38話
一日しか休みなかったのに土日月と3日間連続更新できたのがうれしい……。
そしてストック切れた!やばひ!
「コポォォォ!」
イリスの体が輝き進化が始まった。鈍い鉄のような色の鱗がキラキラと輝いて、青・黄・緑の鱗へと変化していく。光が収まったときには体の大きさは変化無いものの、先ほどとは比べ物にならない程美しい姿になったイリスが浮いていた。
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今いる場所はコトノのお店にある個室。昨日はここで装備を受け取ったあと、実家からの召集を受けたので急ぎログアウトしたので進化について考えることができなかった。
なので翌日はいつもどおりの時間にログインし、ここでイリスと一緒に進化先の情報を整理していた。
コウガやセツナの時もそうだけど、後々後悔させたくないから基本は本人に進化先を選んでほしい。
「イリス、どう?進化先は通常・派生含めたランク2へ進化するのが2種類、ランク3へも2種類、特殊進化のランク2が1種類あるけど?」
私の問いにイリスは肯定を示す円を描くように回る。その姿を見るだけだと早く進化をしたくてたまらないように見える。何度も言うけど、適当に進化するだけじゃ後悔するからちゃんと考えてね?
まずはランク2の進化先である同じ魚の体を持つミストフィッシュと、ランク3のポイズンガーフィッシュの二つ。
ミストフィッシュの説明を読む限り、今のマリーンフィッシュと大差ない進化といえる。ここで覚えるミストというスキルは名前と種族説明から察するに霧を利用した惑わしを得意とする補助タイプでしょう。
水魔法と相性は良さそうですけど、やれることが今までと同じって言うのがちょっとね。
イリスも同感だったのか、あまり乗り気じゃないみたいだし却下かな。
ポイズンガーフィッシュは物理攻撃と毒による弱体化を得意とする攻撃タイプだと思う。そうそう、ログインする前にガーフィッシュについて調べたんだけど、胴体が長くて頭の先が尖っててちょっと危険な感じがしました。いつか忘れたけど海水浴中の人がダツ(ガー)に襲われたってのも聞いたし良いイメージが無いんだよね。
それに甘えてこられた時にサックリと体に刺さりそう。ガーフィッシュはその尖った口で獲物をとるみたい。あとスキルから察するに刺して毒化させるのが戦い方ですね。そもそも毒撃のスキルはコウガと被るので必要ない気がする……。
その調べたガーフィッシュが好みじゃなかったので私はこれに進化して欲しいとは思わないなぁ。イリスも私が乗り気じゃないことを察し、とりあえず保留にしたみたい。
次に派生進化であるランク2のスタルトイールとランク3のマリーンサラマンダー。
スタルトイールは、今までの魚形態から2メートルほどのウナギッぽい体に変化して物理的な攻撃を得意とする攻撃タイプになる。説明と修得可能スキルからウナギ特有の体で対象に巻きついて噛み付いて倒す接近攻撃タイプですね。
マリーンサラマンダーは体が150センチくらいに成長したオオサンショウウオっぽいもの。
私的にはサンショウウオ自体が謎の生き物だけど、両生類?ってヌルヌルしてそうだから可愛がるのに少し抵抗が……。あっ、これを言ったらスタルトイールもでしたね。
攻撃方法はひたすら食べる系。多分丸呑みとかそんな感じなんだろうなー。自分より大きいモンスターをどうやって食べるかは見たい気はするけど……ね。
「イリスはどう思う?この2種類とか強そうだよ?」
「コポーォ?コポコポ!」
イリスが気になっているのはスタルトイールとマリーンサラマンダーの進化後に使えなくスキルがあるという説明文。
そこまで気がまわっていなかったと反省し、そこを読むと驚愕の事実が明らかになった。なんとイリスの主要スキルである【飛行】【浮遊】のスキルが両方とも引継ぎ不可だった。
この時点でもともと乗り気じゃなかった私はこの進化を諦めました。イリスも同じ考えだったようですね。
最後に特殊進化であるプリズムフィッシュ。
コウガ達には現れず、イリスにこの進化先が現れたのか全く不明ですが、選択肢として現れた以上何らかの期待は持てそう。それにプリズムとか名前の響きが私好みですし。
回復魔法としては効能の高い光魔法を覚える事も良い点かな。水魔法2でウォーターリカバリーという回復の魔法を使えるようになっているんだけど、イマイチ回復量が多くないのよね。水って癒し系のイメージがあるのに不思議ですよね。
そんなわけで回復魔法の代名詞ともいえる光魔法を覚えるならすごくありがたいです。回復魔法なら近接しなくても使用可能だし。
もう一つの習得スキルであるタクトマジック。こちらではタクトというのは天候を表すみたいですね。普通に考えるとフィールドの天気を変更できる魔法?
