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40話

 「ややっ?来てくれたん?てぇことはウチからの依頼、こなしてくれたんやんな?」


 「うん。言われた分は集めたつもりだよ。とりあえず確認して欲しいかな」


 ユーディットのお宅訪問すると間もなく出迎えてくれた。あれ?前に見たときよりもお肌がかさ付いてる気がする。きっと色粉の研究とかで肌のお手入れをしてる暇が無いんだろうけど、せっかく綺麗なお肌なのにちゃんとスキンケアしないと勿体無いよ。


 ここで素材を渡したら余計に研究に打ち込んでお手入れしなくなっちゃうんじゃ……。

 そんなことを考えちゃったけどユーディットは早く研究をしたいらしく、私が素材を出すのを今か今かと待ち構えています。


 ……はぁ、仕方ありません。研究の結果がでてからでも良いので、しっかりスキンケアをしてもらえるように交渉しておきますかぁ。


 アイテムボックスから素材を取り出して並べていく。一つ一つ取り出す度にユーディットの瞳がキラキラと輝いているのがよく分かる。


 「最初に《輝赤石》これは複数集められたので持てるだけ持ってきた。あとは《岩清水》、《碑貝の殻》、《ウツボカズラの枝》これで全部だよね?」


 「せやせや。ホンマに助かったわ。ウチやとモンスター退治ようせんからなぁ。

 冒険者に頼んでも、いつ持ってくるかわかったもんや無いし。そういう意味でもアイリはんがこんな早ぅに纏めて持ってきてくれて良かったわ」


 喜んでもらえたようで何よりです。というか、依頼受諾時はアンタって呼ばれてたのに今は名前で呼ばれましたね。うん、仲良くなれた気がする。

 スパイたるもの敵対勢力の住民と仲良くなることに意味があるのかといわれると、ありなのかなぁ?


 「ほな、忘れんうちに報酬の話をしとくな~。アイリはんが素材をまとめて集めてくれたおかげで滞りなく研究も進むやろう。それに一番使う輝赤石を大量に持ってきてくれたところに感動したわ~。

 達成報酬はギルドに預けてるからそっちで受け取ってもらうとして……や。

 これも追加報酬として渡すわな~」


 ユーディットから手渡されたのは見た感じは古びた書物。アイテム名は《派生の書物》。説明文を読む限りユニークスキル以外であれば一段階ほど成長させるアイテムみたい。


 「ウチもその本を調べてみたんや。かなり珍しいもんみたいやねんけど、ウチじゃあ扱えへんみたいなんよ。せやけどアイリはんなら使える思うから、ウチからの感謝の気持ちとして受け取ってもらえん?」


 どうやらこう言ったアイテムは住民には使用できない仕様みたい。まあ使えるなら報酬には出さないだろうけどさ。とりあえずは貰えるんだったら貰っておきます。


 「ありがとう、ユーディット。それでさ……」


 先ほど思ったスキンケア云々に関してちゃんとやってくれるようにお願いしておきました。

 だってさ、街の女性がお化粧しないから色粉を作るって言ってるのに、作った本人がその下地であるスキンケアしてないとか矛盾しまくりでしょ?


 あとユーディットに色粉が出来たら私にも譲ってもらいたい事を言うと、非常に喜んでもらえました。

 年頃の女の子としても、こちらでのお化粧にも興味があるからね~。ユーディットがどういったメイク術を持っているか楽しみ。


 ユーディットの研究所からおいとまする時に、また依頼したい事が出来たら指名依頼するからよろしくとも言われました。……今回みたいに面倒なのはやめて欲しいなぁと思いつつ了承する私がいた。



 その後ギルドへ行ってユーディットからの依頼達成を報告。

 そうすると《ランダムスキルの種》というアイテムと報奨金12万Dを受け取った。本来の基本報酬は10万Dとランダムアイテムだったので、お金に大幅な上乗せがありました。2割も増額とか、ユーディット……報酬多く渡しすぎじゃない?破産とかしないでよ?


