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60話

 「それでは作戦決行は5日後ということでよろしいですね?」

 「そうね。私の配下の育成もその位にはある程度の目処が付くと思うから、その方向でみんなに知らせて置いてください」

 「わかりました。ではこの作戦完了とともに闇の勢力域に戻れるよう転移装置を手配しておきましょう」


 装備品をそろえた次の日、私はパーシヴァルさんの屋敷にいき、イベント最終日に光の勢力の本拠であるガイアの町中央部に位置する城に配下を差し向ける計画について話し合った。

 今までそんな話は出たこともないって?いえいえ、これはちゃんと最後の魔王系クエストである《【魔王クエスト3】:手勢を使って光勢力を混乱させよう(難易度5)》をこなす上で必要なんです。


 私はこの手勢を使ってというのを配下を使用してと解釈したわけです。せっかく魔王となったんですから、このくらいの宣戦布告はしておかないと!……とはいいつつ、影でこそこそやってるんだけどさ。

 今まで育ててきたコウガ達も手勢のうちに入るんだろうけど、この子達を使用したら魔王の正体が私だとバラしたも同然(すでに私の従魔として有名になってしまっている)なので、今後いろいろ動きづらくなる。

 なので今回はコウガたちは出さないことにしたんだ。




 そして日は流れ……アルバイトや配下のレベル上げをしているうちにイベント最終日が始まろうとしている。その数日でも思い出そうと思えばいくらでも内容が思い出せる。たとえば……


 他プレイヤーは後半戦に入ってから一定数のスイカを倒すたびに現れ、ガイアの町を滅ぼそうとするレイドボスとの戦いに忙しく、コトノやBさん、ルグートさん達生産職の皆さんも日々持ち込まれる装備の修理、さらには新商品の開発に忙しいと悲鳴を上げていたっけ。


 特にこの後半戦最初の1日目と2日目はスイカの種の目標数を稼げていないプレイヤーがスイカを求め、狩場を荒らしまわったせいで、レイドボスが3方向からガイアに攻め込んでくるという異常な事態もあった。さすがに3日目以降は、レイドボス好きな一部のプレイヤーに対してスイカの討伐の自重をしてレイドボスが一挙に登場するのを抑えるようにする動きがありました。

 当然レイド好きのプレイヤーから不満の声が上がったけど、修理依頼の余りの多さから悲鳴を上げていた生産系プレイヤーから以後装備の修理はしないぞ!という宣言が出るとともに治まっていった。


 私としても1日目や2日目の段階でガイアをつぶされるのは困るから、不本意ながらレイドに時間を割き、参加人数が少ない方向のレイドボス戦に参加した。ここではコウガたちが大活躍したおかげでレイドボスという割にはあっさりと倒すことが出来、MVPのドロップ品も多数いただきました!

 このおかげでさらに掲示板でネタにされてしまいましたけどね。


 2日目の多方向からのレイドボス襲来も1日目と同じ場所で迎え撃ったのですが、先日と違うボスが現れてくれたので美味しくいただきました。やっぱりコウガとクルスというウチの2強の攻撃力がやばすぎる~。

 あと、この2日目のレイドバトル時には以前ウツボカヅラの枝を捜してたときに出会った支援スキルをもつエリスさんとパーティを組み、その魔法の的確さに感心しながらコウガたちを応援した。内心で的確な支援の技術をセツナやカエデに覚えさせたいと思いつつ……。あっ、当然他の人と組んでいるので覇気を使用することはない。

 まあ覇気を使う必要もないくらいコウガたちが活躍してくれたからという理由もあるんだけどね。



 3日目はコトノから後日納品するといわれていた腕の装備を受け取った。

 その名も【鬼姫の躯手】。名前からは想像もつかないけど、白・赤・青色のコントラストがすごく煌びやかにみえる手袋なんです。見た目からはオーガの皮が材料になってるとは到底思えない……。

 ステータスの補正もSTR+5とCHA+6と腕の装備にしてはかなりの良補正。忙しい中、がんばってくれたコトノには笑顔をプレゼントして頭を撫でりんこしておきました。想像以上に喜んでいたので若干引いてしまったのは内緒。


 3日目と4日目で他にやったことといえばイベント期間中であまり人が来なくなった過疎マップに行って配下の強化をしたくらいでしょうか。

 そういったマップでも入って直ぐあたりには数人のプレイヤーがうろついているんだけど、奥に行けば行くほどモンスターが強くなりプレイヤーの数も激減するので、自分が不意打ちを食らわないように注意しながら深部へ深部へ向かった。毎度ながらその辺に関してはコウガ達が対処してくれるので、私はコウガ達の邪魔にならないように歩いてるだけなのです。


 

 そして今日は夏休みのイベント最終日。

 この日もガイアの町はいつもどおりの日々で終わるはずだった。しかし、最終日だからとハメをはずしたプレイヤーが多かったのか、なんと東西南北の四方向からそれぞれレイドボスが襲ってくるという事態になっていた。実際のところは運営が仕掛けたイベントの総仕上げだったりするんだけど、そんなことプレイヤーが知るはずも無く……。


