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57話 閑話 ー ショッピングモールでの一幕 ー

 ピピピッピピピッ……


 「ふあぁ……」


 今日は日曜日。ベッドから数歩分離れた所に置いてある目覚ましを止め、顔を洗うべく洗面所へ向かう。いつもならこの時間はまだ布団でウニウニ~としている時間ですが、今日は用事がありますから起きないとね。


 用事というのはアルバイト先の先輩である小枝子さんとその妹である奈緒ちゃんに付き合ってお買い物に行くというもの。小枝子さん情報によると今日は奈緒ちゃんの誕生日ということで、ほしいものを買ってあげたいらしい。

 毎年、このように誘っているので奈緒ちゃんも自分を祝ってくれるものと分かっているのでニコニコして誘いに乗ってくれるんだとか。姉妹の仲が良くてうらやましいね。


 ちなみに奈緒ちゃんは今日私が一緒することなど知る由も無いので、現地で会って驚かせるのが目的であったりする。



 洗顔とクレンジングを済ませ、いつもどおり軽い目のお化粧を行う。軽い目といいつつ1時間半くらいかかっちゃうんだけどね。

 大学に行くときのように当たり障りの無い見栄えに満足した私は時間を確認。


 「待ち合わせは10時にショッピングモール1階の待ち合わせ広場だったね」


 この待ち合わせ広場というのは文字通り恋人や友達などが集まるための目印として分かりやすいハートのオブジェクトが飾られた広場のこと。


 現在時刻は9時をすぎたところですから思ったより早く準備が終わってしまったみたい。

 家にいてもサイトの閲覧とかして時間を忘れちゃいそうだし、広場の前にあるカフェで軽く朝ごはんでも食べておくことにしよう。



 そう決め、すぐにバッグを肩に掛け家を出る。

 ショッピングモールまでは徒歩10分ほどの距離だから迷うことも無いしね。……あっ、でもモール内では迷うかな。だって私があのモールに行く時は化粧品を補充しに行く程度なのでその系統のお店しか把握してないんだよね、あはは~。


 ピロロン♪


 ショッピングモールに付くとほぼ同時にメッセージが届く。送り主は小枝子さんで合流するタイミングについて指示が端的に書かれていました。多分、奈緒ちゃんに気づかれないように送ったため、こんな形になったんだろうね。


 【9:13 奈緒と家を出ました

 20分ぐらいしたら着くけど、合流するのは10時でいいからね。それまで奈緒を連れまわしておくから!】


 もちろんこのメールに、すでにモールにいることを返事しておきました。連れまわしているときに鉢合わせないようにカフェには来ないようにお願いもしておく。

 鉢合わせしたらいろいろ台無しになっちゃうもんね。


 その返事は【早いね!了解】とだけ書いてありました……。



 というわけでカフェでの食事を終え、時刻は9時50分。

 待ち合わせ広場にはちらほらとヒトが集まっており、ハートのオブジェクト前で携帯を見ながら誰かを待っている素振りを見せる女子高生や、数人の男性の集まりが辺りを見回していたりしてる。


 まだ二人はここに来てないみたいだし、二人が来るまで待っておこうかな……。

 そう考えてベンチに腰をかけ、人を待ってますという雰囲気を出しておく。

 けど、なんか大学にいる時と同じような視線が突き刺さって痛い……なんか注目集めるようなことしたっけ~?


 これは単に美人が物憂げに広場に座っているのが画になっているとかで、気づいた人たちの注目を集めていただけである。



 「あっ……」


 私は広場に向かって仲良く話しながら歩いてくる二人の女性を見つけた。もちろん小枝子さんと奈緒ちゃんだ。


 このままここにいては二人に見つかってしまうので、二人から離れるように広場の裏側に回る。ここから偶然を装って二人に話しかけないといけないからね。という考えになったのは、断じて仲の良い女友達が少ないからじゃない!