それに何の意味があるのか分からないけど、そういうネタ要素的な魔法もありかも……と思えなくも無い。
イリスはポイズンガーフィッシュとプリズムフィッシュで悩んでいたようですが、ガーフィッシュの方は私の受けがよくなかったことからプリズムフィッシュを選んだ。
うん、後悔しない様に自分で選んでねと言っておきながら、プリズムフィッシュになるように仕向けちゃった罪悪感がすごいある……。こうして進化し、冒頭に戻る。
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ではではイリスのステータスを紹介しておきますね~。
名前 イリス
種族 プリズムフィッシュ♀ 魚種ランク2
LV 1(0/600)
スキル
アクティブ 【水魔法2】【突撃】【重打】【光魔法1】【タクトマジック1】
パッシブ 【浮遊】【飛行】【水入らず】
強さ
物理能力 47
魔法能力 55
進化して物理能力が20近く上昇し能力値が平均になったかな。
まあ物理能力が上がったから【突進】や【重打】の威力が上がってますし、多少近接攻撃も通るようになったはず。
経験値テーブルもコウガ達ほどじゃないけど上がってるなぁ。やっぱランクの違いで育ちやすさは違うんだね。
あとは、そうだ。そろそろイリスやクルスにも装備を揃えてあげないとね。何が良いかなぁ?
久しぶりにBさんのところに行って良い装備品になる素材が無いか聞いてみようっと。
コトノの店から町に出て広場にやってきた私ですが、広場に来る途中も来てからもどうにもプレイヤーと住民の両方から視線がよく集まってくる。
住民はホケェ~とした表情をして見てるし、一部のプレイヤーは男女問わず私をガン見してたり……。
あとはそうですね。エスの中の掲示板にアクセスしているらしいプレイヤーの指がせわしなく動いているのはいつもの事ですね。
リアルでもそれなりに人に見られてるから別に気分が悪くなる視線じゃなければ深くは気にしませんけどね~。
ちなみにその注目を集めた原因が新しく変更された私の羽付きヒマティオン装備による物珍しさと、ほとんど布で覆われてるのに肩などの一部が露出している事による扇情的な格好だったことを知るのは、その日の最後にコトノの店に立ち寄った時でした。……私が見られてたんじゃなくて装備が珍しかっただけかぁ。勘違いも甚だしいね、反省しよ。
広場を抜けてそのままBさんの工房へ向かう。途中にあったシオリさんのお店でイタチの肉とオークの肉を渡して調理してもらいました。
コウガ達のランクが上がってからは生肉よりも調理されたものの方が好みになってしまったらしく、時折このようにして料理の補充をしておかないといけない。
多分口が肥えてきたんでしょう。贅沢させすぎたのかと少し心配……。
「らっしゃい。今日はどういった用事で……えぇぇっ!?」
工房内にはBさんがお客さんであるプレイヤーの相手をしていた。新しく店内に入ってきたお客(私)に声をかけようとその姿を視認して驚いた声を上げた。こんなBさんを見るのは初めてで驚きました。
「こんにちは。お久しぶりです~」
なんだかんだで素材売却関連でメッセージのやり取りはしてるものの、Bさんの店に来るのは10日ぶりくらいですからね~。ちゃんと挨拶をしておかないと。
「……なんっつー格好してやがるんだおめぇはよぉ?一瞬どこぞの姫さんでも来たのかと思ったじゃねぇか。……あっそうか、おめぇはたしか獣姫って呼ばれてんだからあながち間違いじゃねぇな……」
最後の方は聞き取れませんでしたがお姫様と間違えたとかいくらなんでもお世辞が過ぎますよ?
