42話
工房を出た私とシノアはフレンド登録を済ませ、そのまま狩に行こうと言う話になりました。
私としてはクルスの新装備の性能を試しておきたかったのでちょうど良い。だって大剣を使えるシノアが近くに居てくれるなら、他のメンバーの護衛いらないでしょ?ふふっ。
これで思う存分、皆に暴れてもらえるね。私の方は近くにシノアがいてくれるはずだから話し相手としても申し分ないはず!
あとシノアから呼び捨てで良いといわれたので、これからはそうする事にしますね。
現在パーティは私・シノア・コウガ・セツナ・イリス・クルスの6名。何で仲間モンスターがパーティ枠にいるのか……ですか?
そういえば説明してなかったっけ?
光の勢力側に出現するモンスターを調教で仲間にした場合は、普通にパーティメンバーとして扱われる仕様なんです。だけど闇の勢力側で魔王としてテイムし、その配下となった者達を呼び出した場合はパーティメンバーとして扱われない。攻撃の瞬間にだけ呼び出すことになるので何体呼ぼうと魔王の攻撃スキルと認識されるんだって。
そして魔王の場合は呼び出し、その攻撃指示が終わったらどこかへ戻っちゃう。そこの説明だけはされてたから間違いない。
この辺の情報について光の勢力側に居る今現在は、魔王に関しての情報がロックされちゃってるから、調べたくても調べられないんだよね。
魔王の力の発揮の仕方を知ってれば発動はするらしいんだけど……全然見当もつかないよ。
だからこそロックを解除する為に魔王クエストを進めてその辺の事を知りたいんだけど……。
「……その子達、かなり強くないですか?元々普通のモンスターだったんですよね?」
シノアが声をかけてくる。私達が居るのはオークやイタチが出る高山下層部・深部にある森。
女性プレイヤー二人で入森したことで、深部に入り込むなり直ぐにオークの群れが現れた。女が二人入ったからオークが増えたってのは私の適当な推理なので気にしないように。けどあながち間違ってるとも言い切れないところもあるんだよねぇ。
それらをコウガ達がちぎっては投げ、ちぎっては投げを繰り返した結果、強さが目立ってしまい、さっきの言葉が紡がれた。
「まあね。私自身が弱いからその分、この子達の成長幅が大きいみたいなんだよね」
「そうだったんですか?それにこのコウガくん達は、アイリさんの言う事をすごく良く聞いてますよね。私が聞いてた限り、他の調教師の連れているモンスターはせいぜい、誰々に攻撃しろとかそういう簡単な指示を聞くくらいしかしないはずなので」
へぇ?普通の調教師の仲間モンスターはその程度の行動しか出来ないんだね。そう考えるとコウガ達に関してはコストペナルティ解除の効果でよく動いてくれてるよね。改めてそういう情報を聞くと、キャラメイク時の選択は間違ってなかったと思える。
ある程度のオークを片し終わり、残ったのは棍棒を持ったオークが1体。そのオークもコウガの威嚇で数秒程度行動不能になっている。
これで落ち着いてクルスの攻撃を試せますね。今までの乱戦ではメイン武装の死銀の爪で戦ってましたからね。その爪もかなり強いのでオーガ相手にしても良い線いけるんじゃないかな?
「クルス、装備を銀装連砲に変更するからおいでー」
呼ぶと直ぐにクルスが私の前に降りて来る。調教スキルから仲間モンスターの装備の変更を行い、爪から大砲装備へ変更。
するとクルスの背中に銀装連砲が装備され、足の爪を細かく動かすことで指に応じた砲口から弾を撃てるようになったみたい。
ちなみに装備変更するのに降りてきてもらう必要なんて無い。ただ私がその変化を目の前で見たかっただけ。
「へぇ~、お兄ちゃんにしては良い物作ったね~」
「おぉ~。格好良いよクルス~。でもその装備してるとモフモフできる箇所が少ないから、基本は爪装備で行こうね?」
「クケェ!」
うん、クルスも似たようなことを考えていてくれたに違いない。シノアがこっそり毒を吐いてるけど気にしない。……さて、それじゃそろそろ動きだすだろうオークに実験開始です!
「クルス……スタンバイ!準備は出来てるね?「クケッ!」……よしいくよー、レディー……ファイヤー!」
ズドーン……ドカーン!
クルスが放った大砲の一発はオークを消し飛ばし、20メートル後方まで飛んで着弾し大きな音をたてた。
ちなみに掛け声ははじめて使うものでテンションがあがってたから出ただけです。次からずっと号令するわけじゃないからね。
「おぉっ!?さすが大砲、射程距離がすごい~……」
だってこちらが使える魔法は大体10メートルくらいまでしか届きませんから。まあレベルの低い魔法ならと付きますけど。
予想以上に着弾音が高かった為、周囲から敵の気配が多く感じられるようになりました。その数は大体20~30体ってとこですか。
寄って来るモンスターはオークが5割、イタチが4割、その他の鳥や移動植物モンスターが1割ってトコですね。
「あ、ああっ、アイリさん!も、モンスターがこんなにたくさん出てきちゃいましたよぉ!?ど、どどっどうするんですかぁぁ!」
シノア……驚きすぎ、ドモリ過ぎだよ?どうするかなんて言う間でもないじゃない?
