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71話

前話でイメージダウンが激しいエレノアですが登場する数話分は似たような感じになります。

今回もエレノアが少しばかりおかしくなってるかもしれませんが、本人には全く悪意はない行為(ストーカー行為とノーマナー行為があったとしても)な

ので今はこんなもんとして認識しておいてください。




 「はぁ、やっぱり今日もついてきてるのか~……」


 エレノアと再会をしてから二週間。私がログインすると彼女は屋敷前に現れる。そして私が闇の森方面へ出かける時は必ず後ろから付いて来るのです。当然ついて来るだけで話しかけてきたりはしない。


 隠れてないだけマシですけど、まさにストーカーそのものじゃないですかー!?


 まあ、確かに本人がストーカー宣言してたから有言実行であることは間違いないんだけど、もう二週間だよ?いい加減離れてほしい!という事を本人に言ったんだけど、エレノアの返事は「それじゃ、あなたが持つ王についていろいろ教えてもらおうかしら?」という返事ばかり。


 闇の森での戦闘中も、隠れたりもせず、かといって手を貸したりしてくることもなく、邪魔にならない程度の位置から堂々と見てくる。

 おかげで私はこの二週間、クエストと仲間モンスターの育成しかしてない。いつもよりペースを抑えたうえでね。


 私としては森を抜けて砂漠のモンスターを退治して開拓をしたいんだけど、そこにエレノアがついてきて王としての領地を開拓してるとか知られたら大変なことになる気がして、取り掛かれない。




 「コウガは火纏からの噛みつき、セツナはアイスストームで足止め」


 私の指示でアビスモンキーという猿のモンスターが倒されていく。この猿のモンスターは同種の仲間を呼ぶタイプのモンスターで倒せるなら経験値製造機として申し分ないのです。マドハ○ドとかと同じような感じと思ってもらえればいいですね。

 まあたまにですけどアビスコングという、やたら強いのを呼ばれることがあるのでそこだけは注意かな。

 どのくらい強いのかというと、エレノアがついてこなくなり、人目を気にせず活動できるようになったら、このアビスコングを配下にするために引きこもろうかと思ってるくらいに強い。



 「ねぇ、エレノアー。いい加減ついて来るのやめてよ~。もう十分にみてたじゃない」


 「あら?アイから一緒に冒険できるようにフレンドになろうって言ってきたんじゃない。

 言ったらなんだけど私ってこっちの勢力でトップクラスだから、組むかもしれない相手の実力は知っておきたいのよね。その為にも、ちゃんとアイの戦いを見せてもらっておかないと」


 とまあ、このように否定しきれない理由を色々言ってくるわけ。

 エレノアって前々から私に対しては口がうまいんだよね。なんとなく私では断ったり反論できないような言い方に持っていかれたりするんだよ。



 実は今みたいに外面そとづらが良くなる前のエレノアって上から目線とか偉そうな言動からよく敵を作るタイプだった。ほんとは寂しがり屋な、かまってちゃんなのにさ。


 前に一緒だったゲームでは口調が原因で嫌われてたけど、それを認識したあたりからネットの世界でも丁寧にはなすようになった。丁寧に話すようになってから知り合いも増えたって喜んでたっけ。

 このゲームでもエレノアが初対面や、慣れてない相手と話すときは相手を思いやろうとするところが見受けられる。

 まあ、慣れ親しんだ相手には相変わらず口調が悪くなるけど、そういう物だと私は受け入れてるし、エレノアも自分の口調を許容できない知り合いには、それを感じ取ってそれなりの対応をしている。


 そう考えると砕けた会話ができる私は結構エレノアに気に入られてるということだね。


 あとエレノアは以前のゲームでもソロ活動してたけど、私とかその他の人と一緒に行動してる時の方が生き生きとしてたし。どうせこのゲームでもソロでも活動できるけど、パーティ用のスキルとかこっそり育成してそう。