 「さてっと、奈緒、ちょっと疲れたしそこのベンチにでも座ろっか」

 「えっ?あっ、うん良いけど……まだ来たばっかりなのにもう疲れたの~?」


 小枝子さんはベンチに座ると周りを見ている。どうやら時間になっても現れない私に対してあれ?っと思っているらしい。


 私はその裏側から二人の座るベンチに忍び寄り……後ろから二人に抱きついた。


 「わっ!」

 「ひゃあっ!」

 「ふひゃっ!?えっ!!」


 前から順に私、小枝子さん、奈緒ちゃんの声だ。うん、まあ二人ともいい反応で私は嬉しいです。


 「あ、あれぇ!愛梨さんっ!?な、なんでぇ~?」

 「あ、愛ちゃん……こら~!」


 奈緒ちゃんはなぜか頬を染めながら嬉しそうに聞いてくる。小枝子さんは予定にない驚かせ方をされたので怒ったように話しながらも顔が笑っている。


 「奈緒ちゃん、お誕生日なんだって?おめでとう~。今日は私も一緒に行動させてもらおうと思うんだけど良いかな~?」


 「ふぇっ!も、もも勿論ですよ~。アルバイト先以外で会えてとっても嬉しいです!よろしくお願いします!」


 ここで私は今回の件の発案者が小枝子さんであることを説明すると、奈緒ちゃんは小枝子さんに「うぬぬー」と可愛くにらみつけていたのが印象的でした。



 こうして3人でショッピングモールでのお買い物が始まったわけですが、奈緒ちゃんがほしいものが見つからなかったんだよね。だから午後までは店を見て回るだけに終わった。


 「お昼ごはんを何処かで食べよっか」


 小枝子さんの発案ににべも無くうなづく私と奈緒ちゃん。

 話し合った結果、うどんを食べたいということになったのでモール内にある○亀製ミェーンというお店へいき、食事をした。


 「こちらのお買い物金額1000円につき1枚お渡ししている福引券を5枚集めて1階の特設広場にお持ちくだされば、豪華な景品が当たる福引が出来ますよ」


 若い男の店員さんが3枚の福引券を差し出しながら丁寧に説明をしてくれた。


 「えっと?私達全員でも2000円も食べてないのにどうして3枚も?」


 「あっ、一枚はおまけってことで。ぶっちゃけると福引券とか最終的にかなり余るんだし一枚くらい多く配ったところで文句言われないしさ。あと残り1枚はオレ個人のなんだけど、オレは福引とかまわさないから回してくれそうな人にあげようかと思ってさ」


 へぇ、裏事情も聞くことになったけど、男性従業員の厚意って事なんだしもらっておこうかな?

 さて、それじゃ、ショッピングの続きですね!


 「と、ところでもし良かったらメールアドレスとか教えてもらえると~……ってもう居ねぇっ!?」


 店を出たときに後ろが騒がしかったみたいだけど気にしないでいいかな。


 「愛ちゃん……無自覚?……浮ついた話がない理由を垣間見た気がするわ~……やっぱ天然系美人だからかしら?」

 「さすが愛梨さんっ」


 お店を出てしばらく歩いたところで二人にこんなことを言われたけど、その理由に関して全く身に覚えが無いんですけど?



 午後からのお買い物は私の良く行くコスメショップで、そこの顔なじみで良く話す店員さんを交えて奈緒ちゃんにお化粧講座を開いた。

 奈緒ちゃんのお化粧の仕方が悪いとかじゃないんだけど、アルバイト中に見たときにちょっとファンデーションの塗りが甘かったりしてたので、この時がチャンスとばかりに熱く語っちゃった。

 あまりの語りっぷりに小枝子さんは苦笑いしてたけど、当事者である奈緒ちゃんは喜んでくれたのでいいとする!


 当然、せっかく店にきた事だし、足りなくなりつつあった化粧品を購入して補充したのは言うまでもない。今買って置けば次回までしばらく持つから【Eternal Story】に集中できるしね。

 このお店ではお買い物金額が諭吉さん含めてでのお支払いだったのでおまけ分を含めて福引券を12枚いただきました。……プリペイド携帯機能?そんなもの使う気はないよ。


 それにしても……シフト増やさないとね~。あっちでの課金アイテム関連でもお金使うんだしさ……。



 「あ~、今日は楽しかったです。今年はアイリさんが居てくれたので余計にそうおもったのかもしれません」

 「愛ちゃん、私からもお礼を言うね。今日はきてくれてありがとう」

 「そんな……私もすごく楽しかったのでこちらこそお礼を言わせてほしいくらいですよ」


 二人からそんな嬉しい言葉をもらったのは夕方の18時過ぎ。

 奈緒ちゃんへのプレゼントは結局テディベ○のぬいぐるみになった。本人いわく、通算18体目らしいけど私と小枝子さん二人からのプレゼントなのでより一層大事にすると息巻いていた。