 北からはアイシクルゴーレム、東からは怪鳥ズー、西からは腐龍アバド、そして南からは巨大花ラフレイシア


 この登場にあせったのは、プレイヤーだけではなくガイアの町の光の騎士団もである。

 ガイアを治める人王ジークハルトは各方面に騎士団を派兵し、その討伐に当たるように指示。

 五つある騎士団の中の第一~第四騎士団がそれぞれ東西南北に一隊ずつむかい、第五騎士団はガイアの城の守備といずれかのの騎士団が敗れた際の補充要因として待機していた。


 各方面に散っていたプレイヤーは派兵されてきた騎士団とともに戦い、長い戦いの末それらをすべて撃破した。しかし、損耗は激しく各騎士団には隊長格の人材が数名残るのみ。

 それでも仕事を果たしたとばかりに戻る彼らが見たのは、ガイアの城に襲い掛かる大量の魔物の姿だった。




 「さてと、レイドボスが大量発生したのにはびっくりしたけど、そのおかげで誰にも怪しまれること無く忍び込めたね」

 「ここまでは計画通りですよアイリ様。

 この地下水路にはすでに我らの領域から取り寄せた【暗黒の靄】を充満させております。この靄の中では、魔王の持つ各種スキルが強化されますので、ここで軍勢スキルをお使いくだされば、本来は発動できないスキルでも効果が発揮されるようになります」


 だよねー。だって調教師スキルで仲間にしたコウガたちも町の中に入ると子犬化しちゃうくらい魔物対策してるんだもんね。

 けどこの闇の勢力のスパイの紅一点(私を除く)のイザベラさんが準備していたアイテムを仕掛けておいてくれたおかげで、その問題が解決されたってわけ。

 あっ、このアイテムを手配したのはパーシヴァルさんだからね。



 「よし、じゃあつかうよ……【軍勢・魔獣/獣】!【軍勢・魔鳥/鳥獣】!」

 「……っ!?こ、この短期間にこれほどの数の配下をお増やしになられていたのですね……さすが私の見込んだ魔王アイリ様です」

 「攻撃行動は各人2回までだよ!3度目の攻撃は私の指示を待つように!」


 呼び出したのは600体のうちの400体で割合は半々くらい。攻撃回数を抑えているのは3度目の攻撃が終わると軍勢スキルの中に戻ってきてしまうから。今回はガイアの町をかき回す目的だから攻撃行動を積極的にされては困る。


 なお、残りの200体はもう少し様子を見てから隙をつく形で呼び出しておきたい。


 町の外の様子はパーシヴァルさんや他のスパイの皆さんと連絡を取りながら確認している。

 私がここに忍び込んだ時点でレイドボスが4体、ガイアに向けて侵攻してきている。ただし全部がガイアに到着するまでには時間差があることから、私はコレを運営のイベントだと捉えた。


 当然私が気づくことなんだから、レイドボスと戦うプレイヤーの中にもコレがそういうものだと気づく人もいるわけで、最初こそ右往左往してたけど中盤以降は町に近づきつつあるボスにプレイヤーを割り当てていき、騎士団の皆さんは足止めをさせられていた(そのせいで騎士団がやばい打撃を受けたんだけどね。ま、私には好都合だからいいけど)。



 私の呼び出した配下の軍勢は地下水路を移動しガイアの町の至る場所に出現。

 民家の近くに現れたり、冒険者ギルドの地下牢の排水溝から現れたりしたので予想通り、NPCが大パニックをおこした。プレイヤーは対応しようとするもそのNPCが邪魔で私の配下を追いかけるのがやっとである。


 数を分けたことで呼び出した配下の一割程この行動で失ってしまったけど仕方がない。

 私の目的はこのガイアを混乱させて、光の勢力に忍び込める魔王の存在がいるという事を相手側に知らしめることなのだから、とパーシヴァルさんから聞いた。



 ガイアの各地に散らばった配下が集う場所はガイアの王城前。

 そこに自然と配下を追ってきたプレイヤーも集まってくるわけですが……お城のほうからも残っていた騎士団が出てきたことで配下は挟み撃ちにっ!