 ランダムスキルの種のアイテム説明を読むと、コレもまたすごく珍しいアイテムで、どうやら食べることでスキルを取得できるみたい。覚える事ができるスキルは自分の適正職業で修得可能な物の中からランダムで選ばれるって。



 「私の場合、調教師か魔王(ボソリと呟くように)の適正の中から選ばれるってことだよね」 


 調教師だったら……もうちょっと仲間を増やせるように補助スキルがほしい。

 魔王だったら攻撃魔法の適性位はあるはずだし、使ってみようかな?流石にいつまでも攻撃スキル皆無のままで居るって言うのはダメな気がするしね。……いざ!


 ポリポリッ……


 早速ランダムスキルの種を頂きました。へぇ、なかなかフルーティな味でおいしい~。

 説明にはなかったがランダムスキルの種にも当たりハズレがあり、美味しいと役に立つスキルを得られ、まずかったら役に立たないスキルを覚える事になるんだって。

 そういうのは食べる前に知りたかったよ!


 《アイリが【威圧】のスキルを修得しました》


 威圧:相手の行動を止める。威嚇や咆哮といった阻害系と同系統のスキル。威嚇や咆哮の効果発生はレベルやランクに依存するが、この威圧に関してはステータスの精神力や意志力が影響する。



 「攻撃系スキルじゃなかったかぁ。えっと意志力ってたしかCHAのことだったよね。もしかして私ならこのスキルすごく有効に使えたりする?

 ……だとしたら、さっきユーディットから追加で貰った派生の書を使えばさらにすごくなるんじゃ?」


 思い立ったが吉日って言うよね?そういう訳で……はい、派生の書、使っちゃいました~。私は宵越しのアイテム(お金)は持たない趣味なんです(違っ


 《アイリの【威圧】のスキルが派生成長し【覇気】に変化しました》


 予想通り成長したよー!す、すすす、スキルの効果はどうなのかな?



 覇気:使う本人にそれを必ず発動させる!という強い意志、もしくはそれに順ずる強い想いがないと一切効果が現れない。周囲大範囲にスタン(中)の効果、さらに詠唱中・発動中のスキルを強制キャンセル。

 特定のステータスが高い状態で発動すると、そのステータスに応じた追加効果が現れる……。



 あ、あはは。前半の説明文が分かりづらいよ……。表現が曖昧でちゃんと理解しないと常時発動が出来なさそうだね。

 でも最後の説明に書いてある特定のステータスについては威圧から派生したんだし、CHAとかで良いと思う。

 まあ使い勝手に関しては実際の戦闘で試すしかないんだし、スキルについてはここまでかな……。



 「さて、次は図書館でパーシヴァルさんの依頼品について調べないと。もう依頼を受けて一週間以上経つし、いい加減テコ入れしないとっ!」


 ガイアの街の図書館は石造りで5階建ての建物。人の出入りは……あまりありませんね。見える範囲に一人二人いるくらいだね。やっぱりこう言うところに人は寄り付かないのでしょうか。私は結構図書館って好きなんですけどねー。

 えっ、その割にはサービス開始後一月近く経つのに一度も来てないじゃないかって?そ、それはそれ、これはこれです!



 「いらっしゃいませ。本日のご用件はどういったものでしょう」


 入ると司書さんらしき人に声を掛けられた。私は珍しい素材のありかについて調べに来たことをいうと、そう言った類の本を置いてあるフロアに案内されました。

 普通の素材関連は1階、珍しい素材関連の本は5階建ての内の4階にあり、聞いてなかったら1階から虱潰しに探さないといけなくなるところでした。司書さん感謝です!