 「それじゃあ、帰ろう?お姉ちゃん、愛梨さん」

 「あぁっ!」

 「ん?どうしたの?愛ちゃん」


 まだ最後の大事なイベントが残ってるよ!せっかく15枚の福引券があるんだからまわしていかないと!

 そのことを伝えると存在すら忘れてたという二人。なんだって~……私はすごく楽しみにしてたのに!


 「それじゃあ、福引に行こう~」

 「5枚で1回って言う話だから1人1回まわせるね」

 「そうね」



 というわけで福引がある特設会場に到着。

 福引の景品を見ると全体的によさそうなものが多かった。


 特等:ナーブアセスメントポット(在庫1限り)

 一等:高級ホテル宿泊券+温泉旅行(二名様一組)

 二等:ショッピングモール商品券(三万円分)

 三等:高級肉セット(すき焼き&焼肉)

 四等:ショッピングモール商品券(三千円分)

 五等:トイレットペーパー(6個入り3ロール)

 六等:ポケットティッシュ(1つ)


 とこんな感じ。特等のNAPがあたれば、売却して大金が手に入るよ!ということで狙いは特等!


 「うーん、温泉とかお肉とかが気になるかなぁ」

 「特等以外なら何でもいいわね」


 どうやら二人ともNAPには興味がなさそう。かなり人気があるって聞いてたんだけどちょっと拍子抜けかな……。


 「いらっしゃいませ!現在サービスタイム期間中ですので福引券3枚で1回まわせますよ~(そのかわり外れ玉がかなり増えてるけどー)」


 なんだってぇ!?福引の担当している人の裏の声には気づかず、テンションが上がる私。


 「じゃあ愛梨さんが3回、私達は1回ずつで大丈夫ですよ~」

 「愛ちゃんのその熱い目を見てたら、そういいたくなったの。ぶっちゃけ私達は回さなくてもいいくらいなんだけどね(どうせ、福引券を手に入れたときのお金は愛ちゃんが出してたのばっかりだし)」

 「いいの?ありがとう!きっといいものを当ててやるんだからぁ!」






 「えっと、愛ちゃん……気を落とさないで、ね?」

 「愛梨さん……そのえっと……」

 「………」


 ショッピングモールの敷地の外に出るまで一緒に来てくれた小枝子さんたち。

 二人が私を見る目は哀れんでいるように見え……なくもない。(実際は心配してるんだろうけど)

 声をかけてくれた小枝子さんの手には旅行券、奈緒ちゃんの手にはお肉セットがあった。そして私の手にはポケットティッシュが4つ……。


 お察しのとおり煩悩まみれだったせいか私だけが外れを引いてしまったのです。あんなに回したのに全部外れだなんてぇ!

 なのに1回しか引いてない二人は上位賞を当てたんだよねぇ……なんて理不尽っ!


 「あの、愛梨さん……このお肉セットでよかったらどうぞ!」

 「うぅん……気を使ってくれてありがとう、奈緒ちゃん。それは奈緒ちゃんが当てたものだから私が受け取る資格は無いよ……」


 まだまだ落ち込みたいところだけど、もうすぐ敷地を出るし、二人とは笑顔で解散しないといけないし、気を入れなおそう!