 そんなこんなで、この二週間での成果はまあまあボチボチといったところ。イリスやカエデなど今回進化した仲間が20台までもう少しといったところまで育ち、経験値が大量に必要なクルスは遅れに遅れてもうすぐ12レベルになるくらいかな。



 「二週間もついてきてるんだから、私の戦闘方法くらい、もうわかってるでしょ?」


 「何言ってるの。まだに決まってるじゃない。あなたの周りのペットたちの力は強いのは十分に分かったけど、まだアイ自身の力を見てないもの」


 くぬぬ、確かにエレノアの言う通り。私がエレノアに見せてるのは調教師としての力の部分のみ。

 軍勢スキルで配下を増やすところも、呼び出すところも見せていない。魔法防御だけがやたら高い所も見せてない。それらを見せたら終わったも同然だろうし。

 せめて、報告しないっていう確約さえもらえれば、軍勢くらいは見せてもいいんだけど。


 それ以外でも一応いろいろ考えたんだよ?魅了か覇気くらいならいいかなとか。

 でもやっぱり考え直すことにした。特に私の魅了は効果時間が長いから、廃人のエレノアならそこに気づきかねない。私にとっては魅了能力がバレることが一番危険だと思ってるからね。


 「そうは言われても私はただの調教師なんだからこの子達こそが私の力なんだってば~(だから早く離れてよ~)」


 「ふーん?まあそれならそれでもいいんだけどね(まあ確かにアイ自身の動きはかなり遅いし、あの子自身のステータスは高そうじゃないのは見て取れるけど……何か隠してる気配がビンビン来るのよねぇ)」



 そんな私たちは現在闇の深遠にいる。コウガ達のレベルだとこのあたりの強いモンスターと戦わないと経験値稼ぎにならないから。そのコウガが39、セツナが38になり、二人とも40レベルまでもう一息といったところ。


 「あっ、死霊王……」


 「えっ!?」


 私の指摘にエレノアも反応を示す。その指した方向には、数人のパーティと戦う死霊王ネルググの姿があった。やっぱり情報通り復活するんだね~。

 戦っているのは前衛後衛のバランスが取れているパーティです。人数は4人しかいないところを見ると、すでに2人か3人はやられて戻ったのかな?


 ネルググの闇魔法でプレイヤーが押されているのは明白。前衛は魔法防御の高そうな盾で、なんとか魔法を弾けているもののその表情は辛そう。死霊王の魔法の一撃あたりが強力だから、弾けても衝撃による軽微なダメージが地味に積み重なるんだよね。その分を回復しようとすると死霊王のヘイトが後衛に行くと……悪循環だねぇ。

 その後衛も弓を持った人が矢を番えて、死霊王に放っているけど、死霊王の魔法の弾幕の前に矢が届くことはない。


 「まあ普通は、あぁなるわよね」


 エレノアがつぶやく。私たちが戦闘を見始めてわずか10分。そのパーティは壊滅した。こういう風に端から見てるとあの死霊王も強い相手なんだと分かった。実際ネルググの体力は1%も削れてなかったし。

 ネルググは倒したプレイヤーから少しばかりの経験値を奪うと、こちらを向いた。その口元はにやりと吊り上がっており、明らかにこちらを獲物と判断している。


 経験値を奪うといえば、エレノアに聞いたんだけど王種モンスターは敵対相手を倒せば倒すほど強くなる特性があるんだって。要するに王種モンスターに限り、レベルアップがある。だけど代わりに倒した時の経験値も莫大になるってことだった。


 私が長らく彷徨っていた(らしい)死霊王を倒したからあれだけの経験値がもらえたって事なので、現在目の前にいる死霊王を倒しても前回ほど莫大な経験値がもらえるわけではなく、死霊王本来の経験値と、死霊王が倒したプレイヤーから少しばかり奪った経験値が上乗せされる程度。


 ちなみに王種のレベルアップ=私の魔王がⅡになったのと同じような意味なのだと思う。そう考えると私ってエレノアのクエスト目標になってたりするし、もしかしてモンスター扱いされてる?