 次々やられていく配下達。だけどやられているのはランク2以下の弱い子達ばかり。

 ランク3とか4のフラビーやピジョル、デスウルフなどの配下に関してはその不利をも気にせず、それぞれが獅子奮迅の活躍を見せた。



 そうこうしてるうちに、町の外に居た4体のレイドボスが倒され、外からの増援が増えそうなタイミングで残りの200体を呼び出し、王城前までの進路妨害をするように指示。

 後から呼び出した子達の中にもランク4のモンスターが数体居るので全滅はしないはず……。


 「魔王アイリ様。王城前の配下が7割戦死しました」

 「ええ、わかってる……そろそろ頃合かな……」


 私は徐々に外から戻ってきたプレイヤーや騎士団の残党の様子を聞きながら最後の指示を出した。

 勿論3度目の行動許可であり、それは各モンスター達が持つ最大の攻撃を放つということである。


 フラビー耳を振り回しながら空をとび、その耳の遠心力でプレイヤーをぶった切っていき、ピジョルはエアグラビティという上から空気を押し付け、相手をつぶしにかかった。

 デスウルフなどは範囲内に居る自分のレベル以下の相手を確率で即死させる死の咆哮を使い、体力が残って余裕そうな顔のプレイヤーを次々と討ち取っていった。


 その攻撃が終わったあと、王城前に居た多数のモンスターはその姿を忽然と消していた。

 遠目からそれを見ていたプレイヤーが言うには、掻き消えるように消えていたらしい。




 そのころ私はというと、黒いマントで体を覆いながら地下水路を伝い、ガイアの城に潜入している。

 当然城内に入ると近衛兵に見つかるわけだが、そこは私の覇気で魅了し無力化した。

 無力化した近衛兵から玉座までの道を聞けば、あとはイザベラさんが片付けてくれるので私はただ前に進むのみ。

 そして潜入して15分もしないうちにガイアの玉座前の扉にたどり着く。


 「さて、人王さんとご対面ね。ちゃんと挨拶したほうがいいのかな?」

 「その必要はございません。相手に私たちの存在を認識させた時点でこの作戦は成功ですから」


 ふむふむ。でも威圧目的で戻ってきた配下たち呼び出しとこ~。だって数は暴力だし?




 「貴様がわが城に攻め込んだ魔王か。見事な手腕だが、ここまで来たのは失策だったな!食らうが良いっ【セイクリッドランス】……グヌッ!」


 人王ジークハルトは玉座に座った状態で攻撃系と思われるスキルを発動させた。そのスキルにより先ほど呼びなおしたばかりの私の配下の大多数が減らされる。

 どうやら闇に属するものを滅する力を持っているらしい。だけど、発言から察するにこの場所でしか使えない類のものらしい。


 まっ、私もタダやられるわけにはいかないから、この部屋に入ったときには覇気を使用していた。(といいながら実はイザベラさんから覇気を使用しておくように言われてたんだけどね)

 それでもこの攻撃スキルの一部を無力化できなかったんだよね。まあ私とイザベラさんも助かってるみたいだからいいかな。やっぱり普通の覇気のままじゃ王との戦いはきついのかも。


 なお、最後のグヌッは私の覇気が人王に届いたのかなぁ。でも完全には堕とせなかった。精神耐性が高いのかもね。私にとっては意外と厄介な相手かもしれません。



 

 《【魔王クエスト3】:手勢を使って光勢力を混乱させよう(難易度5)を達成しました》

 《【魔王クエスト(Another)】:人王を倒し、ガイアを掌握せよ! が発生しました》



 そんなことを考えている間に、きたきた。……余計なものもきた!アナザークエストとかいらないし!


 私の魅了の覇気に対抗して苦しそうな人王。手を下すチャンスに見えなくも無いけど、なんとなくいやな予感がする。

 私はイザベラさんに目配せして引く事を合図するとイザベラさんも同意してくれた。


 「ぬぅぅ!待て!我が城を汚した魔王!名前を教えるが良い!」

 「それは遠慮するよ!それじゃ!」


 私は人王の質問に答えることなく逃亡。そしてやはり出会う警備兵と近衛兵を魅了して無力化しながら地下水路へ。




 そこにはパーシヴァルさんが待っており、ひとつのアイテムを差し出してきた。


 「これは闇の領域へ帰還するアイテムです。使ってしまうとしばらく光の勢力に戻ってくることは出来ませんがよろしいですか?」


 えー、そうなんだー?んー、それじゃしばらくコトノやシノアたちと会えなくなるのかー。でもこのままこのガイアに滞在してても人王の追手がかかるだろうし、仕方ないよねー。

 というわけで手早くフレンド登録したコトノ達に、しばらく闇の勢力がありそうな地域を探しに行きますというメッセージを送っておく。


 こうすることで長期間ガイアに戻らなくてもいい理由になるしね。なまじ、コウガたちが強い事を知っているから怪しまれることも無いはず。



 「えぇ、闇の領域に戻りましょう。今度この町に来るときは人王を討ちに来るときね……」

 「ではこちらへ……」


 パーシヴァルさんの近くに移動すると同時にアイテムが使用される。

 次の瞬間私たちは光の勢力から遠く離れた闇の勢力に属する荒野の町ユールへと飛んでいた。




 そのころ人王ジークハルトは……


 「おのれ、勘のいい魔王じゃな。あのまま我に近づいていれば城内に居たネズミもろとも消し去れたものを……。じゃがまあいい、そのネズミの気配も魔王が引くと同時に消えよったわ。


 それにして今回の魔王は珍しい能力もちが多いようじゃな。さっきの魔王も声音から察すにオナゴにちがいなかろう。


 フッ、今回は逃がしたが、あやつの手管は大体つかんだわい。次は葬ってやろうぞ……」


 とかいってたとかなんとか。

これで1章?っぽいのがおわります。

2章っぽいのは10話くらい書きだめしてから投稿していく予定ですが、現在在庫0.5話分(一話もない)しかないのでまだしばらくかかるかと~。


他にもなんとなく書きたい感じのものもあるし、のんびりお待ちください。

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