 「まさか愛ちゃんが福引にあんなに熱くなる子だなんて思わなかったわよ。会場の人におねだりまでして4回目を引かせてもらってたのは驚いたけど」


 うぅ、そこを言わないでほしい!またおちこんじゃう。さきほどティッシュが4つと表記したのはコレが原因だったのです。

 3回とも外れだったのが悔しかったので何とかもう一度だけ引かせてもらえないか必死に頼んだところ、タイムサービス中だし、了承!ってことで特別に引かせてもらえた。けど結果はいうまでも無く惨敗。


 「まああの会場のお兄さんも愛ちゃんの情熱にまけて……というよりは愛ちゃんの懇願したときの表情にやられてたわよね……後はその服装?」


 何のことでしょうか?私としては必死に頼んだだけなんですけど?今日の服装は夏らしく薄手のワンピですね。別に変じゃないと思う……。


 「愛ちゃんの頼み方したとき、あのお兄さんの目の前には愛ちゃんの胸元が見える位置だったのよ?」


 あぁ!それであのお兄さん顔が赤かったんですか。別に全部見られた訳でも触られたわけでもないし、減るものでもないですから気にしないよ?それに私の胸って巨乳ってほど大きい訳じゃない(というかむしろ平均程度なんだけど?)から見ても嬉しいものじゃなよいよね。むしろ大きくなくてごめんなさい?


 「いや、そういう類の認識じゃないからね!?(愛ちゃんはもっと破壊力抜群(いろいろな意味で)の自分の表情を客観的に見たほうがいいと思うんだけどなぁ、胸の大きさとかは、愛ちゃんの顔が間近にあるって言う時点で比べるに値しないって)」


 小枝子さんが必死に説明してくれてるけど、理解しがたい内容だったので右から左へ抜けて行っちゃいました。小枝子さんは細かいこと気にしすぎなんです。


 しばらくして小枝子さんの語りが終わったところで、帰る方向が別々の私達はお互いに挨拶をして家路に着きました。





 ーsideー 特別会場のお兄さん


 あぁ、だりぃわー。何で日曜なのにバイトしてんだろうなーオレ。

 まあ長年の付き合いがあるダチが病気でダウンしたらしく、急遽頼まれて仕方なく入ったとはいえ、だりぃ。


 しかも真昼間から入ってるんだけどその時間、特設会場とかに利用客ぜんぜん居ねぇっての。

 福引の中身の特等の玉がちゃんと入ってるかとかそういうのしか確認することないから暇で仕方ない。

 いっそのこと福引の中に入ってる玉を全部数えるか?いや、それこそ、ダリィわ。


 そんなこんなで夕方、そろそろシフトも終わりになるころに大学生くらいか。ごっつい美女とその連れが福引しにきた。

 オレは思わずガン見してたわ。勿論連れの二人も街中で見れば声をかけたくなるくらいに十分に綺麗とか可愛いスペックを持ってるんだけど、今回はその美人度が群を抜きすぎてたな。

 くっそぉ、仕事中は携帯持ち込み禁止だから写メが撮れん。ついてねぇわぁ。


 まあその子達が福引しにきた瞬間、とっくに終わってたサービスタイムだとか言ううそをついてしまった。まああとで集計したときに足りない福引券の補填はオレがするからいいわ。

 そのくらいの出費でこの美女と会話が出来るならなっ!


 でその美女が福引まわしたんだけど3回全部外れ賞。さっき確認したときに外れ玉もっと減らしとけば良かったとどれだけ後悔したことか……。まあ連れの二人は一等と三等をそれぞれ当ててたけど。


 その後美女が必死に頼んでくるから、もう一回くらいならと俺の権限(そんなモンはない、あくまでも後ほど補填する分)でまわさせてあげた。

 いやー、美女さんのあの絶世と評してもいい顔を間近で見れた(脳内保存完了)うえ、ドアップで谷間までみせてもらえた(以下同文)んだぜ?後者に関しては本人は意図してないだろうから役得だな。

 まあ、この位してあげられなくて何が男だってんだ!というわけの分からない考えに至ったわけだ。


 しかし結果は残念賞。

 美女はフラフラとおぼつかない足でモールを出て行ってしまった。それ追って連れの二人も行ってしまい残ったのはオレ一人……。


 ……あっ、しまった!電話番号聞くつもりだったのに!てかもうシフト終わりの時間じゃないか!追いかけて話をと思ったら、次の福引を回す客がきた。そいつは男で特等を当てて帰っていった。

 ぬあっ、いったん事務所に行って今日の作業報告書かないとだめだった。もう、間にあわねぇ……ちくしょう。


 けど、またあの美女がくるかもしれないし、今度福引のイベントがある時はココでバイトしてもいいな。ヘヘッ。

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