殲滅よ、せ・ん・め・つ(ハートマークは付きませんよ)。
「まあ慌てないで良いよ。この数なら進化前のコウガ達でも倒せたから心配ないし。そういうわけでコウガ、セツナ、クルス、イリス……今回は皆でがんばってきて!
シノアは私の守りをお願いするね。まあコウガ達が取りこぼししないだろうから意味は無いかもしれないけど」
「ガル~」「グルルッ!」「クケェッ~」「コッポ~♪」
「えっ?はい、わかりました」
うん、皆元気に返事をしてくれた。私の護衛だけど……シノアに頼みました。
何も言わなかったらシノアなら普通に戦う気だったかもしれない。シノアにまで前に出られたら私がオークとかにやられてしまいます!
あっ、やられて……っていうのはニ重の意味でね?少なくとも精神的にはそうなるよ!あえて詳しくは言わないけど!
まずはオークの群れに対してはセツナの氷魔法で動きを鈍らせ、そこにコウガが切り込むのはいつもの事。なんだかんだで獣種族同士の【同種連携】を持つコウガとセツナのコンビが一番動きが良いんだもんね。
二人だけでもこんな動きをしてくれるなら、牛とか馬とか羊とか?その辺のモンスターで仲間になってくれたらかなり凄くなりそうなの。
だから出来れば早いうちに同じ獣型のモンスターを増やしてもっとすごい連携させてみたいな~。
続けて現れたのはイタチの群れ。コイツラは相変わらずクルスが前に出ると動きが止まるのでそこをイリスやクルスが水と土魔法を使う事で次々と倒していく。
時折、クルスが銀装連砲をぶっ放し、すごい音を立ててるけどこれ以上の追加は来ないみたいだね。
「キ、キュキュー……!」
あまりの攻撃の激しさにイタチが数体逃げていく。その中には何度か振り返り、クルスの攻撃が自分の方を向いていないか確認する固体も見える。
確認する暇があるなら一目散に逃げた方が良いと思うんだけどなー。まあクルスは逃げる相手は追わないみたいだから大丈夫よきっと。まあそれ以外の3体は……追って行くかもしれないけどさ。
……クルスから逃げない強さを持ったイタチが居たら勧誘したいところだったんだけど、残念ながら誰も残ってない。
10分ほどでモンスターの群れを倒しきったコウガ達は清々しい顔のドヤ顔をしている。
今までは誰か一人は私の護衛と言う名のはお留守番をしていたから4体で動くことはなかったから、初めて全員で行動できて嬉しかったのかもね。
この戦闘でコウガがレベル8、セツナがレベル7、イリスがレベル6、クルスがレベル11となった。
イリス以外の3体はランクが高いから成長が遅い方だけど、イリスはまだランク2だからそれなりに成長が早い方みたい。この調子で次の進化可能レベルまで突っ走って欲しいものです。
「アイリさん……私、何もして無いのにレベル21まで上がっちゃいましたけど?」
「シノアは元々いくつだったの?」
「ここに来る前は18ですね……」
オークとイタチ、その他を倒して3つもレベルアップですか。結構あがるもんなのですね。少し羨ましい。
掲示板での適正レベルも30~って予想されてたし、納得のいく経験値量だったっぽい?
まあ私の気配察知で得た感じは、海岸とこの森はあまり差は無いものだったから、適正レベル帯はもう少し下げても良いと思うの。掲示板では30前後って言われてたけど25位でもプレイヤーの腕次第でいけそうです。
「でも私の護衛をしてそれだけもらえたら良いほうだよね?」
「良いもなにも経験値の入り方が破格過ぎますよ!これじゃ私、ただの寄生じゃないですか~」
パーティーを組みコウガ達が戦ってる間、敵が来なかったとは言え私の護衛と言う仕事をちゃんとやってのけてたんだし、その位の報酬はあって然るべきでしょ?何で文句を言われてるのかな?分からないよ……。
「「グルルルッ!!」」
「!どうしたの?コウガ、セツナ」
コウガ達の危険を示す唸り声に気付き、その方向を見るとそこに居たのはオーク……なんだけどさっきまで倒してたオークと雰囲気が違う……。もしかしてこれが亜種?もしくは変異種?
オークは茶毛メインなのに、目の前のオークは群青っぽい色をしてる。だからとりあえずこいつは青オークで。もう少し名前を調べられる範囲に入ってきたら名前が分かるし。
「ブモォォーー!!」
「「何で鳴き声が牛 (なの)っ!?」」
私とシノアが声をそろえて叫んだ。




