんたら~」って感じに……。
《闇の領域、砂漠東部におきまして砂漠東部を統べる魔王が誕生しました》
トリビアのヨイショや妄想により気を良くしていた私の元へそんな非情なワールドアナウンスが流れた。
……ぐぅえぇっ!?うそでしょ?これってタイミング的に考えて私よね?なんで領地を持っただけで放送されるの?
あ、乙女にあるまじき声が出た気がするけど気にしてられない。
領地持ちのモンスターを倒し領地を得たプレイヤーの話はよく聞いたけど、こんなアナウンスがあったことは知らない。……はっ、まさか私が王種だったから……なの?
「や、ヤッヴァーァイ~~!!」