そ、そんなこと言われても嬉しくなんか無いよ!……まあBさんは見た目は怖くても中身はマジメ系だからちょっとドキッときちゃったけどさ。
「あのーBさん。そちらのお客さんは良いの?」
買い物に来ていたプレイヤーもBさんが驚いた声を上げた辺りで振り返り、私を見て目を丸くしていました。その人は女性なんだけど背丈くらいある大剣を探していたそうです。
「ん?……あぁ、こいつは俺の妹だから、放置しといて構わねぇよ。んな事より、いつもなら一言くれてから来ると言うのに今日は突然何の用だ?」
へぇ?妹さんと一緒にプレイしてるなんて仲が良い御兄妹なんですね~。
私はイリスとクルス用に装備を作ってほしいことを伝えると、Bさんはコウガ達の時と同様、2体を調べる。どんな武器が合うか適正を見ているのだ。
「なるほどな……まずそっちの魚の方は適正武器は指輪・腕輪系だからウチでは使えないもんだな。装飾品をつくるルグートあたりに相談してみな。
次に鳥の方だが……ほぉ、珍しい。爪・皮膜系だけでなく銃火器類も使えるな……」
……クルスったら銃火器を装備できるの?あの鳥の足でどうやって引き金を引くのかすごく気になる。
それと爪系はコウガが装備してるから分かるけどもう一つの武器名は初めて聞いたよ。
「皮膜系装備と言うのはいったいなんですか?」
「皮膜系ってのは、革職人や裁縫職人が使うモンスターの皮を素材として作られる部位強化装備だな。
例えば爪装備と言えば手、もしくは足に付けるだろ?それと同じで皮膜装備ってのは、空を飛ぶモンスターの翼を強化できる装備品だな。ちなみに部位装備は他の部位装備と重ねて装備が出来るからある意味お得だぜ?」
要するにクルスは爪系と皮膜系を同時に装備できると……。なるほどー、翼も足も武器を付けてればその分攻撃力が上がりそうですね~。
「あぁ、一つ注意だ。部位装備を複数装備すると(物理・魔法)能力の増加計算方法が違うから、個別装備の能力値がそのまま合算されるって訳じゃねぇから気をつけろよ?」
なぁんだ。もし合算だったらクルスはすごく攻撃能力とか上がったかもしれないのに……。
でもまあどんな感じで能力が変化するか位は調べたいし、Bさんにはメインとして爪装備、サブ武器として銃火器の制作を依頼しようかな。
皮膜系の方はあとでコトノに追加注文すれば良いよね。
「おう、鳥用の爪と銃火器だな?素材はどうする?おめぇさんが集めてくるっていうなら安くしてやれるぜ?」
「あぁ、それならみんなのレベルあげついでに集めてくるので、良い素材を落とすモンスターの情報を教えてください」
「了解だ。なら集まったらまた俺んとこに持ってきな。以前とは違って在庫がねぇから受け取り次第制作に入るからよ」
「分かった。それじゃ」
私はBさんに勧められたとおりルグートの装飾品店へ向かった。それにしてもイリスの装備可能武器が指輪だったなんて。どうやって指輪で攻撃できるんでしょうね?
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アイリが去った後のB=ルドラーの工房……。
「はっ!?ね、ねぇさっきの神話の女神様と間違えそうな服装の超綺麗な人、お兄ちゃんの友達?」
「あぁっ?まあフレンド登録位はしてるが特別仲が良いって訳じゃねぇぞ?」
「うっそ!?あの言葉遣いが荒い上、奥手なお兄ちゃんがあんな綺麗な人とフレンドになってるだなんて……アリエナイ!明日は大雪なんじゃ……」
「てめぇ!俺を何だと思ってやがるっ」
「だから奥手でヘタレなお兄ちゃんっていってるじゃん」
「泣かすッ!まてやこらぁぁ絶対泣かすっ!……くっ、飯の時は覚悟してやがれ!」
「キャー!おにいちゃんが怒ったぁ~」
工房内での鬼ごっこが始まったが、戦闘系で鍛えている妹のキャラと純生産で作られたBのキャラでは勝負にすらなりえなかった。Bは現実側で復讐してやると誓い、追いかけるのを諦めたのだった。
「あっ、お兄ちゃん。今度あの綺麗な人紹介してね~」
「誰がするかよっ!」