 死霊王がこちらに向かって歩いて来る。その速度は私より少し早いくらいかな。ぼーっとしてたら追いつかれちゃうね。

 

 「……この位置でもバレちゃうんだね」


 「くぅ、そのようね。やはり厄介な奴だわ死霊王って!

 アイ、アンタが倒したって言うあいつは、そこらのパーティなんかあっさり倒してしまう強さだってことは理解できた?」


 「うん、まあそれはわかったよ。目の前でパーティー潰してたからね」


 「そう、理解できたならいいわ。

 悪いけどまだ私ではあいつに勝てないし、デスペナも受けたくないから逃げさせて貰うけど、アイはどうするの?」


 「そうだねー、同じく逃げるかな~(エレノアからも……だけどね)」


 エレノアが私から離れようとしてくれてるんだし、振り切ることができそうなこのチャンスを逃すわけには行かない。



 「そう、アンタは一度倒してるんだし大丈夫だろうし、遠慮なくユールに戻らせて貰うわ。それじゃあね!」


 そう言ってエレノアは駆け出す。


 エレノアの行為は普通のパーティを組んでいると嫌われるだろうけど、一緒にいる相手が私だということで、その辺を考えないことにしてるみたい。ゲームでの立ち回り……そういう意味では信用されてるのかな?


 でも、エレノアって意外とこういうところで抜けてるのよね。どうして私と協力して倒すとかいう話を出さないのかな?死霊王と戦うとなったら私の力の一端を見せざるを得ないのにね。


 エレノアは時折後方を振り返る。私と死霊王の位置を確認してるからその辺は余裕がうかがえる。私もそれとなく離れているふりをした。そうしないとエレノアに気づかれて戻ってきちゃうかもしれないから。


 さてと、エレノア?それだけ離れてくれたら私も安心して隠してたのが使えるよ。そう思い私はつぶやく。


 「【軍勢:鳥獣/鳥】」


 呼びだしたのはだいぶ前にこの闇の森で配下にしたナイトアサシンという真っ黒なペンギンの群れ。

 それを前に向き直ったエレノアの後ろに放った。指示内容はエレノアを追う事。


 だけどエレノア自身はかなり強いみたいだから攻撃に転じてきたら無理せず撤退するように言っておいた。こんなことで配下をなくしたくないしね。


 「なっ!ナイトアサシンの群れっ?一体どこからこんなめんどくさいのが湧いてきたのよ……」


 エレノアの位置的にここで立ち止まるとナイトアサシンと死霊王から攻撃を食らうようになるのでしばらく逃げに徹するみたい。

 エレノアの姿が見えなくなり、フレンド枠で位置を見ると闇の森奥地という表示がされてあった。


 「よしっ、今のうちに砂漠方面に行きたい……けど、やっぱこの死霊王が邪魔になるんだよね」


 軍勢スキルをキャンセルしてナイトアサシンを回収し少し考える。

 結果、私は死霊王と向き合う。死霊王は私が逃げるのをあきらめたと思ったのか、赤い目を光らせニヤニヤ(私の主観)しながら魔法の弾幕を放ち始める。


 「攻撃がワンパターン過ぎるよ?まあ私の対処法もワンパターンなんだけどね」


 そういって私はやはりレジスト出来てしまう魔法の弾幕を突っ切り、以前同様近距離からのフルボッコで死霊王をあっさりと討伐したのでした。心配していたイリスやクルスの攻撃力面だけど前回より少し戦闘時間が長くかかった程度で済みました。

 今回の経験値はコーカサスと同じくらいかな?(大体進化したばかりの子が1レベルから2レベル上がるか上がらないくらい)



