73話
これと次の話(明日更新)はエレノアさんは名前くらいしか出てこないので投下しておきます。
75話以降は要修正なのでしばらく時間をおかせていただきます。
「フシュロロ~」
私たちは砂漠に足を踏み入れてすぐサンドワームの群れと遭遇。サンドワームたちはちょうど餌となるデザートスコーピオンを捕食し終わったところだったが、食べたりなかったらしく追加の食事がきたことを察知し襲ってきたのである。
「アイリ様、サンドワームは水や氷の属性が弱点となっております」
「了解。イリス、ルドラ聞いたよね?イリスはウォータジャベリン、ルドラはアクアブレス!」
「コポポッ!」「ギルルッ!」
イリス達はサンドワームの突進を避けながら攻撃を行う。その長い巨体に水の槍が突き刺さり、追撃として水を多分に含んだ泡が次々と破裂し、サンドワームにダメージを与えていく。
「セツナ、ブリザード」
「ガルルッ!」
さらにダメ押しのセツナの放ったブリザードによりサンドワームの群れはあっけなく破砕音を立てて消えていく。ドロップアイテムも確認してみたけどミミズの体液とか、伸びる皮とかあまり触りたくない類のものだったので、砂漠の集落を見つけたらさっさと売り払ってしまおうと思う。
「みんなお疲れ様。じゃあ先に進むよ」
私の大好きなフルメンバープラス同行者1名に声を掛け、砂漠を進む。
同行者であるトリビアは私が聞いた事には答えてはくれるものの、何でも聞いて解決するのもどうかと思うので必要最低限の事しか質問をしていない。
「砂漠の集落がどこにあるか探すのもゲームとしての楽しみの一つだもんね」
砂漠の集落をさがすなら、まずオアシスを探すのがいい。ゲームとはいえ人が住む場所なのでそういう定番からは外れていないはず。
そしてそのオアシスを探すならサボテンを探すといいと思う。サボテンは水を含んでいるのでその地下には水脈がある可能性が高い。もちろん、水脈が無くてもサボテンは育つがそこまで深く考えなくてもいいはずである。
それを目指せばいつかはオアシスがある場所にたどり着くはず……。きっと。
しかし周りにはサボテンはおろか草の一つも生えていない。まあ砂漠だから当然だけど。
先は長そうだなぁ、と思いながら私たちはあてどもなく砂漠を歩きだした。この行為はリアルだと自殺志願者だけどここはゲームの世界だからマップ機能というものがある。
行ってない場所に向けて歩いてればいつかは見つかると思うんだよね。
「さっきからサンドワームとデザートスコーピオンしか出てこないなぁ」
砂漠を彷徨う事2時間。ようやくサボテンをポツポツと見かける回数が増えてきたところで、道中に現れるモンスターを倒しながらサボテンがある方へある方へ歩を進める。
「あっ、あれは!」
その状況からさらに30分経過し、ようやくオアシスと集落らしき建物をいくつか発見することができた。
「よ、ようこそ、砂漠の集落へ。旅人は歓迎しますよ」
砂漠特有の暑さのせいか顔を真っ赤にしている集落の入り口にいた衛兵(……というか自警団?)にどうもと挨拶をして集落の中へ。
集落の中には生活に必要になりそうな雑貨屋と武器屋があり、品ぞろえはそれなりによさそう。やっぱり、巨大なモンスターが多い砂漠だから武器の性能とかはそれなりに必要なんだね。
もちろんワームとかサソリからいただいたドロップ品はすぐに手放してお金に変換しておいたよ。
アイテムボックスが大分すっきりしたところで、集落を散策していたところ思いがけないものを発見した。
「あっ、なんでここに……」
距離は離れているけど私の目線の向きには撒いたはずのエレノアの姿が。でもエレノアはまだ私に気づいていない様子。
なぜなら私の今の姿はすっぽりと長いローブに身を包んでおり顔などが見えないから。
とはいえ、フレンドリストでの現在地は私もエレノアも砂漠の集落と表示されているから見つかるのは時間の問題です。
「ここでみつかったら、またしつこくついて来るに違いないよね……すぐに出よっか」
「仕方ありませんね。では見つからないように遠回りして集落の出口へ参りましょう」
もう少し集落を見て回りたかったけど、レア以外のドロップ品販売と回復アイテムの補充をしただけでお暇することになりました。今度落ち着いたらゆっくり探索しにこようと心に決めて。
いうまでもないが砂漠エリアを領地にしたらこの集落は大事な拠点になるので心に決めなくても来ることになるが……。
砂漠の集落から少し離れた所まで来たところで、トリビアに大事なことを聞いておこうと思う。
ユールでこの辺の情報を見たけど対象となる敵の名前をなんとなく記憶してる程度にしか覚えてないんだよねー。ようするに対象の生息地を覚えてません!