 「えっと、調べたいものの名前は……《明星の白露(みょうじょうのはくろ)》と《鬼王の大角》、あとは《霊水草》だね……あ、あった!」


 明星の白露は予想通り、早朝にノースガイア山の山頂に咲く白露草という花から採取できるみたいですね。効果は内臓全般に効果のある薬液の材料なんだって。

 採れるのは早朝だけみたいだから、明日早起きしていこうっと。なぜ早朝しか採れないかというと、白露草は、朝日を数分ほど浴びると途端に枯れてしまう特性を持つ珍しい植物だからなんだって。

 だから朝日が出る前の露を含んでいる、わずか一瞬しか入手できないので集めるのはかなり大変そう。


 鬼王の大角はオーガロード・オーガキングと言った鬼系のモンスターがドロップする素材で肺の薬の材料としても武器の材料としても優秀なんだって。地位が上のオーガであるほど角の効能が良いって書いてた。

 ちなみにモンスターの出現する場所に関しての情報はなかったので、後でモンスターに関する本を探して調べようと思います。


 霊水草は清らかな水の中で育つ水草で、心臓の薬になるみたい。採取する場合は生えている場所の水を一緒に採らないとすぐに枯れるんだって。

 採取可能な場所ですが以前訪れたクレア湖沼を越えた先にある霊泉にあるとのこと。



 「なるほど……パーシヴァルさんから依頼された材料は全部薬の材料になるものだった。それはつまりパーシヴァルさんは何らかの病気に苦しんでいるという事かぁ。そういえば依頼を受けた時も咳とかで苦しそうだったっけ」


 パーシヴァルさんは依頼品を急いで持ってくる必要は無いと言っていました。自分が苦しいのに相手を急がせないように配慮するとかできた人ですね。個人的には味方してあげたい人です。

 なのでこのパーシヴァルさんの依頼には魔王アイリとしてじゃなくて、調教師アイリとして頑張ろうと思う。


 ただでさえ1週間ほど放置してしまったし、急いで集められるものを集めてこないとね。

 だけど今からだともう遅いから出れないし、明日いつもより早めに起きてノースガイア山の山頂から攻めて、次に霊泉に向かう。

 最後にオーガキングとかそういうやつを探すって感じになるかな。あっ、そうそう、オーガキングとかオーガロードの生息地を調べないと……。



 ふむふむ、やっぱりオーガキングは先日私達がオーガやトレントと戦った高山中腹あたりにコロニーを作って生息してるみたい。

 オーガロードは……中腹よりも強力なモンスターが生息する高山上層部で目撃されたことがあるんだって。

 全然関係ないけどオーガ種で一番強いのは、生息地不明、名前不明の女性型のオーガらしいです。オーガの中で最強なんだし、きっと筋肉ムッキムキなオーガに違いない。


 ……ムッキムキは兎も角、少しくらい筋肉が欲しいです。バイト時いろいろきついから……。



 そういえばランク的にはオーガキングの方が下位なのが不思議ですよね。名前にキングがついてるのに……。

 その何とかキングとか言うのはその種族の亜種とか変異種として進化していった個体がなるんだって。


 実際の目撃情報として亜種と変異種なんてものもいる。なんでも最初の平原で鳩のポポってモンスターいるんだけど、そのポポの変異種の名前はレッドポポって言う赤い鳩が居て、だいぶ前に討伐されたって掲示板に書いてた。

 もう一方の亜種は体の色が違うのと通常のモノよりもステータスが1.2倍ほど高いそうです。

 ドロップアイテムに関しては変異種が全く別のドロップテーブルになり、亜種は若干レアドロップ率が高くなった程度らしいので、見つけたら狩る位の気持ちで良いかと。



 あとはそうだね。王の称号を持っているものなら何でも良いというなら、私達が倒した種族の中にそう言った類のモンスターが居たのかも?


 脱線したついでとばかりに他にも調べていくと、ゴブリンキングやオークキングと言うモンスターも存在することが分かりました。双方共に生息地などもバッチリ行けそうな場所でした!これはなんとかして探しに行くしかないよね。



 まあ今は取り合えず、材料を集めてパーシヴァルさんに元気になってもらわないといけないから頑張って集めよう!そして報酬で良いアイテムを貰いたい!


 調べ物を終わらせるとちょうどBさんから連絡しろといわれた時間になったのでメッセージを送ると、すぐに返信があった。


 「納得いくものが出来た。取りに来い」


 と。

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