 「あっ!うそっ、死霊王からのレアドロップ!?何気にボスからのレア装備のドロップは初めてだよ!?」


 私のアイテムボックスに吸収されたドロップアイテムを確認していくと、その中に【霊元髑髏の錫杖】というものがあった。


 霊元髑髏の錫杖:魔力を含んだ水晶の髑髏が装飾されている魔法の杖。装備するとかなり頭がよくなった気になるという魔術師垂涎の一品。 INT+40、STR-40、魔法ダメージが1.2倍になる 装備レベル制限 LV50~



 その効果はINT+40とSTR-40……現時点で持つにはヤバすぎる類のアイテムです。

 装備したいところですけど最後に書かれている装備レベルの制限とやらのおかげで、私では一生装備不可能。というかレベル50って今現在誰も到達してないよね。それくらいあとじゃないと死霊王は倒されるはずじゃなかったという事か。

 まあ、死霊王を倒せるのは私くらいのCHAがないと無理なんだし、運営が予想できなくても仕方ないよね。


 「まっ、あとでパーシヴァルさんに相談しようっと」


 困ったときは安定のパーシヴァルさんに相談で解決に導いて見せる!



 とりあえず邪魔者(2つの意味で)は居なくなったのでそのまま闇の森の西部へ急ぐ。

 目指すは砂漠を領地にすること!トリビアが言ってたんだけど、領地となる各エリアには小さいとはいえいくつかの集落があるはずだから、探したほうが探索がしやすくなって良いですよって言ってた。


 「お待ちしておりました。アイリ様」


 森の出口を出るとユールでパーシヴァルさんと話をすると言っていたトリビアが待機していて、すごくびっくりした。やっぱこの辺の神出鬼没さはゲームなんだねーとつくづく思う。





 ー そのころ、ユールの入り口に戻ってきたエレノア -



 「あらっ?アイったら、逃げる方向間違えたのかしら?闇の砂漠東部に行ってるじゃない」


 突然現れたナイトアサシンの群れを振り切り、無事ユールに戻ったエレノアは、いつまでたっても戻ってこないアイリを心配し、フレンド枠でアイリのいるマップを調べたところ闇の森の西部を抜けた先、砂漠エリアにいることに気づく。

 砂漠エリアは無駄にマップが広いうえ、砂漠特有のモンスターが数多く生息している。しかしそのモンスター達もレアアイテムを落とすというようなこともないので、闇の領域のプレイヤーからは全く旨味のないフィールドとして認識されている。



 そこでエレノアは考えた。アイリが道を間違えたと気づいたならすぐに戻ってくるはず。だけど今もなおアイリの現在地は砂漠東部にあるまま。これは何かある!という直感を信じた。


 エレノアは迎えに行くついでに砂漠の討伐クエスト(報酬もたいして良くなかったりする)を請け、急いで闇の森を砂漠方面へ向かっていく。

 当然ながら、先ほど死霊王と出会った場所周辺では気を付けて進むことを忘れない。死霊王はいつどこから現れるか察知し難い存在だから。


 「……おかしいわ。ここまで来ても死霊王が見当たらない……。 はっ!まさか私はアイに騙された?」


 砂漠方面への出口に近づいたところでようやくエレノアは自分を撒くために、死霊王から逃げるという嘘をつかれた事に気がついた。


 「てことはアイったら、また死霊王を倒したのね……。これでまぐれじゃないって事がわかった。

 くぅっ、私としたことが一度のデスペナくらい我慢してればあの子の力を見れたかもしれないのに……私とした事がしくじったわ。……うぅん、反省は後にしてそれより今はまずあの子に追いついておかないと……

 となると、まずあそこで張っておくのが無難そうね」


 そうつぶやきエレノアは砂漠の東部へと足を踏み入れた。

 他のプレイヤーには砂漠エリアは旨味のないフィールドで入ることもそうそうないが、エレノアは王種を探しているときに砂漠も一通り探索しているので砂漠のマップはほぼ埋まってる。

 エレノアはマップを確認しながら歩き始め、その足は砂漠にある集落へと向かっていた。

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