「トリビア。土地の領有権をもっているモンスターの住処は分かる?」
「はいっ!もちろんです。ターゲットであるエルドニアワームはこの集落から、西南西へ1時間ほど進んだ先にある流砂地帯に生息しています。あ、あとその近くに80年ほど前まで私が拠点にしていた遺跡がありますのでそちらに寄っていただいてもよろしいでしょうか。アイリ様のお役に立つものがいくつか残っているはずです」
……ふーん流砂に遺跡かぁ。砂漠の定番だよねぇ……って、今聞き捨てならない発言があった気がする!?
「えっ?トリビアって今いくつなの?」
思わず聞いちゃったよ。だってどう見てもトリビアの年齢は多く見積もっても20代だよ。肌も若々しくてきめ細やかさも10代と言っても通じるくらいだよ?
「私は今年で120になります。アイリ様からされると老害かと思われるかもしれませんが、その無駄に長く過ごしたおかげで、その知識を今アイリ様のお役に立てるのがうれしくてなりません」
べ、別に老害とか全然思ってないってば。
そっかぁ、今更だけどトリビアもダークエルフ族なんだよね。若く見えてもおかしくないってことか。そういう設定の人も存在しててもおかしくはないからね。……あっ、設定とか言っちゃった。
「そんな前に放棄した遺跡にまだ何か残ってるとは思えないんだけど?」
「盗掘などの被害を気にされているのでしたらその心配はございません。遺跡の表層部分だけならば兎も角、地下を探索するには私か絶大な力を持つ存在しか開けるができない封印がありますので」
へぇ……。ということは、これはトリビアを仲間にできたことで発生したクエストってことになるのかな?
クエストっていうよりサブイベントって感じだろうけどね。
「わかった。じゃあとりあえず領地持ちのエルドニアワームを倒してからトリビアの遺跡に寄るって方向でいいよね?」
「はい」
向かうべき場所がわかっているので、私たちはマップ機能で方向を確認しながらまっすぐと流砂地帯へ進む。ついでにエレノアの現在地も気になって探してみたら、砂漠東部となっており、集落から外に出たことがわかる。
「エレノアも動いてるのかぁ。広大な砂漠で私が流砂地帯にいるとは思わないはずだし、見つかったりしないよね」
「アイリさま。エルドニアワームを発見しました!」
トリビアの声が聞こえたことでエレノアのことは頭の中からはじき出し、エレノアが示す方向を見ると出ている部分だけでも20メートルはありそうな巨大なサンドワームが流砂の中心から天に向かってニョロニョロと体を突き出していた。周りには同じ種類と思われるサンドワームが数体同じように突き出ている。
「お、大きいわね」
あえて赤黒い体色については言わなかったけど、これで硬いとかいう要素があったら卑猥だった気がする。
エルドニアワームとその取り巻きたちは私たちの存在を認識し、流砂の中に潜っていく。
数秒後には激しい地揺れとともに目の前にその巨大な体が出現、目の前にいるアイリたちを威嚇する声を上げた。




